小池百合子の学歴なんてどうでもいい。東京の未来を話さない議論は不毛

TED TIMES 2020-40「小池百合子」 6/14 編集長大沢達男

 

小池百合子の学歴なんてどうでもいい。東京の未来を話さない議論は不毛。

 

1、「東京計画1960」

1961年に発表された丹下健三の「東京計画1960」があります。東京は中世以来ずっと、「求心型放射状」に発達してきた、これには限界がある。「線型並行射状」に開発する東京計画を提案する。

そして丹下は、都心から東京湾を超え千葉の木更津方向を結ぶ都市軸を作り「開いた都市構造」の東京の未来を、デザインしました。東京湾上を走る道路と交通機関、そこから枝分かれし、細胞のように発生する商店、住居、公園の生活空間。「東京計画1960」に東京と日本の未来を見たものは、度肝を抜かれました。安保紛争以来、現状の批判と伝統の破壊を主張し、歴史的決定論による革命だけが未来だった若者たちは、初めて自分たちの愚かさを悟りました。丹下研究室は圧倒的な未来を走っていました。夢がありました。

2、小池百合子

1)小池百合子・・・『女帝 小池百合子』(石井妙子 文藝春秋)は、東京都知事を告発する本です。「カイロ大学を主席で卒業」の嘘から始まった彼女の人生は虚飾に満ちたものだ、というのがそのテーマです。

1988年テレビ東京ワールドビジネスサテライト」でデビュー。1992年日本新党から出馬し参議院議員に。1993年衆議院議員に当選。細川政権で総務政務次官。1994年新進党結成に参加。1998年新進党解党、小沢一郎自由党 へ。2000年小沢一郎に反旗、海部俊樹らの保守党に。2002年保守党解党。小池は自民党に。2003年小泉政権環境大臣。2005年郵政解散。東京10区から出馬当選。環境大臣。2006年安倍政権。防衛大臣。2007年防衛大臣辞任。2012年安倍政権。小池は入閣できず。2014年東京都知事舛添要一辞任。2016年都知事選に出馬当選。

日本新党新進党自由党→保守党→自民党。日本の政治の変遷もグチャグチャですが、その激流を泳ぎ切った小池もすごい、の一言しかありません。『女帝 小池百合子』は、小池の嘘や裏切りを描きますが、まあこの辺りはいろいろあらな~、ということで、あまり関心を持てません。問題は小池の知事選での選挙公約です。待機児童ゼロ、介護離職ゼロ、満員電車ゼロ、残業ゼロ、都電電柱ゼロ、多摩格差ゼロ、ペット殺処分ゼロ。7つのゼロの東京大改革。耳障りのいい公約で小池百合子は2位を100万票以上離して当選します。同じように耳障りがいいことを言って当選し、都民を欺いた知事がいます。

2)美濃部亮吉(1904~1980 知事は1967~79)・・・「広場と青空の東京」構想を掲げ、圧倒的な支持で当選します。公害局を設置し公害防止条例を制定し、高速道路と空港の建設を凍結、そして老人医療の無償化、さらに公営ギャンブルの廃止、いいことづくめ。しかし全ては失敗に終わります。東京都の財政は赤字。成田へのアクセスは最悪、交通渋滞で大気汚染はさらにひどくなりました。50年後の今も都民は、美濃部の負の遺産に、苦しめられています。

3)青島幸男(1932~2006 知事は1995~99)・・・政策なし、臨海部副都心で開催予定の「世界都市博覧会」の、耳障りのいい「中止」で当選します。デジタル時代の「世界都市」というコンセプトは重要でした。1995年はウインドウズ95の年です。青島の「世界都市博覧会」の中止で日本はデジタル後進国になりました。

3、ネオ東京

1964年の東京オリンピックで丹下は、歴史に残る名作、国立代々木競技場第1、第2体育館を完成させます。そして丹下は、東京都庁の新庁舎の設計を手掛けます。9社による競合コンペは丹下の勝ち、結果は西新宿の現在の美しい都庁ビルとなってあります(1991年完成)。しかしコンペの選考中に大事件がありました(1986年)。磯崎新です。各社が揃って超高層ビルを考えた中で、磯崎だけが普通の高さの(23階100m以下)、屋上に巨大な球とピラミッドがある、パンクなビルを提案しました。超高層を排す。都民を見下ろすな。市民原理だ。縦割り行政ではない、横へのネットワークだ。その主張は正しかった。しかし磯崎の案は建築法規を違反を犯していました。だから却下。でも考えかたで、都政の未来を先取りしていました。

似たことが東京オリンピック2020でも起りました。新国立競技場の設計コンペでは、ザハ・ハディド(Zaha Hadid 1950~2016)案が選ばれました。宇宙船が空から降りてきたような、奇抜なデザイン、しかし予算超過。仕切り直しのコンペが行われ、現在の保守的な隈研吾案が建設されました。

ハディド案は忘れようとしても忘れられません。想像力を刺激し、未来の東京が見えてきます。小池百合子さん、いいデザイナーを見つけてください。ゼロではなくプラスを、大きな価値を提案してください。