プーチンをどう評価すべきか、ウクライナの戦争をいかに終結させるか。

THE TED TIMES 2022-40「プーチン」 11/9 編集長 大沢達男

 

プーチンをどう評価すべきか、ウクライナの戦争をいかに終結させるか。

 

1、アレクサンドル・ドゥーギン

プーチン大統領の頭脳」、あるいはロシア帝政末期の怪僧「ラスプーチン」と呼ばれる人がいます。かつてモスクワ国立大学教授だった極右の思想家、アレクサンドル・ドゥーギンです。

ドゥーギンは米国の覇権を終わらせるために、ロシアと中国が連携して「多極的な世界秩序」構築しなければならいないと主張します。

ドゥーギンの世界観は、ユーラシア大陸の国々はロシアを中心にした大陸国家で、米国(以前は英国)が主導する海洋国家とは必然的に対立するというものです。

ドゥーギンの反西欧的、反自由主義的な考え方はイランでも歓迎され、さらにドゥーギンはトランプ支持派とプーチン支持派は共通の敵であるグローバリストに対抗するために団結すべきだと主張します

クリミア併合、ウクライナ侵攻は、1990年代にアレクサンドル・ドゥーギンが主張してきたことです。プーチンはそれを実行しているだけの話です。

2、ミハイル・ゴルバチョフ

ゴルバチョフにとって国家の偉大さとは、一般国民の尊厳を守れるかでした。人工衛星スプートニクを打ち上げることができても、歯磨き粉や粉石鹸などの生活必需品が手に入らない状況があってはならないと考えました。

そしてゴルバチョフは人間の尊厳を表現の自由にまで広げました。報道とクリエーティブ関連の産業を自由化し、反体制派を釈放し、適切な歴史研究の再開を認めました。さらにゴルバチョフは1989年にポーランドハンガリー東ドイツ民主化運動の戦車を送り込むことをしませんでした。加えてゴルバチョフは、1991年バルト3国の独立運動にいったん兵力を派遣したものの、独立を認めています。

プーチンは、以上を「ゴルバチョフの失敗」と考えています。

プーチンは偉大なロシアの復活を考えています。そしてロシア帝国のピュートル大帝と自分を比べています。ピュートル大帝はスェーデンとの北方戦争に勝利するまで、20年以上、戦い続けたのです。それに比べれば、自分とウクライナの問題など大したことではない、と考えています。

3、外交交渉

ウクライナでの戦況はプーチンに厳しくなっています。そしてバイデン大統領すらもアルマゲドン(世界最終戦争)への危機を警告しています。ロシアが核兵器を使用するかの「極めて危険」な状況が生まれてきています。

「アレクサンドル・ドゥーギン」、「ミハイル・ゴルバチョフ」はフィナンシャル・タイムズのギデオン・ラックマン(日経 8/26、9/9)の主張を要約したものです。以上の事実関係をもとに結論としてラックマンは、「外交交渉」を主張します。ラックマンはすごい。

まず、一番憂慮すべきは、戦争終結への真剣な外交交渉がなされていないことで、外交とは弱腰ではありません。

つぎに、プーチンを敗北させるという主張は、事態の改善につながりません。外交と戦闘は同時並行で継続すべきものです。キューバ危機のときには、米ソ間で外交交渉が秘密裏に積みかせねられていました。いまはロシアと話し合えるルートはありません。

ではどうするか。トルコのエルドアン大統領、インドのモディ首相が考えらると、ランクマンは主張します。素人考えですが、インドネシアのジョコ大統領、そしてフランスのマクロん大統領も有力です。

解決不可能な問題に、創造力で解決策を生み出すこと、それこそが外交交渉の真骨頂です(ギデオン・ラックマン 日経10/21)。

2020年日本国国家安全保障局長北村滋は単独でプーチンと会っています。そしてプーチンが自らと同じ「ケース・オフィサー」であることを再確認します。情報提供者や協力者を探し国家の利益のために運用する機関員です。

北村はプーチンへの尊敬の意味を込めてこの言葉を使っています。プーチンなら外交交渉は可能です。問題は、その切り札にだれが、なるかです。