クリエーティブ・ビジネス塾39「中国炎上」(2012.10.10)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、危機
日本のビジネスリーダーが読んでいる経済雑誌『週刊東洋経済』(9/29)が、「中国炎上」というセンセーショナルな特集を組みました。日中の現在の複雑な関係を考えると、「やっぱり!!」という感じを持たざるを得ません。しかし、中国の不幸を喜ぶことはできません。
たとえば自動車の日産は世界で販売する自動車535万台の25%の135万台を中国で販売することを予定しています。たとえばユニクロのファーストリテイリングは製品の75%を中国で生産しています。たとえばiPhone(米アップルのスマートフォン)は、日本、韓国、台湾で調達した部品を深?などの中国各地で生産しています(日経9/28)。もし中国経済が炎上するなら、その火の粉はアジアそして日本にも飛んで来て、多大な被害をもたらすことになります。
2、炎上
なぜ、炎上が騒がれるようになったのか。3つの理由があります。
1)経済の失速
まず、2012年の国内総生産(GDP)の実質成長率が7.8%と13年ぶりに8%を下回るに見通しになったことです(日経9/28)。成長が8%を下回ると、雇用が確保できない。失業者が出ます。さらにリーマンショック後の09年にやった4兆元(1元=約12円)大型景気対策の後遺症があります。地方政府の債務が急増しています。不良債権化が懸念されています(前掲東洋経済)。
2)経済格差と腐敗
国有企業の幹部の年収は、日本の上場企業の役員並み。だが、工場労働者の平均月収は3000元(4万円弱)。さらに毛沢東の故郷、湖南省に平均年収2900元(3.5万円)の農民がいます(日経10/1)。高速鉄道事故を起こした鉄道部は競争原理の働かない独占企業。座席からアクセサリーまで仕入れ価格は市場の数倍。北京・上海線以外は赤字。かつての日本国鉄です。
3)共産党の終わり
重慶市党員会書記の薄煕来(はくきらい)解任され、共産党を除名されました。太子党(共産党の有力幹部の子弟の集まり)の敗北です。しかし次の国家主席は太子党の習近平(しゅうきんぺい)。対するは共青団(共産党の青年組織の出身)の現国家主席の胡錦濤(こきんとう)。共産党の最高指導部人事をめぐる戦いが続いています。カギになるのはインターネット。ネットが中東の国々のように、共産党の権力の座を揺さぶっています。
以下は噂。中国人が中国から逃げ出しています。お金持ちは米国に資産を避難させています。米国の市民権を取得しています。さらに米企業は中国から撤退を始めています。ところが日本の企業は逃げ出したくても、さまざまな規制で逃げ出せないでいます。どの噂も真実です。
3、長江文明
○日本の主張。1884年ごろには尖閣周辺で沖縄の古賀辰四郎が漁業をしていた。1885年に明治政府は清(現在の中国)の支配が及んでいないことを確認し尖閣諸島を日本の領土に編入した。
1920年に尖閣沖で遭難した中国漁民を助けたことに対し中華民国は感謝状を日本人に贈っている。漁民の漂着場所は「沖縄県八重山郡尖閣列島」と明記されていた。
○中国の主張。明代(1368~1644)に尖閣は台湾に所属する諸島だった。「日本一鑑」(1560年前後に刊行)に書いてある。「釣魚島(尖閣諸島の中国名)などは台湾付属の島しょだ。台湾と同じく古くから中国の不可分の領土だ」(日経9/28)。(しかし中国が尖閣の領有権を主張した最初の公式文書は、71年12月の声明である。)
「日中関係は日中双方の繁栄だけでなく東アジア地域全体の将来を決める。日中関係を建設的な軌道に戻すことが大義である」(田中均元外務審議官 日経9/26)。
世界4大文明の前に存在した長江文明(黄河文明より古い)は、日本と同じ稲作文明。水と森を大切にする文明でした。森を切り倒し荒れ地を作り、一神教で戦い殺しあう麦作文明ではありません。日本と中国が始める新しい文明の時代を地球が待っています。