AIで余計者になる私たちをサム・アルトマンが救ってくれる。

THE TED TIMES 2024-17「AI」 4/26 編集長 大沢達男

 

AIで余計者になる私たちをサム・アルトマンが救ってくれる。

 

1、サム・アルトマン

オープンAIを設立し、チャットGPTを開発したサム・アルトマン(1985~)が、2023年11月に突然CEOを解任されそうになりました。

解任しようとしたのは、オープンAIの共同創業者であるイリア・サツキバーたちです。

なぜそんなことをしたのか。

オープンAIの中の、加速主義と破滅主義の対立がありました(「サム・アルトマンのヤバい革命思想」 橘玲 『文藝春秋』 2024.4)。

AIを加速的に進歩・発展させようとするサム・アルトマンたちと、AIが人類の脅威になると考えるイリア・サツキバーたちの対立です。

イリア・サツキバーなどの破滅主義者たちは、サム・アルトマンがいる限り、オープンAIはチャットGPTの進化を加速させる、そして取り返しがつかないことになると考えました。

イリア・サツキバーの師であるジェフリー・ヒントン(1947~。トロント大名誉教授)がAIの危険性を以下のように指摘しています。

1)ジェフリー・ヒントンはAI研究のゴッドファーザーと呼ばれ、深層学習の礎を築きながら、AIが人類の存続に危機をもたらすとグーグルを退社した人です。

2)AIに気候変動を止めるように指示すると、AIは人間を排除することが必要だと結論し、実行に移すリスクがある(「人知を超すAIは人を操る」日経3/10)。

3)10年以内に自律的に人間を殺すロボット兵器が登場する。しかしその規制は実際に戦場で使われて悲惨さを認識した後になる。

しかし、破滅主義者によるサム・アルトマンの解任は失敗に終わり、わずか5日後にCEOの復活します。

2、エヌビディア

AIへの期待感から米株価が毎週史上最高値を更新しています。

AIが巨額に利益をあげると期待できる・・・しかしその株価は異常で、現在の状況はAIバブルに近いものです。

まず、半導体大手の米エヌビディアの今の株価は今後4500年間、配当を出し続けなければ正当化できないようなものです(「AIの『夢物語』に要注意」 ラナ・フォルハー 日経3/29)。

つぎに、AIを動かすための投入コストが大幅に値上がりが予想されています。

さらに、著作権問題でのAIへの風あたりが強くなってきています。

EUはAI法(AIの包括的ルールを定める規則)を制定しようとしています。

データ解析や機械学習のために著作物を利用することは、研究目的だけに限定されるようになります(「EU、運用次第で革新阻害も」 マーチン・クレッチマー日経2/27)。

「(AI)法の運用を誤れば、AT関連のイノベーションEUの管轄から姿を消すだろう」というAI法への疑義もありますが、AI事業者は確実にコスト増に、直面します。

AIは17世紀のチューリップバブル再来かもしれない、とフィナンシャル・タイムのラナ・フォルハーはその文章を結んでいます。

3、余計者

AI事業者やAI開発者は、AIのあげた利益の恩恵に与れますが、無能は私たちはどうなるのでしょうか。

私たちがいまやっている仕事はすべてAIがやってくれます。私たちの仕事は、機械から指示されるだけの仕事になります。

シンギュラリティ(人間の知性を上回るAI )の時代がやってきます。私たちのような労働者は過剰になり、余計者になります。

余計者は人生の目的を見出せなくなりますが、余計者は貧民になりません。

加速主義のサム・アルトマンが、地球上全ての人間に暗号通貨でI(ベーシックインカム)を支給するシステムを考えてくれています(前掲 『文藝春秋』)。AIあげた巨額の利益は、私たちに無条件で再分配されます。