クリエーティブ・ビジネス塾45「タダシ・ショージ」(2016.10.17)塾長・大沢達男
「『私には、ドレスはムリ!』。だったら、タダシ・ショージはいかが?」
1、福原愛
愛ちゃん結婚おめでとう。それにしても彼氏はイケメン(中華民国・江宏傑=ジャン・ホンジェ)ですね。台湾でも結婚発表のときは、普段は見せないロングの髪を見せて、素敵でしたよ(9月22日)。トップが白で、ボトムが黒、ウエストスパンコール刺繍ツートンワンピース。あのドレスは、タダシ・ショージだったんですね。
タダシ・ショージ(庄治 正、1948年生まれ)は、オバマ大統領夫人ミッシュエル・オバマも愛用する、世界のセレブが注目するドレスづくりの日本人ファッションデザイナーです。
宮城県仙台市出身、仙台第2高等学校卒業。現代アートの高松次郎に師事。1973年渡米、ロスアンゼルスでファッションデザインを学び、舞台衣裳デザイナー、ビル・ウィットンのもとで働き、エルトン・ジョン、スティービー・ワンダー、アース・ウィンド・ファイアーなどの衣裳づくりを手掛けます。1982年にファッションハウス「タダシコレクション」を設立、現在では世界の4000店舗で販売される有名ブランドに。さらに2007年秋からニューヨークファッションウイークに参加。「タダシ・ショージコレクション」は世界のセレビリティに広く支持され、レッドカーペットでも多くのハリウッド女優に愛用されるようになっています。
2、ドレス
1)着心地のドレス
タダシのドレスは、「私にドレスはムリ!」と思い込んでいる人に、着てもらうドレスです。まず着心地がいい。快適な着心地が着ている人を美しく見せます。腕を上げたとき、ハンドルを握ったとき、どんなポーズも美しい。立体裁断、バターン(型紙)起こし方に秘密があります。さらにはドレスでは考えられないストレッチ素材も使っています。さらには生地に穴をあけ伸びやすく、レースをあしらったりもしています。
2)ビンテージのジーンズと変わらぬ価格
注目すべきは価格です。300ドルから1000ドル(3万円〜10万円)。福原愛さんが着ていたのは、6万8500円(税込み)です。なぜお手頃価格なのか。縫製に秘密があります。ドレスの価格がかさむのは縫製。そこでタダシは立体的でなく、フラットに縫えるデザインにして、縫製コストを下げています。さらに低価格の販売でも経営を安定させるために、売れ残った分を返品される委託販売ではなく、納入した商品をすべて買ってもらう買い取り方式を採用しています。
3)ドレスは不滅
リピーターがなんと60%もあります。タダシ・ショージはお客様の変身願望を叶えています。お客様はタダシ・ショージにはまります。ドレスは廃れません。ハイ・ファッションとロー・ファッションのミックス、ノージェンダー、ドレスとライダーズ・ジャケット、デニムジャケットの組み合わせオーケー、もちろんブーツもスニーカーも。ドレスはパーティー専用ではありません(YOMIURI ONLINE『宮田理江のモード日和』参考)。
3、ファッション
フランス、ルイ王朝時代の女性ファッションは長い裾の大げさなドレスでした。女性は体型を整えるための窮屈なコルセットに縛られていました。女性を自由に解放したのはシャネルブランドの創始者ココ・シャネル(1883~1971)です。シャネルは、ツィードやジャージーのジャケットとスカートを組み合わせた、シャネル・スーツを作りました。それは単なるファッションではなく、社会的に進出する女性の象徴でした。
1960年代にはロンドン発のミニ・スカートブームがあります。髪はベリーショート。ウォッシュ&ゴー、セットも何もせずに出掛けられる活動的なファッションでした。1970年代にはジーンズファッションが世界中に広まります。女性はますます活動的になりました。そして1980年代に入るとジョルジオ・アルマーニの活躍が始まります。ベージュとグレーの女性スーツはキャリア・ウーマンの象徴になります。働く女性もおしゃれになってきたのです。日本人デザイナーの川久保怜は黒の魔術師としてカジュアルファッションに革命を起こしました。山本寛斎はジャポニスムでパリに殴り込みをかけました。そして三宅一生は独特のドレープファッションで世界を魅了しました。
しかし以上は、普段着や仕事着の話。フォーマルなドレスの世界は、さほどの革命はありませんでした。午後の集まりのアフタヌーン・ドレス、夕方の軽いお食事のカクテル・ドレス、正式な夕食会のイブニング・ドレス。ドレスはワンピーススタイルが基本です。ファッションの歴史を振り返ると、タダシ・ショージはドレスのカジュアル化の革命児です。さて、タダシ・ショージをいつどこで着るか・・・手始めに、卒業式はいかかが。