占領政策の原点には、『菊と刀』がある。

クリエーティブ・ビジネス塾2「占領政策」(2017.1.9)塾長・大沢達男

占領政策での米国の日本への偏見の原点には、『菊と刀』がある。

1、戦時情報局
米国はなぜ、東京大空襲や、広島、長崎への原爆投下のような、非人道的な皆殺し作戦を日本に対してしたのでしょうか。あるいは戦争中のの在米日本人を犯罪人のように、強制収容所に収容したのでしょうか。
第2次世界大戦の末期、1944年6月に米国戦時情報局は日本と日本人に対する本格的な研究を始めます。そして成果として、戦時情報局日本班のチーフのルース・ベネディクトの『菊と刀』(THE CHRYSANTHEMUM AND SWORD ルース・ベネディクト 長谷川松治訳 講談社学術文庫)が1946年に出版されます(日本版は1948年 文庫版は1951年)。そして『菊と刀』は米国人の日本理解の大きな柱になり、戦後の占領政策の基礎を支えるものになります。
菊と刀』は優れた日本研究の書とされていますが、とんでもない話です。米国は善、日本は悪。米国は正、日本は誤。米国は上、日本は下。米国は文明、日本は未開の主張で貫かれた偏見の書です。
2、『菊と刀
第1に『菊と刀』は、日本文芸を卑下しています。
「日本人は昔から常に、無邪気な楽しみ(中略)をすることで有名であった」(p.358)。無邪気な楽しみとは、桜の花や、月や、菊や、初雪を眺めたり、家の中に虫籠(むしかご)を吊るして虫の「歌」を聞いたり、和歌や、俳句を楽しんだり、庭いじりをしたり、生け花や、茶の湯に耽ったり、することである。
万葉集」、「古今」、「新古今」は、文学ではない、無邪気な楽しみ。そればかりではありません。夏目漱石も槍玉に挙げられています。小説『坊っちゃん』での坊っちゃん山嵐に対する態度を、「アメリカでは、不良少年の記録や、精神病患者の病歴簿の中に見受けられるだけ」(p.134)。文学として評価できない。
第2に『菊と刀』は、日本人を好色で無節操な未開人として見ています。
「恋愛や性的享楽に関する日本人の態度がわれわれに理解しがたい」(p.223)。「同性愛は、武士や僧侶のような、高位の人々の公然の楽しみであった」(p.229)。「自淫は日本人の全然罪悪を感じない享楽である」(p.230)。「日本人ほどこの目的のために用いるさまざまな道具を工夫した国民はほかにない」(p.229)。もう、こうなってくると、子どものケンカです。とても人類学者の言葉とは思えません。
第3に『菊と刀』は、日本を太平洋諸島の一地域として、見なそうとします。
まず天皇。「日本人が天皇について抱いている観念は、太平洋諸島においてときどき見いだされる観念と同じものである」(p.89)。天皇サモア島、トンガ島の神聖首長(Sacred Chief)と似ている指摘します。つぎに敬語。「日本人は多の多くの太平洋民族と同様に、『敬語』というものをもっている」(p.65)。そしてこのことが依然として日本が貴族主義的な社会であることを証明している、と説明します。
そして育児。「日本の、嬰児を四肢を拡げた姿勢で背中にくくりつける風習は、太平洋諸島その他の所で一般に行われている赤ん坊をショールで肩に掛けて持ち運ぶ風習と、多分に共通点をもっている」(p.314)。日本は太平洋民族と同じ文化圏に属している、と考えています。
3、占領政策
「吾等は、日本人を民族として奴隷化せんとし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに有らざるも(We did not intend that the Japanese shall be enslaved as a race or destroyed as a nation,)・・・後略」(ポツダム宣言・第10項。『日本国憲法の問題点』p.165 小室直樹 集英社)。
日本でも、奴隷化、絶滅をテーマに戦後の占領政策は実施されます。
第1は天皇天皇人間宣言をさせ、占領統治に利用します。終戦間近にあれほど熾烈を極めた日本軍の抵抗は、天皇のたった一度のラジオ放送でピタリと終わりました。天皇の力に驚いたのです。
第2は日本国憲法。占領軍は憲法教育基本法を作り与えました。憲法は復讐のための軍隊を奪いました。教育では日本人から愛国心を奪い、日本という国家民族を崩壊させます。
第3は、War Guilt Information Program(戦争に罪悪感を与える計画)です。東京裁判を行い、「太平洋」戦争史を教育し、戦前評価、天皇崇拝、占領批判に対する徹底した言論弾圧をしました。
なぜ東京大空襲を行い、広島・長崎に原爆を投下したか。答は明らかです。日本人の絶滅を狙ったものです。そしていま占領軍の日本人絶滅作戦は着々と成果をあげています。日本は人口減少で30世紀には世界から姿を消そうとしています。