再び、ユニクロに学ぼう。

クリエーティブ・ビジネス塾19「ユニクロ」(2013.5.30)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、SPA
なぜユニクロがヒットしているか。それはいままでのファッションの事業モデルと違うからです。たとえばデパートでジーンズを買うのと、ユニクロジーンズを買うのとを比べてみればわかります。
デパートは、メーカーが作ったジーンズを、問屋さんを通して仕入れ、お店で売っています。
ユニクロは、自分の工場で作ったジーンズを、自分の店で売っています。ユニクロは自分が納得できる品質とデザインの「いいもの」を作れます。売れると思うものを「早く」作れます。さらにメーカーや問屋に支払う流通経費がいらないから「安く」作れます。ユニクロのような事業モデルをSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel=製造小売り業)といいます。
H&Mヘネス・アンド・マウリッツ、スエーデン)、ZARA(インディテックス、スペイン)、GAP(ギャップ、米国)、いま流行のファスト・ファッションは、みんなSPAです。
最近では、ファッション以外でもSPAが増えています。メガネの「J!NS」(ジェイアイエヌ)、靴の「ABCマート」・・・目立っているお店はSPAです。
2、志(こころざし)
ユニクロは世界のトップを狙っています。世界のファストファッションの売上高ランキングは、H&M2.17兆円(売上高)、ZARA2.12兆円、GAP1.6兆円、ユニクロ0.9兆円。ユニクロはこれを2020年までに5兆円にすることを計画しています。
SPAがユニクロのエンジンなら、仕事をする人間にはユニクロ精神の「志」があります。それは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というスローガンになっています。カッコいい。しかし実現には、血と汗の努力が必要です。私たち日本人が、国境を捨て世界に出なければならないからです。
1)半年で店長になれ、英語の勉強をして、グローバル化に備えろ、と命令されます。会社の公用語は英語です。働きが悪ければ、降格、減給もあります。
2)ファーストリテイリングユニクロを運営する会社)の東京本部の就業時間は、午前7時から午後4時です。人より早起きして仕事をして、夕方から自己学習の時間にあてるのです。
3)主戦場はアジアです。中国194店舗、韓国84店舗、シンガポール、フィリピン、そして
インドネシアです。命がけの航海に出なければなりません。
厳しい。だからユニクロでは落伍者が出ています。他企業から転職してきた中途入社の人材の大半は退職、新卒社員も入社3年以内の離職率が50%に達しています。「ブラック企業」のうわさがあります(日経5/13)。会長兼社長の柳井正のワンマンに下がついて来れない。批判があります。
しかし、柳井正はぶれていません。いまの若者は居心地がいい日本にだけ安住しようとしている。
この言葉はすべての日本人へのメッセージになっています。
3、機能性ファッション
SPAというエンジンで、ユニクロの「志」で、生み出される商品には、ユニクロの品質があります。
1)商品のライフサイクルが長い。他のファストファッションは1週間程度で売り切れを想定していますが、品切れせずに供給しています。しかも「匠」に管理された、工場の品質があります。
2)商品の機能が違います。この夏はグローバル戦略商品「エアリズム」を展開しています。エアリズムは収汗・速乾性に優れた機能性シャツです。冬の発熱、保温の「ヒートテック」と同じです。
3)素材の開発力が違います。東レなどの繊維の技術革新が背景にあります。
日本で始めてファッションデザイナーとして認められた森英恵は、日本人を見下す欧米人の偏見と戦ったと当時を回顧しています(日経5/5)。洋服後進国の日本人にはろくなものは作れないと、甘く見られていたのです。柳井正も同じように欧米と戦っています。機能で優れた素材、手仕事で優れた縫製、そしてベーシックなデザイン。ユニクロは、H&MともGAPとも違います。
「生きるとは一生をかけて自分を発見すること」、「一人前になるには、情熱を持ち自己を革新すること」。柳井正はかつてファーストリテイリングの求人広告で、こう語りました(2012.6.17)。いいじゃないですか。懸命に仕事して、一生かけて自分を発見しよう、ではありませんか。