「ヒットマン」を年間ベストワン候補のひとつに選びました。だめでしょうか。

THE TED TIMES 2024-41「ヒットマン」 10/15 編集長 大沢達男

 

ヒットマン」を年間ベストワン候補のひとつに選びました。だめでしょうか。

 

1、「ヒットマン

私の青春の映画体験のベストは、グレン・フォードの「暴力教室」でも、ジェームス・ディーンの「理由なき反抗」でも、バート・ランカスターの「OK牧場の決闘」でもありません。

「マーティン & ルイス」の「底抜け」の爆笑劇です。

やたら映画館で笑ったのを覚えています。私にとってアメリカ映画はお笑いでした。

芋づる式にあの頃を思い出します。

「大人の漫画」のクレージー・キャッツ植木等、「雲の上団五郎一座」のエノケンも面白かった、ホントに腹を抱えて笑いました。苦しかった。

映画「ヒットマン」を観て、あの頃のように笑い、映画を楽しみました。幸せでした。

グレン・パウエルが演じる主人公ゲイリーは、普段は大学で心理学と哲学と教えています。

一方で警察のおとり捜査官として殺し屋になり、依頼人から具体的な殺害依頼を聞き出したところで、逮捕するという仕事をしていました。

ですからゲイリーは依頼人に合わせて、全く異なるキャラクターに変身し、犯人を誘導します。

パウエルの演技の幅に広さが映画の見せ所になります。殺人の依頼でありながら、笑ってしまうわけです。

さらに面白いのは捜査本部では、ゲイリーと依頼者のやりとりを盗聴しています。

ゲイリーは違法スレスレの会話をします。本気か演技か。ハラハラドキドキ。

でもゲイリーのあまりものC調ぶりに、捜査本部も、映画を観ている観客も笑ってしまう、仕組みになっています。

映画のエインディングがいいです。

ネタバレのようになってしまいますが、ゲイリーと依頼人が純な恋におちてしまいます。

だまし合いのストーリーの中で唯一、私たちの純粋さがマッサージされるようで気持ちがいい。

思わず私は、今年度のベストワン・ムービーの一つだ、とつぶやいてしまいました。

 

2、日経

映画を観たのは日経のおかげです。映画評論家・春日太一の推薦です。

まず春日は2024年は「グレン・パウエルの年」だと言います。

トップガン・マーヴェリック」で注目を集め、今年日本で公開されるのは、「恋するプリテンダー」、「ツイスターズ」そして「ヒットマン」というわけです。

春日は、3本とも年間ベスト級、と評価します。

つぎにリチャード・リンクレイター監督の作品であることです。

アカデミー賞5回ノミネート、ゴールデン・グローブ賞2回受賞、英国アカデミー賞2回受賞、ベルリン国際映画祭銀熊賞2回受賞の輝かしい戦績を持つ監督です。

残念ながら、どの作品も観ていません。

まあ今回監督の名前を知っただけでも収穫としておきましょう。

 

3、グレン・パウエル

さてグレン・パウエルのような役者が日本にもいるでしょうか。

まずコロッケがいます。森進一、美空ひばりのモノマネは秀逸。コロッケなら、グレン・パウエルに負けない。

そしてもうひとり中村獅童を思い出しました。映画「首」(北野武監督)です。

中村獅童の演じた難波茂助には驚きました。だれもが、歌舞伎役者はここまで芸域が広いのかと驚いたはずです。

映画自体は、北野監督へのあまりもの期待が強すぎ、評価できなかっただけに、中村獅童の演技だけが印象に残りました。

中村獅童なら絶対グレン・パウエルに負けない。変な映画の感想になってしまいました。