『愛子天皇論』に賛成ですが、未来のことはわかりません。

THE TED TIMES 2024-15「愛子天皇論」 4/12 編集長 大沢達男

 

『愛子天皇論』に賛成ですが、未来のことはわかりません。

 

1、『愛子天皇論』(小林よしのり 扶桑社)

皇室典範第一条には、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」、とあります。

令和の天皇(1960年生まれ)の後は、秋篠宮(1965年生まれ)、そして悠仁親王(2005年生まれ)、さらに常陸宮(1935年生まれ)ということになります。

これでは皇統の維持が心許ないので、愛子天皇論が登場したわけです。

しかし今上天皇が100歳まで御存命であるとすると、問題が発生するのは2060年、さらに悠仁親王が100歳の時は3005年ということになります。

皇位継承は、あと10年ほどしか生きない私のような者の問題ではなく、未来の日本人が論じることです。

重々存じているつもりですが、偶然、書店で『愛子天皇論』(小林よしのり 扶桑社)を手にしてしまいましたので、この際、この本を参考にしながら、自分自身の考えをまとめておきます。

 

2、皇位継承

1)皇室典範

安定的な皇位の継承を可能にするアイディアの第1は皇室典範の改正です。

「男系の男子」とは何かです。

まず歴史的に女子の天皇はいました。「男子」と限定するのはおかしいのです。

飛鳥時代推古天皇皇極天皇斉明天皇)、奈良時代元明天皇元正天皇持統天皇孝謙天皇称徳天皇)、江戸時代の明正天皇後桜町天皇です。

男子だけが天皇になれるとされたのは、明治時代からです。

さらに「男系」とは何か。父方の血筋によって継承する家系です。

女子の遺伝子はYY、男子の遺伝子はXY。男系には神武天皇Y染色体が生きているという説です。

しかしY染色体は垂直だけでなく水平にも拡散していきます。神武天皇Y染色体は日本人に拡散しています。

男系も無意味ということになります。

皇室典範を改正し、「愛子天皇」を誕生させるは、筋の通った話です。

2)皇族拡大

皇室典範を改正せずに、安定的な皇位継承を可能にする2のアイディアは、旧宮家系の男系男子を皇族に復帰させるアイディアです。

これに対して小林は憲法違反だと主張します。憲法14条の「・・・門地により差別されない・・・」によってです。

しかし、実際に旧宮家系の男系男子をあたってみると、「適当な人材は存在しない」となり、この話は打ち切りになります。

 

3、愛子内親王

愛子さまはなぜ評判がいいのでしょうか。

まず、学習院時代の成績が優れていたという「うわさ」が、あります。

つぎに、お一人でお出かけになったとき、周囲の人へのていねいで気品のある対応が、評判になっていることがあります。

そして、新年祝賀の儀の際のティアラ。他の皇族方が2000万円もするティアラを新調されていらっしゃるのに、ご自分だけは黒田清子さまにお借りした物をお付けでいらっしゃいました。

さらに、日本赤十字社へ初出勤のダークスーツ姿が凛々しいとの評判もありました。

『愛子天皇論』を手にしすぐ購入を決めたのは、表紙と各章の冒頭を飾るポートレートのイラストに、愛子さまの人柄が描かれていたからです。

しかし残念ながら『愛子天皇論』では愛子さまの魅力にたいする記述がなく、逆に戦闘的な論述のために、愛子さまがそのような方なのか、誤解を招きかねないところがあります。

なぜ愛子さまは気品に溢れているのでしょうか。

なぜ愛子さまは無限に優しく見えるのでしょうか。

なぜ愛子さまは聡明に見えるのでしょうか。

それは愛子さまが日本の皇室の歴史と伝統を体現されているからです。

第1に、皇室は日本を征服したわけではなく、民族の内から起こって自然に地位を権力を得られました。

第2に、皇室と異民族との戦争はありませんでした。

第3に、皇室は政治、事業をしませんでした、ですから失政、失敗はありませんでした。

第4に、天皇には宗教的な任務と権威がありました。

第5に、皇室には文化上の地位がありました(『古事記及び日本書紀の研究』 p.23~9 津田左右吉 毎日ワンズ)。

「愛子天皇」実現のためには、皇室典範を改正より先に、憲法改正が必要です。

天皇は神聖にして犯すべからず」の大日本国憲法と「天皇は国民の象徴である」の日本国憲法を並べてみると、遥かに旧憲法の方が私たちが抱く、天皇と皇室のイメージに近いからです。