2050年カーボンゼロ、そのとき、原発はどうなるのだろう。

TED TIMES 2021-7「カーボンゼロ」 2/19 編集長 大沢達男

 

2050年カーボンゼロ、そのとき、原発はどうなるのだろう。

 

1、カーボンゼロ

地球温暖化ガスの二酸化炭素排出ゼロをカーボンゼロといいます。麦や米を計画的に生産するようになった農業革命、蒸気機関による産業革命、コンピュータネットワークによる情報革命に続く、二酸化炭素排出ゼロの第4の革命が「カーボンゼロ」です。目標は2050年です。世界の3分の2にあたる126の国・地域がそして日本も実質ゼロを宣言しました。「DX」はデジタルトランスフォーメーションにならって、「GX」はグリーントランスフォーメーションです。

2、再生可能エネルギー

1)「ペロブスカイ型」の新型太陽電池・・・液体の原料を塗るだけで、街中を再生可能エネルギーの「発電所」に変えます。ビルの壁面、電気自動車、自動販売機、スマートフォン、衣服、カーテン・・・あらゆる場所が太陽電池になります。

2)潮流発電・・・日本近海には原子力発電所20基分の潮流エネルギーが眠っています。長崎県五島列島の海峡があります。海底でプロベラを回し発電機を動かします。天気に左右されず、発電量を計算できます。

3)緑色の水素・・・「ノースH2」は、ロイヤルダッチシェルが中核になる欧州最大の水素事業で、緑色の水素を作ります。洋上風力発電所の電力で海水を電気分解し、水素を生み出します。化石燃料からの水素がグレー、製造過程の二酸化炭素を回収する水素をブルー、再生エネで水を分解するカーボンゼロの水素をグリーンといいます。緑色の水素です。水素はカーボンゼロの飛行機の動力源になり、鉄鋼や化学の製造業もカーボンゼロにします。

4)「エネファーム」・・・家庭用燃料電池エネファーム」は、ガスから取り出した水素と空気中の酸素で電気を作ります。この原理を逆転させて、水を電気分解し、水素を作ります。再生エネの電力をどう手に入れるかが問題です。

5)福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)・・・オールジャパンで太陽光から水素を作る取り組みです。問題はグリーン水素を作るコストです。現在は流通価格の10倍かかります。

6)「マルタ」(米企業)の蓄電・・・電気を熱に変えて「塩」にためます。リチウムイオン電池は数時間の蓄電、数日から数週間の蓄電が可能、必要になったら熱と冷気の温度差から電気に戻します。

7)「ゼロe」・・・2035年に欧州航空機大手のエアバスがカーボンゼロの航空機を実現します。「ゼロe」は液化水素でガスタービンを回します。ジェット旅客機以来の革命が起こります。

8)「eVTOL(イーブトール)」(独企業リリウム)・・・空のテスラと呼ばれる電動の垂直離着陸機です。ドイツ・ミュンヘンの郊外にあります。カーボンゼロです。25年に商用化されます。

9)小型EV「宏光ミニ」・・・上汽通用五菱汽車の小型車です。航続距離120キロ、価格28,800元(46万円)。9月の販売数でテスラ「モデル3」を追い抜きました。

10)「ニュースケールパワー」・・・小型原子炉で注目を集めている米国2007年創業の企業です。今まで標準的な原子炉は100万キロワット級でした。対して「ニュースケールパワー」は、数万キロワット級の原子炉を5本まとめてプールに沈めて発電します。ロシアでは原子力砕氷船の原子炉を海上原発に使っています。なぜ原子力にこだわるのか。

再生エネルギーをフルに活用しても、電源の5~6割に止まるからです。50年目標で英国65%、米国55%です。日本も同じようなものです。では火力か。火力で生ずる二酸化炭素を回収・貯留するCCSを使うと石炭火力は1キロワット時12.3円プラスCCS費用で19円になり、原発の10.1円との差がさらに開くことになります。日本の原発は足踏みし、思考停止になっています。

3、中国

世界の太陽光発電量で中国の比率は、2010年2%、2018年32%。太陽光パネルの中国メーカーが上位を独占しています。つぎに中国は日本が輸入するリチウム材料の一つで7割以上のシェアを持っています。そして中国にはペブロスカイ型太陽電池の研究者が日本の10倍います。さらに日本や欧州が脱原発に向かう中で、中国は新興国と同じように原発を重視しています。カーボンゼロのリーダーシップは中国が握っています(以上。日経1/1~13 「第4の革命 カーボンゼロ」を参考にしました)。