いろいろな働き方があります。でもやっぱ、「サラリーマン」っていい、そう思いませんか。

TED TIMES 2021-28「働き方」 7/10 編集長 大沢達男

           

いろいろな働き方があります。でもやっぱ、「サラリーマン」っていい、そう思いませんか。

 

1、ジョブ型雇用

”I’d be happy work for you”。「あなたのもとで働きたい」、グッとくる言葉です。組織のため、会社のために働くことです。英語の基本です。自由の国・アメリカでは、「国家に期待するのではなく、国家にいかに貢献できるか、を問え」(ケネディ大統領)は、共感され不滅の原則になっています。

日本では「働く」は、ハタ(他人)をラク(楽)にする、という教えがあります。そして仕事をするとは、「自利利他」、自ら修行し努力し、他人のために役立つことです。

ところが、今流行の働き方改革で、ジョブワーク、ギグワーク、テレワーク、いろいろな働き方が、議論されています。

「ジョブ型雇用」とは、職務、勤務地、労働時間が限定された正社員の雇用形態です。対して従来の雇用形態は、「メンバーシップ型」です。メンバーシップ型とは、就職でなく就社、同じ釜の飯を食うこと、大部屋主義、まあ「サラリーマン」です。

もうすこし細かく規定すると、ジョブ型雇用とは、1)スキル、得意分野を活かす働き方です。逆に言うと仕事がなくなったら、配置転換できない、雇用を失う可能性があります。2)ダイバーシティ(多様性)に対応した働き方を選べます。子育て、育児を抱える人は時短勤務を、介護がある人は在宅勤務を選べます。外国人労働者も雇用の対象になります。3)ジョブ型はテレワークが多くなりますが、決して条件ではありません。さらに、働くものを追い込む成果主義ではあってはなりません。でもジョブ型で成果が上がらないなら、仕事そのものが成立しません。経営は危機に陥ります。ジョブ型=就職、メンバーシップ型=就社。日本の従来型無限定正社員システムは、義務的な移動・転勤、年齢・勤続年数に依存した賃金システム。ジョブ型は採用・異動が公募です(「『ジョブ型』の誤解を正す』鶴光太郎 慶大教授 日経5/7)。

2、ギグワーク、テレワーク/リモートワーク、エッセンシャルワーク

「ギグワーク」は本来、デジタルプラットフォームを使う単発の仕事ですが、ウーバーイーツ配達員の仕事などもギグワークと呼ばれるようになりました。

ウーバーイーツ配達人の面白い統計があります。1)6割が本職を持っている。しかもその6割はフルタイム雇用者である。2)働き始めた理由は、収入が足りない(48%)、趣味・運動(32%)、前職を失った(17%)。3)1週間の就労時間は、平均23.0時間(週)。フルタイム雇用者は16.8時間(週)。4)週により就労日数、時間は大きく変わる(「コロナ下の働き方改革 管理で健康確保難しく」 黒田祥子早大教授 日経6/8)。

問題は、長時間労働社会に戻ることを避けること、柔軟な働き方に合った健康確保の工夫をすることです。鍵は休憩時間の確保です(まあ、掛け声だけですが)。

コロナ下でも人との接触を避けられない仕事がありました。「エッセンシャルワーク(生活の安全にとって欠かせぬ仕事)」です。

エッセンシャルワーカーとは、リモートワークが成立しない看護師、介護職です。(「コロナ化の働き方改革 職種・業種ごとの特徴 考慮を」 筒井淳也立命館大教授 日経6/9)。ここではリモートワークをワークライフバランスの切り札にできません。

3、サラリーマン

サラリーマンは

気楽な家業と きたもんだ

二日酔いでも 寝ぼけていても

タイムレコーダー ガチャンと押せば

どうにか 格好がつくものさ(『ニッポン無責任時代』挿入歌「ドント節」(青島幸男作詞)

日本がまだ貧しかった、東京オリンピックの2年前の1962年、植木等の歌です。「無責任」が通用したのは、支え合い、助け合いがあったから、会社での新年会、お花見、運動会、忘年会があって、みんなみんな大家族だったからです。

ジョブ、ギグ、リモート、人が社会生活を営む意味が変わります。「部長!あなたのために、私、命をかけます」。「サラリーマン」のあの日に帰りたい。