トランプ政権との付き合い方を、ジャーナリズムは提案できていない。

クリエーティブ・ビジネス塾1「元旦社説」(2017.1.1)塾長・大沢達男

トランプ批判はもう聞き飽きた。
トランプ政権との付き合い方を、提案できないジャーナリズムは、混迷している。

1、朝日新聞
日本でも世界でもポピュリズムが民主主義の危機をもたらしている。日本では憲法施行70年を迎える。「立憲主義」とは、公の権力を制限し、国民の自由や基本的人権を守る考え方で、民主主義の暴走への歯止めともなる。ところが自民党改憲草案で「天賦人権」を見直そうとしている。フランスではテロやイスラム教徒対策でも、少数者の権利に配慮されているが、世界では反移民、排外主義が吹き荒れている。立憲主義を沈めてはならない。
○冒頭で英国の保守主義者の「政治とは航海」を引用しているが、その意味を理解していない。理念で引っ張るリベラリズムの政治を言っているのではない。                  ニュース性 C     説得力C     提案力C

2、毎日新聞
歴史の大きな曲がり角にたっている。グローバルの資本の論理と民主主義の衝突だ。国家の「偉大なる復権」をあおり立てるポピュリズム政治家が台頭している。日本の生命線は、他国との平和的な結びつきである。そのためにはまず足元。まず赤字財政、増える社会保障費、人口対策、そして中間所得者層を細らせてはならない、民主主義の危機になる。米国と英国は、グローバル化の逆回転を始めた。手探りだが、日本は世界とのつながりを求めよう。
毎日新聞の歓迎すべき変身。偉そうな批判ではなく、何をすべきかの提案。抽象的でなく具体性もある。曲がり角はわからない、だから足元の主張もよくわかる。                 ニュース性B  説得力B 提案力B
 
3、読売新聞
反グローバリズムで内向き志向の世界だが、日米同盟を強化する必要がある。トランプはロシアと接近している。米欧間に亀裂が走る。米国の対中戦略は不透明。台湾、貿易、尖閣列島、そして在日米軍経費があるが、日米同盟強化が、東アジアの安定をもたらす。トランプ外交には注文を、プーチンとは信頼関係を築くべきである。反グローバリズムポピュリズムの背景には経済の停滞がある。しかし保護主義ではなく自由貿易こそ、成長を復活させる。
○要約が悪いのではない。長文の社説自体が、論理不明確。ナベツネさんが書いていない。ここ10年で最もでき悪い文章。元旦社説の読売崩壊。残念。     ニュース性 C 説得力 C 提案力 C

4、産経新聞
明治維新から来年で150年、再び国家の覚悟を決め、自ら針路を切り開きたい。まず憲法GHQに押しつけられて70年、憲法は放置されている。自己決定すべきだ。つぎに自由貿易の旗手として名乗り上げること。さらに天皇陛下と日本と日本人にとって失うことができないものをどう守るか。そして少子高齢化と人口減少でも勝ち残ることである。居酒屋のような日本のクールを世界に紹介したい。2020年東京五輪というチャンスが来る。活路を求めたい。
○これからの時代は産経。せっかくなのに、力が弱い。結末が居酒屋では、情けない。でも、ま、いいか。妙に国家主義的になるのはよくないか。                                        ニュース性B    説得力 B 提案力  B

5、日経新聞
混迷する世界で日本の果たす役割がある。まず自由主義の旗を掲げ続ける、つぎにデジタル社会への対応、そしてデジタルネーティブの若手人材を使うことである。安全保障では、米主導の安全保障網を再構築したい。経済では中間層が希望を失わない社会にしたい。世界では保護主義的な政策が広がりつつあるが、日本は国際協調の推進役であるべき。そして企業の社会的が不祥事はあってはならない。「売り手よし、買い手よし、世間よし」で行きたい。
○5回の連載社説。200字要約はムリ。自由主義の旗、米主導の安全保障、中間層を守れ、企業の社会的責任。しかし対米では、ノーアイディア。                                 ニュース性  B 説得力  B   提案力B