「フレイル(Frailty)とは、何か?」

クリエーティブ・ビジネス塾29「フレイル」(2017.7.17)塾長・大沢達男

「フレイル(Frailty)とは、何か?」

1、フレイル
フレイル(Frailty=虚弱、衰弱)とは、加齢の伴って不可逆的に老い衰えた状態のことです。高齢者の問題を議論するとき、「虚弱」や「衰弱」では、あまりにネガティブ過ぎる。そこで2014年(平成26)に日本老人医学会は、加齢に伴う心身機能の著明な低下の「衰弱」にかわって、「フレイル(Frailty)」と呼ぶことを提案しました(『老いることの意味を問い直す フレイルに立ち向かう』 p.31 新田國夫監修 飯島勝矢 戸原玄 矢澤正人編著)。
後期高齢者(75歳以上)は、フレイルという中間段階を経て、要介護状態に陥ります。フレイルは要介護の手前の状態であり、がんばることによって可逆性をもって少しでも戻せる状態と位置づけられています。
フレイルには三つあります。
まずフィジカル・フレイル(physical frailty)。「身体の虚弱」、手足や体についている骨格筋、骨・関節の衰えです。つぎにメンタル・フレイル(mental frailty)。精神心理的要因を背景とする「こころ・心理の虚弱」です。そしてソーシャル・フレイル(social frailty)。社会的要因を含む多元的な「社会性の虚弱」です。
フレイルの最大の要因は「サルコペニア」です。Sarco(muscle=筋肉)+Penia(lack of=減少)の造語の医学用語で、加齢性筋肉減弱症です。1)低筋肉量(四肢の筋肉量)2)低筋力(握力)3)低身体能力(通常の歩行速度)の3つの要素で評価されます。
2、フレイルチェック
1)指輪っかテスト・・・利き足ではない方の素足でふくらはぎの一番太いところを、親指と人差し指で輪っかをつくって囲みます。ちょうど囲めたり、囲めなかったら○、指輪っかとふくらはぎの間に隙間があると×。
2)噛む力チェック・・・もみあげの下に、人差し指から小指までをつけて、奥歯をぐっと噛みしめる。頬に力こぶできれば○。出来なければ×。
3)立ち上がりテスト・・・椅子に腰掛け、両手を胸にあてて、片足を浮かした状態で立ち上がり、3秒間の停止。できれば○、できなければ×。
4)パタカテスト・・・「パパパパパ・・・・・・」「タタタタタ・・・・・・」「カカカカカ・・・・・・」。5秒間に30回以上言えれば○。できなければ×。
「フレイル」ともに覚えておかなければならないのが「ロコモ」。ロコモ=ロコモティブ症候群(locomotive syndrome)とは、運動器機能不全で、歩行困難で要介護状態になることです。
フレイルの早期発見と3つの柱の予防が、健康寿命を延伸を実現します。
1)しっかり噛んでしっかり食べる(栄養=食・口腔機能)、2)しっかり歩く(身体活動=運動)、3)しっかり社会性を高く保つ(社会参加=就労、余暇活動、ボランティア)。フレイル対策の三位一体です。
「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年6月)が閣議決定され、フレイル対策は国家プロジェクトのひとつになっています。フレイルを予防し、高齢者が多面的な活動ができる、環境づくり、まちづくりが課題です。いちばんの課題は、ソーシャル・フレイル。三位一体のフレイル予防は国民運動でしか実現しません。
3、未来の年表
少子高齢化社会の問題点は、高齢者が増えるが、若者は減ることです。ひとりの老人をたくさんの若者が支える騎馬戦型社会から、ひとりの老人をひとりの若者が支える肩車型社会へ、さらには複数の老人をひとりの若者が支えなければならない社会がやってくると予測されています。
国が高齢者を支えるには限界があります。そこで公助ではなく共助、さらには互助、自助の必要性が叫ばれ、地域包括ケアシステムが提唱されるようになり、コミュニティカフェなどの実験が始まっています。
しかし、どうしても納得できないことがあります。なぜ日本が少子高齢化社会になってしまったのか、誰も説明してくれず、少子高齢化社会を根本的に改革する提案をしてくれないことです。
『未来の年表』があります。それによれば30世紀の日本の人口は2000人と予測されています。私たちは祖国がなくなることを黙って見ているのでしょうか、日本民族が姿を消すことを望んでいるのでしょうか。
地域包括ケア、認知症・フェレイル対策の少子高齢化社会への対処療法ばかりで、日本が消える「ナショナル・フレイル=national frailty=国家の衰弱」を問題にする人がいません。
日本人を死地に送り込むハーメルンの笛吹きは、占領軍のマッカーサーだったのではないでしょうか。