オードリーやジョニーのように、メガネが面白い。

クリエーティブ・ビジネス塾20「メガネ」(2013.6.6)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、おしゃれ
あなたはいくつメガネを持っていますか。サングラスを愛用していますか。伊達(だて)メガネをおしゃれのアクセントにしていますか。
4月18日と4月19日、2日連続で、JINS(ジンズ=株式会社ジェイアイエヌ)が日本経済新聞に衝撃的なカラーの全面広告を打ちました。古風なヨーロッパ風の部屋のソファーに横になり、赤いハイヒールの素肌の両足を大胆にイスに乗せ、なにか白い液体を口にはこび、スプーンを口にくわえこちらを見る黒ぶちの眼鏡をかけた女。「眼鏡と、恋に落ちましょう。そろそろ。ジンズは新しい眼鏡です。J!NS CLASSIC」。翌19日は、同じ女性のアップ。黒ぶちのメガネで唇に右手の指を添えています。「J!NS CLASSIC」のタイトル。モデルの女性はいい女です。宮沢りえさんだろう、と思いますが、確信を持てません。なぜなら、ふだんの宮沢りえさんとひと味違うからです。
2、JINS
広告を打ったのは、大手眼鏡チェーンのJINSです。これはある狙いを持っていました。
4月23日には、同じく日経で違う商品広告を打ちます。舞台は京都府立医科大学付属病院、「命の現場でたたかう人々を、守るメガネがある。J!NS PC」。こちらはパソコン用メガネの広告です。そして5月30日。「おかげさまで、ジェイアイエヌは本日、東証一部に上場しました。未来を見るメガネ。J!NS」と結ばれます。日経は、この一連の広告掲載にお礼をするように、5月31日にJINSの企業活動をフォローする記事を掲載します。
JINSの田中仁社長は高卒で信用金庫に勤めた後、独立しJINSを立ち上げました。JINSは、本人の名前、仁(じん)からです。メガネ市場は縮小し続け、田中も苦境に立っていました。そんなときに田中はユニクロ柳井正に会い「あなたの会社の事業価値は?」は聞かれ、返答に困ります。そして、「目を守る、よく見せるための新機能、新デザイン」の答えにたどり着きます。目を守るパソコン用眼鏡は、年間に100万本を売るヒットになりました。そしてもうひとつ、おしゃれとしてのメガネ。それを新聞広告でやりました。
JINSのウェブサイトを見ると、新聞広告のモデルはやはり宮沢りえさんでした。同じく、ポスターに登場する帽子をかぶった、ナゾのひげ面の紳士は、リリー・フランキーさんです。りえさんもリリーさんも、ふだんとあきらかに違います。新しい魅力があります。メガネはやはり人を変身させます。
3、スター
メガネをかけたスター、セレブといったらだれを想像しますか。まず思い出すのは、オードリー・ヘップバーンです。映画『ティファニーで朝食を』の、サングラスです。歴代の映画スターで女性にいちばん人気があるヘップバーンは、メガネと不可分です。
そしてもうひとり、意外な人が思い浮かびます。カリスマ美容師のヴィダル・サスーン。晩年のヴィダルは、いつも黒ぶちメガネをかけています。シブい!まねしたくなります。
この二人がかけているメガネのメーカーは、イギリスの「Oliver Goldsmith」というブランドです。鼈甲(べっこう)、かんたんにいうと亀の甲羅から作ったフレームを使っています。ヨーロッパのおしゃれなメガネといったら、オリバーゴールドスミスです。
ではアメリカで、メガネのスターといったらだれですか。若いあなたも知っています。断然!ジョニー・デップです。ジョニーのメガネは「Tart Optical」というブランドです。タートは1970年代に廃業しています。いまあるのは復刻版、日本製のセルロイド製です。火災の原因になるセルロイドはヨーロッパ、アメリカ、中国で生産が禁止されました。技術水準が高い日本だけ製造されています。
タートオプチカルは、永遠の青春スター、ジャームス・ディーンも、いま話題の歌姫レディ・ガガも愛用しています。
「Oliver Goldsmith」も、「Tart Optical」も、カッコいい。見れば欲しくなる。ただし高い。3万5000円以上。「JINS」なら6000円でオーケー。ウーム!?考えますね。おしゃれはつらいぜ。でも行くっきゃないでしょう。メガネでときどき新しい自分に変身するのです。