クリエーティブ・ビジネス塾45「堀江貴文」(2013.11.28)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、ホリエモン
半沢直樹は作家池井戸潤が作った小説の主人公ですが、生きている半沢直樹がいます。ホリエモンこと堀江貴文です。堀江は、枠を敗る発想で次々と新しいビジネスを始め大成功をおさめますが、日本の支配層に危機感を抱かせたために、逮捕され刑務所にぶち込まれます。しかしついに刑務所から出て社会復帰をしました。ホリエモンの倍返しが始まります。
堀江貴文は1972年に九州のふつうの家に生まれます。本などはない貧しい家でしたが家にあった唯一の蔵書、百科事典を読んで少年時代を過ごします。ひとりの先生が堀江の博識を見出し地元の進学校をすすめ合格します。近所が驚きます。
ところが中学時代にパソコンにはまり、気づいたときには落ちこぼれ。回りは秀才ばかり、逆転はむずかしい。そこでホリエモンは東大入学のための作戦をたてます。国語・社会は百科事典の基礎力でいける、ターゲットを英語にしぼります。単語帳をスミからスミまで丸暗記します。それで劣等生が、東大合格。職員室を驚かせます。
しかし入学した東大には幻滅。家庭教師の収入で麻雀と競馬ばかり。しかし時代がホリエモンに味方、インターネットの時代が到来。中学時代のパソコン技術が生き、在学中の1996年に会社を設立し、東大を驚かせます。
それからの10年間は快進撃。2000年に東証マザーズ上場、2004年にプロ野球の近鉄バッファローズ(当時)の買収に挑戦、2005年にニッポン放送筆頭株主、フジテレビの支配を視野にいれ、とうとう日本中を驚かせます。
その後、衆議院員選挙に出馬落選、2006年に東京地検特捜部により証券取引法違反(風説の流布、偽計取引、有価証券報告書の虚偽記載)逮捕され、世界を驚かせます。
2011年に懲役2年6ヶ月の実刑判決が確定し服役し、刑期を終えます。現在、『ゼロ』(堀江貴文 ダイアモンド社)を出版し、ベストセラーにし、ふたたび世間を驚かせています。
2、権力
堀江は逮捕され収監された、しかし堀江本人も同世代の若者たちも、堀江が何か悪いことをしたとは思っていません。堀江は一貫して無罪を、そして今も主張しています。
堀江の逮捕は謎でした。まず、世界を代表する経済新聞英国の『フィナンシャルタイムズ』が、堀江逮捕を聞き、すぐに社説で異議を申し立てました。さらに、日本を代表するジャーナリスト田原総一郎も、若手のオピニオンリーダーである脳科学者の茂木健一郎も、堀江を支持しました。さらにそもそも堀江を逮捕した東京地検特捜部に不祥事が起き、検察の権威は失墜がしました。
逮捕はおかしい、裁判もおかしい。理解できないことですが、ここに権力機構の本質があります。いったん逮捕、起訴されると、法律の適正な運用で、権力機構は有罪に向けて動くようにできています。世の中を驚かし続けた跳ね返り者の、正義や良心や善意は、認められなります。いかさまとか八百長という言葉は当てはまりません。
3、倍返し
堀江の倍返しが始まります。何で倍返しをするか?「働く」ことによってです。
今の日本で何がいちばん問題なのか。働かないこと、ニートとフリーターです。日本は不況という空気、閉塞感という空気、「できっこない」という空気、ネガティブな空気にみちています(『ゼロ』p.190~191)。その象徴がノーベル賞候補作家村上春樹です。団塊の世代の作家、村上の小説の登場人物は働くことを卑下し軽蔑しています。堀江(1972年生まれ)の反抗のターゲットは半沢直樹(作者の池井戸潤は1963年生まれ)が戦う相手と重なっています。倍返しされるのは、働かないでカッコつけている団塊の世代です(もう彼らは働くことすらできませんが)。
収監から仮釈放まで堀江を捉えて放さなかった言葉は、「働きたい」のひと言でした。堀江はみんなと笑顔を分かち合いたい。そして1センチでも社会を前に進めたいと、願っています。そして新著の『ゼロ』も、「はたらこう」のメッセージで結ばれています。