各社の社説を、1)新聞力(ニュースがあるか)、2)論説力(論があり説があるか)、3)創造力(オリジナリティがあるか)で、採点しました。

THE TED TIMES 2024-01「元旦社説」 1/1 編集長 大沢達男

 

各社の社説を、1)新聞力(ニュースがあるか)、2)論説力(論があり説があるか)、3)創造力(オリジナリティがあるか)で、採点しました。

 

朝日新聞(暴力を許さね 関心と関与を)

ウクライナ、ガザ、ミャンマースーダンで戦火が激しく、「警察官」(米国)を失った世界は不安定化した。ガザに住む朝日の通信員ムハムド・マンスールさんは、まず水、そして薬、食糧、燃料の支援が必要だという。パレスチナイスラエルの互いの憎悪の深さに驚かされる。ウクライナとガザの戦争からの教訓がある。まず戦闘が始まれば止められないということ。国連も機能不全、しかし国連を見限るわけにいかない。つぎに戦争には憎悪と不信の蓄積があること。ロシアの侵略は10年前から、パレスチナイスラエルには長年にわたり壁やフェンスが築かれていた。理不尽を見過ごさない、争いの芽を摘む関心と関与を。

*2年連続して偉そうに国際問題を論ずる朝日。北朝鮮から帰ってこないめぐみさん、ISに虐殺された湯川さん・後藤さん、アフガンで銃撃された中村医師を忘れたのか。「暴力を許さぬ、関心と関与」とは何か。日本は何もできないではないか。高校生の新聞ではあるまいし。○新聞力B、論説力C、創造力 C、総合C

 

毎日新聞(二つの戦争と世界 人類の危機克服に英知を)

欧州と中東の戦争は「人類の危機」だ。対テロ戦争を始めた米国が20年後のアフガンから撤退したように軍事力で対立は解消できない。まずは停戦で死傷者を減らすことである。国際社会の脆弱性が露呈しているいま、国家中心から人間中心の視座に転換しなればならない。世界人権宣言の精神である。国際司法裁判所(ICJ)そして「法の支配」。さらにもうひとつは国家に対して市民が声を上げることである。長男を戦闘で失ったイスラエル人母親すらが、パレスチナ人との共存の未来を望んでいるではないか。欧州の移民規制のような排外主義は許されない。多様性の尊重である。人類の危機には他者との共生の道がある。

*人類の危機を論じるほど、毎日新聞が国際社会に影響力があるのだろうか。朝日と同じ。日本を代表する「朝毎」は終わりに近づいている。昨年は苦労して、プーチンから武蔵野市へと問題を引き寄せたが、無理だった。大風呂敷を広げる時代は終わった。ただし文章はよい。○新聞力A ○論説力B ○創造力C ○総合B

 

○読売新聞(磁力と発信力を向上させたいー平和、自由、人道で新時代開け)

ウクライナ、中東、そして北方領土のロシア、尖閣と南太平洋の中国、核ミサイルの北朝鮮・・・大変な時代なのに日本の政治は立ち往生している。戦場をテクノロジーが支える不都合な現実がある。深い理念が必要である。コモンセンスという「常識」という意味ではない人道、平和、自由を求める「共通感覚」がある。これが日本の使命である。日本には安全・安心。伝統文化、アニメ、さらにはスーパーコンピューター、医薬品の研究・開発がある。しかし新技術には生成AIの偽動画のような弊害もある。そして「静かな有事」である人口減少がある。読売新聞は自由・人間・国際主義を読売信条を起点にして平和に貢献する。

*新聞が何をするのか、日本は何をすべきか、そして世界をどうすべきか。当たり前の議論が展開されているのが、好感持てる。朝日、毎日との明らかな差別化ができている。ただし渡部恒雄氏が発明した読売だけの長い社説を書く力が今の記者にはない。再考すべきだ。○新聞力B ○論説力B ○創造力A ○総合B+

 

産経新聞(「内向き日本」では中国が嗤(わら)う)

