THE TED TIMES 2024-30「佐藤優」 7/27 編集長 大沢達男
<問題は検察庁が「超ドメ(極端に国内指向の)官庁」で、国際政治の現実がわからない>(『国家の罠』 p.292 佐藤優 新潮文庫)
1、東京地検特捜部
法律の専門家でもない私が、東京地検特捜部のやることには、いつも違和感を抱いてきました。
そしてホリエモン(堀江貴文)の「特捜部はスタンドプレーが好きだ」の発言により、違和感は特捜部への大きな疑問になってきました。
そして佐藤優の<検察庁は超ドメ官庁>で特捜部への疑問は確信になりました。
現在、2020東京五輪汚職事件が東京地検特捜部により摘発され裁判が進行中です。
このことによる国益の損失は計り知れないものがあります。
まず万博が迷走しています。そして札幌五輪は開催の機会を失っただけでなく、いつ開かれるのか五里霧中の段階にあります。
1970年の万博は、巨大なテーマパークのファミリー・エンターテイメントになり、日本人を元気にしました。しかし大阪万博はいまややっかいものでしかありません。
1972年の札幌ではジャンプ競技での日の丸飛行隊の活躍がありました。しかし札幌五輪2030は断念、ウインタースポーツのかける若者たちのすべての夢は奪われました。
何故こんなことが起きるか。検察庁が、国際政治だけでなく国際スポーツの世界が分からない、<超ドメ官庁>だからです。
2、角栄、オリエモン、ゴーン
1)田中角栄
始まりは、ロッキード事件(1976年)です。
元総理大臣の田中角栄が、全日空の旅客機選定にからみ、東京地検特捜部から受託収賄と外為法違反で逮捕されました。
まず、受託収賄は、請託の有無、職務権限があるか否か、金銭の授受があったか、で決まります。
次に、ロッキード社のコーチャン、クラッター、エリオットの嘱託証人尋問調書は、反対尋問を受けずに作成されました。認められません。
でもこれらは、ささいな法律論争でしかありません。
真相は、キッシンジャーの陰謀説。キッシンジャーの邪魔者・田中角栄を追放することに、日本の検察庁が協力したことです。
さらに馬鹿げているのは、日本政府は、元NHK解説委員の平沢和重を使い日系人のアメリカ情報将校(スパイ)から情報を集めていました。NHKで働いていたフランク・馬場です。
2)ホリエモン
2006年東京地検特捜部は堀江貴文を証券取引法違反で逮捕しました。
驚きは逮捕の2日後に、英国の経済紙「フィナンシャルタイムズ」が、ホリエモンの支持の論説を掲載したことです。
<堀江氏は、まず官僚主義と慣行主義を打ち破るヒーロー、つぎに金融市場のルールの不備をあぶり出している、そして古い経営者にやる気を起こさせている。>、<捜査のいかんにかかわらず、日本には堀江氏が必要である>というものです。
なぜ特捜部はホリエモンの逮捕したのでしょうか。「稼ぐが勝ち」と宣言した堀江貴文を道徳的に許せなかったからです。
3)カルロス・ゴーン
2018年東京地検特捜部は元・日産自動車会長カルロス・ゴーンを、金融取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)、特別背任で起訴しました。
しかし真相は日産の一部経営陣と検察庁が組んだ、ゴーン氏追放のクーデターでした。
日産のだれもが、ゴーン氏とディスカッション、ディベートできなかった、のです。
♫新しい上司はフランス人/ボディランゲージも通用しない♫(ウルフルズ 2001年)
缶コーヒー「ジョージア」のCMそのものでした。
ゴーンは保釈中に密出国し、レバノンで暮らしています。
特捜部は自らの無能と日本人の無能を世界に宣伝しました。
2022年東京地検特捜部は、元電通の東京オリンピック組織委員会高橋治之理事を、収賄で逮捕しています。
高橋はコンサルティング会社を経営していて、その会社のコンサル料として様々な会社から収益をあげていました。それが収賄とされました。
理事はみなし公務員だからというものですが、高橋は理事就任時に兼業の有無を問われていません。さらに高橋のような非常勤理事には職務権限に関する明確な規定はありませんでした(日経 2022.9.7)。
弁護士の広中淳一郎は「特捜の暴走」と決め付けています。さらに特捜への疑問を提出する報道は、2022年9月から一切ありません。司法記者クラブを通じて言論統制が行われています。
検察は2013年の東京五輪プレゼンテーションの歴史的勝利と2022東京五輪の意義を全く理解できていません。
さらに金にならないアマチュアスポーツとその国際的人脈を育ててきた電通の半世紀以上の企業努力をまったく理解していません。
FIFA(国際サッカー連盟)とIOC(国際オリンピック委員会)、ワールドカップとオリンピック、アングロサクソンが築き上げたビジネス・モデルをわかっていません。まさしく検察庁は「超ドメ官庁」です。
512日間の独房生活を送った佐藤優は人質司法に対して以下のように文章な残しています。
「先生(注:佐藤担当の弁護士)法曹村の掟とは別次元の話です。国際スタンダードで私に言っていることは筋が通っています。一見、法律家には馬鹿げて見えることでも、ここで筋を通しておけば、後で必ず役に立ちます。この経緯をきちんと残し、ロンドンのアムネスティインターナショナル本部に送り、日本の人質裁判が国際人権スタンダードからいかにずれているかを訴えれば、それなりの効果はあります」(『国家の罠』 p.476)。
この記述を受けるような形で、東京地検特捜部から、五輪汚職で逮捕され起訴された角川歴彦は、人質司法は日本国憲法と国際人権法に違反するとして国を相手に「人質司法違憲訴訟」を提起しました。
佐藤優は極めて特殊な例として、拘置所生活を220冊の読書で「エンジョイ」しましたが、常人には耐えられるものではありません。
80歳の角川歴彦は、突然の逮捕、起訴、長期勾留、保釈まで、基本的人権と尊厳が人質司法という公権力の制度のよって侵害された、と訴えに出ました。
佐藤優は東京地検特捜部の国策捜査を説明していますが、よくわかりません。それより、検察庁は「超ドメ官庁」の方が説得力があります。