センテネリアン(100歳)が、これからの人生設計の基準になります。

クリエーティブ・ビジネス塾38「センテネリアン」(2012.10.3)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、センテネリアン(centenarian=100歳の人、100歳以上の人)
日本のセンテネリアン(100歳以上の人)が急速に増えています。2012年は51,376人。5年前の2007年から2万人近く増加。30年前の1980年はわずか1,000人だったのですから、驚きです。この数はさらに増えます。なんとなれば、ことし(2012年)の65歳の以上の人が、3,000万人を突破したからです。日本の人口の1/4は高齢者です。
センテネリアンでは、もうひとつ注目しなければならないことがあります。センテネリアンの男女比。男性は6,534人、女性は44,842人。女性が87%を占めています。アバウトに言って、センテネリアンの男性は10人に一人、センテネリアンの男性はモテます。
2、寿命1.000年
『寿命1000年』(ジョナサン・ワイナー、鍛原多恵子訳 早川書房)は、『老化を止める7つの科学=エンドエイジング宣言』(オーブリー・デ・グレイ&マイケル・レイ NHK出版)の著者オーブリー・デ・グレイを主人公にしたSF調のノンフィクションドラマです。ちょっと専門的でわかりにくいのですが、以下の7つのことを実現すれば寿命1000年の時代が来ると言います。
1)分子が年齢とともに絡み合い固くなる=架橋結合をなくす。2)ミトコンドリアを健康なもの取り替える。3)細胞内にたまるゴミをなくす。4)細胞外の間隙にたまるゴミをなくす。5)細胞が老いて厄介者にならないようにする。6)細胞が死にまわりに毒素をまき散らさないようにする。7)細胞が癌にならないようにする。
むずかしいことが書いてありますが、ひとことにまとめるなら、新陳代謝によって体内に貯まるゴミを掃除すること。そして7)の癌を克服すること。ドラマではここがクライマックスになっています。ガン細胞は常識を超えて分裂します。そこで細胞が分裂しないようにする方法を考えるのです。
3、寿命
人はなぜ死ぬのか。あたり前のようですが、理由があります。なぜならヒドラのような単細胞生物は、死なない。老化とも無縁だからです。なぜ死ぬのか?どれもノーベル賞ものの研究仮説で、たくさんの議論がありますが、3つ紹介します。
1)ミトコンドリアフリーラジカル老化説
私たちは細胞の中にエネルギー工場のミトコンドリアを持っている。ミトコンドリアは、栄養と酸素からアデノシン三リン酸というエネルギーを作り体内に送り届けてている。しかしそのとき、フリーラジカルというゴミと活性酸素という毒を作りミトコンドリアと細胞を傷つける。つまり命の源であるミトコンドリアが老衰と死に関与しています。
2)ヘイフリック限界
細胞には非分裂細胞と分裂細胞がある。非分裂細胞とは、ニューロン神経細胞)と心筋細胞で、その寿命は120年。一方、分裂細胞の分裂にも限界があり50回(ヘイフリック限界。ただし生殖細胞はこの限りではない)で、この寿命も120年。ということで、人類の寿命は120年(『寿命はどこまで延ばせるか』池田清彦 PHPサイエンス・ワールド新書)。
3)種のファッシズム
単細胞生物は老化に無縁。ヒトのような多細胞生物には、生殖細胞と体細胞がある。生殖細胞の子孫は生き残り、体細胞の自分は亡びる。個体の存続より種の存続が優先される。これが種のファシズムの理論です(『ミトコンドリア・ミステリー』林純一 講談社)。
寿命1000年の世界は厳しいものです。人口構成は逆ピラミッドになります。子供や赤ちゃんはいません。人はそれぞれ自己実現のための世界に没入しています。寿命が延びることは医学や生命科学の勝利でしょうが、人生設計や家族生活を考えれば手放しで歓迎できるものではありません。
「人生は恋と革命のためにある」。小説家太宰治は『斜陽』のなかでこう書きました。恋とは誰かを愛することです。革命と世の中のために役に立つことです。本当の問題は寿命ではありません。センテネリアンにとっても、愛する人がいるか。世の中のためになる仕事があるか、が問題になります。