私は、ギグワーカーなのか?ギグワーカーとは何か?

TED TIMES 2021-26「ギグワーカー」 6/28 編集長 大沢達男

           

私は、ギグワーカーなのか?ギグワーカーとは何か?

 

1、ギグワーカー

ギグ(Gig)とは音楽の演奏で、小さなライブハウスでの短いセッションをすることです。本来は単発、日雇いの仕事を意味する言葉でした。

それがデジタルプラットホームを利用して、単発の仕事をする人々を「ギグワーカー」と呼ぶようになりました。なんかかっこいいです。

実際にギグワーカーはかっこいい。働く場所、時間の制約を受けません。自律的で柔軟な働き方をできます。自由業に近いです。さらには、個人間の信頼と連帯のコミュニティの仕事で、サステイナブルで脱消費型の経済をつくります。新しい生き方です。

ギグワーカー(フリーランス)には、組織に従属せず柔軟に働ける創造的な存在の「騎士・英雄言説」と、社会保険や雇用の安定性などの恩恵を受けれない外部労働市場の弱者である「従僕言説」があります。

プラットフォーマー(デジタルプラットフォームの運営者)は、法的な最低賃金の制約なしに、報酬を決定でき、ギグワーカーは受け入れざるを得ません。またギグワーカーを保護する社会保険・労働保険などのセーフティネットが脆弱です。

ギグワーカーは新しい時代の創造的な存在なのか。それとも労働市場の弱者なのか(石山恒貴 法政大学教授 日経5.11)。

2、雇用と自営

ギグワークの存在を保護する法律は、労働法と独占禁止法の競合領域にあります(大内伸哉神戸大教授 日経5/12)。

自営的就労は自由な働き方で、報酬の低さ保障の少なさは自己責任ですが、労務提供過程で企業からの支配的要素があれば、労働法の適用で保護をすることもできます。

一方、個人事業主としても、独占禁止法上の優越的地位の濫用を禁止する規定により不公正な取引を排除することも可能で、保護することもできます。

ここで、大内教授は新たな問題提起をします。

ギクワーカーは、隙間時間を活用し収入を得る私的価値以外に、エッセンシャルサービス(社会的重要業務)を担う社会的価値を作っている、またプラットフォーマーも、エッセンシャルサービスを人々に提供する社会的価値を作っている。

この流れを活かす意味で、第1に企業に対し社会的責任と事業活動が両立できるようにバックアップする法制度を構築する、第2にデジタル変革のなかで人間と機械のあり方を根本から再構築する、ことが必要であると提案します。

3、フリーランス

大手広告代理店で20年、退社して20年以上フリラーンスで仕事をしてきた者の、経験を話します。

第1、収入。それほど悪くないギャラをもらっていましたが、今では一銭も残っていません。もちろん自己責任です。ドンと入ってきたらドンと使う。その日暮らしでした。楽しい思いをしましが、何も残りませんでした。バブルでした。組織いたほうが儲かったかもしれない。

第2、仕事。本来の仕事は、コピーライター、CMプランナーでしたが、ナレーター、撮影、編集、MA、映像制作のすべて、さらにはイベント企画、テーマパークの設計、都市計画、幅広い仕事をすることができました。いろいろエキサイティングでしたが、これという代表作を残せなかったの残念です。けどフリーはよかった。

第3、教師。専門学校で10年ほど、教師をしました。プレゼンテーションの名手でしたが、教師としては失格でした。フリーとしても組織人としても、人間として未熟でした。

第4、現在。マンションの管理組合を通じて様々な人々と交流があります。リーダーシップをとるわけではありませんが、それなりの発言もし、それなりのリスペクトも受けています。組織は向いています。

一概に、ギグワーカーがカッコいいとはいえません。組織でたくさんの人に囲まれ、そのなかで威張っていたほうが向いていたのかもしれません。

組織の中の個性と社会の中での個性。組織の一匹狼なのか、社会の一匹狼なのか、むずかしい。