国民と政治が内向きなら、中国は傍若無人に振舞う。外交安全保障路線の推進を忘れてはならない。台湾有事は日本有事である。トランプ当選なら、ウクライナはロシア有利に、日本の安保環境も激変する。米核戦力の日本配備、日本核武装を論じなくてはならなくなる。今年は国際政治上の暴風圏に突入する年である。政治改革は重要だが、外交安保政策を疎かにしてはならない。30年前の第一次北朝鮮核危機のとき日本は「内向き」だったが運に恵まれただけである。いまや米国は衰退、中国を阻止できない。若手、中堅議員に告ぐ、「乃公(だいこう)出でずんば」(俺がやらなきゃ誰がやる)の心意気で、国家国民のために働き抜いてほしい。

*快いアジテーション。産経らしい。論説委員長は売り出し中の防大出身の新聞記者。ひとつ問題がある。以前の社説は必ず現場で書かれていただけに、理屈中心になったのは残念。理屈に対する裏付け、エヴィデンスが不足。

○新聞力B ○論説力A ○創造力A ○総合A

注:「及公(だいこう)出でずんば蒼生(そうせい)を如何(いかん)せん」(自分が行動しなければ、人民をどうすることもできない)。東晋の政治家・謝安(320~385)の言葉。

 

日本経済新聞(分断回避に対話の努力を続けよう)

岸田政権は防衛関係費を27年度までにGDPの2%まで引き上げる計画だ。脅威には日米間の抑止力が必要だが、抑止だけで戦争は防げない。外交努力も欠かせない。昨年11月の米中、日米、首脳会談は大切な一歩になった。中国、ロシア、北朝鮮権威主義国家には、首脳に直接こちらの主張を伝えることが有効である。国家間の分断だけでなく民主主義国家の中でも分断はある。対話が必要である。SNSでは先鋭的な言論が増幅される。「よりオープンな話し方と聞き方を学ぶ必要がある」。今年は、国家、企業、個人、各レベルで対話を増やし、話し合いで物事を解決する力を磨きたい。

日本経済新聞が「経済」新聞でなくなったのは、喜ぶべきか悲しむべきなか。フィナンシャル・タイムズの真似をしているのか。しかし「話し方聞き方」はとてもいい。日本はコミュニケーションを教育していない。もっと深く書きたかった。朝毎よりまとも。

○新聞力B ○論説力A ○創造力B ○総合B+

 

東京新聞(贈り物ではなく預かり物)

100年後の自分たちの子孫も基本的に私たちと同じように暮らしていると私たちは想像します。では100年後の地球となると正直、疑問符がつきます。地球異変が起きています。<地球は先祖からの贈り物ではない。子孫からの預かり物だ>。今の世代が欲望を満たすために病んだ地球を未来の世代が押し付けられる、こんな理不尽な話はありません。<政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える>。身勝手な理由で借金まみれの国を次世代に手渡すことはできません。国もまた子孫からの預かり物です。子孫が生きる未来をゴミだらけにしたくはありません。

*東京の社説のスタイルが確立された。論説というより、下町のいなせな若旦那のぼやきのようである。粋で洒脱、まさしく「都新聞」の伝統。昨年よりさらに進化している。

○新聞力A ○論説力B ○創造力A ○総合力A+

 

○元旦社説ランキング

岐路に立つ新聞

1)新聞は読まれていない。広告メディアにならない。(2022年上半期  朝日430万部 毎日193万 読売686万部 産経102万部  日経175万部)

2)新聞は20年以内に消滅する(2023年10月 新聞は2859万部 前年比225万部減  新聞購読は2世帯に1世帯)

3)新聞記者の劣化(新聞を読むのは大学生の1%、新聞を読むのはおじいちゃん、新聞記者は憧れの仕事ではない)

でも、・・・・・・私たちは新聞を読み続ける、新聞とともに死ぬ。

そこで、2024年のランキング

1)東京 2)産経 3)日経 4)読売 5)毎日 6)朝日

○論じられなかった問題。

1)リベラリズムの危機(ウクライナ戦の敗北とは米国リベラリズムの敗北であり 日本国憲法の敗北)

2)東京地検特捜部の暴走(東京五輪汚職事件、自民党のパーティー券売上金のキックバック・裏金)

3)劣化する日本(少子化高齢化社会認知症)と新しい日本(大谷翔平 藤井聡太 映画「The Perfect Day」)

 

End