映画『Queer』は、なかなかいいじゃありませんか。

THE TED TIMES 2025-22「Queer」 6/1 編集長 大沢達男

 

映画『Queer』は、なかなかいいじゃありませんか。

 

1、映画『Queer

映画『Queer』を観るためには苦労しました。

新宿では朝の8時30分から、渋谷では9時45分からの1回しか上映していなかったからです。

で、少しでも遅いほうがいいからと、渋谷の「ホワイトシネクイント」にしました。

9時20分に映画館のあるパルコに着いたら、エレベーターが動くのは9時30分から、雨の中で10分待ちました。

普通の映画でしたら、どうってことないのですが、『Queer』とは性的マイノリティのことで、原作の翻訳小説の元のタイトルは『おかま』でした(現在は『Queer』 山形浩生柳下毅一郎 訳 河出文庫)。

エレベーターの前にそれと思しき人がたくさん並び出したら、声をかけられたらどうしよう。

「あら!おひとり?」

「肌がおキレイね。豆乳飲んでらっしゃるの?」

「あこがれちゃうワ!」

「一緒に映画観ません?』

・・・なんて想像し、余計な心配をしてしまいました(チャンスだよ!)。

心配は無用でした。映画館だけに行くエレベーターに乗ったは私だけでした。

パルコの開店は10時。集まってきたのは、インバウンド外国人観光客が10人ほどでした。

そして映画開始のときの観客は、男子3人、女子2人、普通の人々でした。

 

2、ダニエル・クレイグ(1968~)

映画の主役は6代目ジェームス・ボンドダニエル・クレイグ(ウィリアム・リー役)です。

恋人のドリュー・スターキー(ユージン・アラートン役)との激しいセックス・シーンがあります。もちろんドリューは男性です。

燃えるような接吻は演技とは到底思えませんでした。

二人はカメラの前でなくても愛し合っていたのではないかと思わせるほどです。

ダニエルはもちろん、ドリューも筋肉隆々、絡み(からみ)には迫力があり、観ているものを高揚に誘います。

でも物語はウィリアムのユージンへの片想いの物語です。

アメリカ人の二人はメキシコシティで知り合い、南米のエクアドル旅行を楽しみます。

でも約束で週に二度だけしか、ウィリアムはユージンを抱くことを許されません。

「べたべたすんなよ。まったく。さっさと寝てくれ」。

ユージンに怒鳴られます。

ウィリアムは、全身がひきつり、内部から血を流しているような深い傷を負い、涙を流します。

恋の悲しみ・・・・・・。

それはそれとして、映画はウィリアムの酒とバラの日々を描きます。

酒はテキーラ。ウィリアムは、グラスで2杯、3杯と、一気に口の放り込みます。

ラムもブランデーもやります。カリフォルニアのブランデーはダメだ、のセリフが印象に残ります。

ドラックもOKです。マリファナ(M)、ヘロイン(H)、コカイン(C)。

そして売春宿はふんだん。もちろんクィア(おかま)が集まるところもあります。

なんたってダニエル・クレイグが演ずるウィリアムはセックス・モンスターですから。

 

3、ウィリアム・S・バロウズ

酒とドラッグとセックスの日々。

それはいいけど、なんでそんなことが可能なの、という疑問に映画は答えてくれません。

Queer』は、ウィリアム・S・バロウズの自伝的な作品で、小説にはその秘密が書いてあります。

「復員兵援護法(GI法)」で、バロウズは月75ドルの生活費、さらに大学への学費と教科書代を、米国政府から支給されていました。

メキシコでの生活費は1日2ドルで、どんな娯楽も手に入れ、メキシコの澄んではじけるような空気を吸って、暮らしていました。

しかし米国人・バロウズのメキシコ人への偏見はすさまじいものです。

<スラム街はアジアのどこにも負けず劣らず汚くて、貧乏だった>、<メキシコは基本的に東洋文明の土地だった>、<二千年の病気と貧困と退廃と愚劣と奴隷制と野蛮と心霊的・肉体的暴力の成れの果て・・・>、<気が向けば誰でも銃を持ち歩いた>(小説『Queer』 p.8~9)。

バロウズは、アレン・ギンズバーク、ジャック・ケルアックとともにビート三羽烏と呼ばれ、新しい米国を代表する作家とされているだけに、この偏見に満ちた「リベレリズム」の記述に驚きます。

まあ屁理屈を言って、映画にケチをつけるのをやめましょう。

映画は映画を発明しています。

まず、メキシコとエクワドルがよく撮れています。

セックス・モンスターの話なのに、「澄んだはじけるような空気」が映像化されています。

つぎにモンタージュ(編集)が素晴らしい。

麻薬中毒者の話ですから、イメージの飛躍は許されます。映像と映像のつながりが楽しめます。

小説にはない映画特有のヴィジュアライゼーションがあります。

そして時代を超越したカート・コバーンニルヴァーナ」の音楽でしょうか。

監督はイタリア人のルカ・グァダニーノ(1971~)。なんとシチリア島パレルモ出身です。

パレルモのマッシモ劇場は、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー・パート3』の舞台になりました。

パレルモ出身というだけでグァダニーノ監督を尊敬してしまいます。

最後に一言。

個人的な感想ですが、ダニエル・クレイグを見ていて、いつもロシアのプーチン大統領を想像してしまいます。

「だとするとダニエル(プーチン)が抱いたドリューは誰なの?」

「フランス大統領マクロンということなの?」「ウソ?」

プーチンはドイツのメルケル元首相とも関係があったというじゃない?」

プーチンAC/DC(二刀流)なの?」

「そういえば、<プーチン>という名前もなにやら暗示的よね!」

もし私の直感が正しければ・・・・・国際的なスキャンダルになります(笑)。