変身した「グッチ」を知っていますか。「グッチ」を買えますか。

クリエーティブ・ビジネス塾40「グッチ」(2018.9.24)塾長・大沢達男

変身した「グッチ」を知っていますか。「グッチ」を買えますか。

1、渋谷・グッチ
高級ブランド・グッチの躍進が話題になっています。で、早速、渋谷・西武の4Fにあるお店をのぞいてみました。ウィークデイの午後。お店には中国人の若いカップルが二組いたほかは、閑散としていました。
「なにか、お探しですか」「いや、ちょっと見させてください」。
ファスト・ファッシャンのお店しか行かない身には、ちょっとドキドキする対応。”Just Looking!"。
白地にあでやかなカラーの模様の張り物があるスニーカーがたくさん並んでいました。伝統のキャバス地のバッグには、猫の顔のあるイラストが貼付けられていました。
オシャレとか、カッコいい、といった類いものではありません。
お店の人に聞きました。
「この白いスニーカーは、おいくらぐらいですか?」「はい!こちらは、8万円です。」
ため息だけでした。
2、アレッサンドロ・ミケーレ
ヨーロッパの高級ブランドが売れています。モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)の1~6月期の純利益は前年同月比41%増(30億400万ユーロ=約3900億円)、グッチ(仏ケリング)の純利益は23億5900万ユーロと、3倍近くに拡大しました(日経8/8)。
なぜこんなにも売れているのか。第1、中国の買物欲が旺盛に復活したこと。第2、多様な価値観を持つ客にターゲットを広げていること。多様な価値観とは、セレブリティや富裕層だけでなく、若者やエシカル(倫理的)志向を持つ顧客のことです。第3、デザイナーです。ルイ・ヴィトンもグッチも新しいデザイナーの登用で、ブランドイメージをがらりと変えてしまいました。
グッチはグッチオ・グッチ(Guccio Gucci)が、1921年に創業したフィレンツェ・イタリアのファッション・ブランドです。現在はフランスのケリンググループの中核ブランド。グループには、サン・ローラン、バレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタなどがあります。この伝統の高級ブランドが大革命を起こしています。仕掛人はCEOのマルコ・ビザーリ、そしてデザイナーのアレッサンドロ・ミケーレです。
1)クリエイティビティ・・・デザインは、パンク、ストリート、ジェンダーレスをミックスし、伝統に反逆するものです。エルトン・ジョンビヨンセレディ・ガガがステージで着ました。「I feel "GUCCI"」=気分はサイコーです。オンライン辞書Urban Dictionary」では、”GUCCI"=イケてる、の意味です。
2)エシカル(倫理的=企業の社会的責任)・・・ブランドイメージを根本的に再構築しました。まず毛皮の使用禁止です。2018年春夏コレクションより、製品および広告に動物の毛皮を使わないことを宣言しました。つぎに原材料の95%のトレーサビリティを保証しています。水、エネルギー、化学製品の使用を軽減し、地球環境に貢献するのです。さらに、社会問題を共有するポータルサイト、従業員への信頼と尊敬、ブランド発祥の地フィレンツェへの支援に取り組んでいます。
3)ミレミアム世代・・・1980年代以降に生まれたデジタルネイティブがターゲットです。レガシーの継承ではなく閉塞感の打破です。消耗品としての服ではなく、自分を表現するためのアートとしての服です。コブラを背中に背負った、黒のジャケットを着たプロテニスのロジャー・フェデラーが印象的です(「いま、GUCCIがヤバい!」(『ゲーテ』2018.9 p.57~89 幻冬社)。
3、メゾン・ブランド
ブランドの王様は、エルメスです。メゾン・ブランド、ロイヤル・ブランド、ラグジェリー・ブランドなどと呼ばれます。発祥もそして現在も、貴族たちためのブランドだからです。
日本ではふつうのOLがルイ・ヴィトンのバッグを持っている、と欧米人に不思議に思われ笑い話のネタにされました。なぜなら、フランスもイタリアもそしてイギリスも階級社会で、貴族や上流階級でない一般市民の労働者階級がブランドものを身につけることは、あり得ないからです。
時代は変わりました。日本では、松浦勝人さん(エイベックス代表取締役会長CEO)、宇野康秀さん(USEN-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長 CEO)、佐藤可士和さん(CD)がグッチを語っています(『ゲーテ』p.60~61)。ブランドを持ちブランドで着飾ることは、時代の成功者の栄光です。スニーカー1足、8万円!(あまり欲しくないけれど・・・)その世界に仲間入りするために、努力、努力、努力です。