THE TED TIMES 2024-45「ラックマン2024」 11/14 編集長 大沢達男
ギデオン・ラックマンは、北朝鮮のウクライナ参戦を、どう見たのか。
1、ミーム(ネット上の面白ネタ)
西側諸国は北朝鮮を冗談のネタにしかしてきませんでした。
北朝鮮はサイズの合ってないスーツを着て奇妙なヘアスタイルの人だらけの国。今更言っても仕方がありませんが、西欧人の東洋人に対するレイシズム(人種偏見主義)です。
しかし北朝鮮軍が、ロシア支援のためにウクライナ戦争の前線に投入され、西欧諸国は青ざめました。
2024年6月に結ばれたロシアと北朝鮮の「包括的戦略パートナーシップ条約」のよるものです。
いづれかの国が武力侵攻を受ければ軍事的援助を提供するというものです。
事実ウクライナは8月6日からロシア西部クルスク州への越境攻撃をしていました。
北朝鮮は、弾道ミサイルを開発し、大規模なサイバー攻撃能力を持っています。
しかも130万人の現役兵士、世界4位の規模の軍隊を持っています。
北朝鮮は軍事と情報技術の国ですが、一人当たりのGDPでは千数百ドル、日本の30分か40分の1の貧しい国、しかし識字率は100%の豊かな国です。
核兵器を持つのは簡単ではありません。北朝鮮よりはるかに豊かなイラン、シリアでも達成できていません。
日本もリベラリズムの西側諸国のマネをして、同じ北朝鮮を甘く見ています。だれも「主体思想」を研究しようとしません。
イギリス人のギデオン・ラックマンは「全体性があらゆる面で後進的であることを意味しない」と警告を発しています(日経11/1)。
2、米国、ドイツ、インド
さて米国。大統領選挙が今週ですので、米国政府の対応については日を改めて議論します。
米国政府の代わりに、ラックマンがミサイル級に危険と警告した、イーロン・マスクをとりあげます。
まずマスクは、ウクライナ戦線に大きな影響力を持っています。
衛星通信サービス「スターリンク」をウクライナに提供したり、アクセスを制限したりしています。提供はウクライナ軍に有利、制限はロシア軍に有利なります。
ガザでもマスクは、スターリンクを提供したり、運用しなかったりしています。
一方でマスクは、テスラの工場を中国に建設する決断をし、米政府の勧告を無視しました。
マスクはシー・ジンピン(習近平)を尊敬しています。
ところがマスクはスペースXを持っています。ISS(国際宇宙ステーション)に残された宇宙飛行士を帰還させるためにはマスクの力が必要です。
ちなみにマスクはトランプを支持し、巨額の資金112億円をトランプを支援する団体に献金しています。
しかしミサイル級に危険なマスクも政府には勝てないとラックマンは断言します。
「各国政府は、マスク氏が持ち合わせていない重要な力を握っている。それは法律作り、執行する力だ」(日経9/13)。
次はドイツです。
極右ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AID)」と左派新党「ザーツ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」を合わせてドイツ全体の3分の1が、移民に強硬姿勢、NATOを敵対、ウクライナ支援打ち切りを主張しています。
ウクライナ支援で米国に次ぐ2位のドイツでロシアの同情的な勢力が台頭しています。
シュルツ首相は選挙を控えています。和平を推進する候補者として選挙戦に臨みます。
ラックマンは「ドイツ政府も国民も、欧州に暗黒の時代が戻ってくる危険を直視すべきだ」(日経9/27)と結んでいます。
そしてインドです。
ラックマンは世界紛争についてインドがなぜ楽観するのかを嘆いています。
「安全地帯」のイギリスからインドへの旅は、「紛争の海」ウクライナとクリミアを飛び、さらにイランとアフガニスタンを通過し、「安全地帯」ロンドンからニューデリーへの旅であった、と回顧しています。
ロシアがウクライナで勝てば中国を勢いづかせる、と警告しても、インド政府は、中国に対抗するにな強いロシアが必要だと、考えています。
さらにグローバルサウスは、「ロシアによる侵略や戦争犯罪に関する西側諸国に主張は、米国がイスラエルを一貫して支援し続けていることから、偽善的なものだ」と、拒否しています。
そしてラックマンは「欧州と中東、アジアの紛争が互いに結びつき始めれば、世界の『紛争の海』はすぐにインドまで押し寄せ」る、警告しています(日経10/18)。
3、レッドライン
さて初めの問題に戻ります。
ウクライナによるロシア西部クルスク州への攻撃は、米政府が設定した「レッドライン」を超えてしまったという問題です。
「クルスク」とは、1943年に「クルスクの戦い」でナチス・ドイツとソ連・赤軍の史上最大の戦車戦が行われた因縁の場所で、ソ連の首相であったニキータ・フルシチョフに出身地で、そしていままさに北朝鮮軍がウクライナ軍が戦っている戦場です。
レッドラインとは何か。核攻撃、第3次世界大戦が始まる、始まってもおかしくないほど、ウクライナが一線を超えてしまったということです。
「常にロシアが核兵器の使用に踏み切る最後のレッドラインだと見なされてきたが、ウクライナ軍はまさにその国境を越えて進軍している」(英セントアンドルーズ大学フィリップ・オブライエン教授)。
何が言えるのか。ウクライナのゼレンスキーは戦争の素人でしかない、ゼレンスキーが第3次世界大戦への引き金を引いた、ということです。
しかしラックマンはそこまでは言いません。
筆を引用の形で弱め、「ウクライナの人々は、自分たちを支援する国々は勝利することに怯えている」と不満に共感を示すようにして、論を結んでいます(日経8/30)。
ラックマンの本心はどこにあるのでしょうか。
世界をウオッチングしてきた、「フィナンシャルタイムズ」チーフ・フォーリン・アフェアーズ・コメンテーターは何を訴えているのでしょうか。
もうロシアになにをされても文句は言えない。ラックマンは「西欧リベラリズムの危機」を主張しています。
END