『言ってはいけない』は、ホントにタブーか?

クリエーティブ・ビジネス塾46「言ってはいけない」(2016.10.25)塾長・大沢達男

「『言ってはいけない』は、ホントにタブーか?」

1、不愉快
言ってはいけない』(橘玲 新潮新書)が30万部以上のロングセラーになっています。「これは不愉快な本だ。」と最初に断ってあります。だから文句を言うのは筋違いですが、やはり文句を言いたくなります。
主張も簡単です。人間は平等にできているわけではない。現代の進化論はそれを証明している。政治的に主張される人間中心主義(ヒューマニズム)なんか科学的に嘘っぱちだ。進化論は、残酷すぎる真実を提示し、良識を踏みにじり、感情を逆なでする。だけれど、「言ってはならない」とされている残酷すぎる真実こそが、世の中をよくするために必要である。だからこの本を書いた、というものです。
2、残酷すぎる真実
1)黒人と白人の知能格差・・・アメリカではIQ(知能指数)75以下を知的障害としている。知的障害がある子どもの割合を白人と黒人を比べてみる。社会階層を5つに区分して最下層の知的障害のある子ども割合は、黒人42.9%、白人7.8%、最上層では黒人3.1%、白人0.5%となる。どの階層でも知的障害のある子ども割合は、黒人が大きく上回っている。知能指数とは言語的運用能力と論理数学的能力である。政治家、弁護士、医者、科学者はIQが高い、逆にIQが低いと、社会の落伍者になってしまう(前掲書p.46~48)。これを『言ってはいけない』の著者は「残酷すぎる真実」といいます。もちろん橘氏は、「黒人の並外れた身体能力」、「天性のリズム感」を認めます。なら、陸上競技のカール・スイスやウサイン・ボルト、音楽のジョン・コルトレーンB.B.キングの存在は、言ってはいけない「残酷すぎる真実」でしょうか。
2)ユダヤ人はなぜ知能が高い・・・ユダヤ人は世界人口の600分の1、しかしユダヤ人は科学関連のノーベル賞の4分の1を獲得している。ユダヤ人はアメリカの人口の3%未満だが、企業のCEO(最高経営責任者)の20%を占めている。しかしすべてのユダヤ人高い知能を持っているわけではない。アシュケナージ系(ドイツ系)で金貸しで生計を立て、数学的知能が優れてきたとされている(前掲p.49~53)。でも、アシュケナージ系は、重篤な遺伝病を持つ率が高いことでも知られている(他のヨーロッパ人に比べて100倍)。ところでいま、ノーベル文学賞で世界を騒がしているボブ・ディランアシュケナージ系のユダヤ人です。言ってはいけない「残酷すぎる真実」でしょうか。
3)「面長の顔」と「幅の広い顔」・・・○幅の広い顔の男性は、ほっそりした顔の男性に比べて、3倍嘘をつく。○サイコロの目の数でくじに当たる実験では、幅に広い顔の男性は、ほっそりした顔の男性に比べて、実際に出た目の数より多い数を申告する比率が9倍。○賞金の山分けで、幅に広い顔の男性は、公平な分配を嫌った。○殺害された頭蓋骨を調べると、ほっそりした顔の男性が圧倒的に多い。ほっそりした顔の男性は幅の広い男性に殺される(前掲p.131~132の要約)。ほっそりした顔の織田信長は殺されました。幅の広い顔の徳川家康は徳川300年の平和を築きました。言ってはいけない「残酷すぎる真実」でしょうか。
3、橘玲(たちばなあきら 1959年〜)
著者の橘玲は、金融関係の小説で世の中を騒がしている人です。『タックスヘイブン』(橘玲 幻冬社)、『マネーロンダリング』(橘玲 幻冬社)は、他の追随を許さないインテリジェンス小説、国際金融情報小説です。『タックスヘイブン』は佐藤優氏がほめているのですから、大したものです。
ただし橘玲氏の小説は本人が『言ってはならない』指摘しているような、黒人ではない白人の、知能が高いユダヤ人の、そして生存競争で勝ち抜く幅の広い顔の男性の小説です。
黒人は白人より知能で劣る。ユダヤ人の知能は抜きん出ている。面長の男性は幅広い顔の男に殺される。
なぜ、言ってはならない、のでしょうか。人間は平等である、という近代の理念に反するからでしょうか。とんでもない話です。できる親の子はできる。できない親の子はできない。そんなことは小中学校の体験でだれもが知っています。できるできないが、なぜ残酷な真実なのでしょうか。十人十色です。
つぎに、「言ってはならない」と考えるのは、自分ができる側にいると思っているからです。「残酷な真実」もそう、できる側の上から目線です。平等とか言ってるけどさ、知能には歴然たる差があるんだ。ゼッタイ言ってはならない。運動会の競争で、手をつないでゴールインする、いやらしさがあります。
そして、人間の能力に差があるなら、どうするかの視点が全くありません。「言ってはならない」ではなのも解決しません。答は簡単。友達と信じ合い。すべての人に慈愛の手を差し伸べ、人々や社会のためになる仕事をすることです。そして、人間はIQ(知能)だけでなく、EQ(感覚)とSQ(性愛)で、判断すべきです。