「資本主義か社会主義か」ではない、中国には「産業社会」の新しい形があります。

TED TIMES 2021-27「中国」 7/1 編集長 大沢達男

           

「資本主義か社会主義か」ではない、中国には「産業社会」の新しい形があります。

 

1、ウイグル

中国共産党は、1921年7月第1回党大会を開き、結成されています。2021年7月は結党100年記念になります(日本共産党は1922年7月設立)。結党当時は57人、現在は9500万人の党員がいます。

共産主義とは、1)生産手段の私的所有を許さない。国家による計画経済、2)社会には運動法則がある科学的社会主義、3)科学的であるから反対派を許さない。一党独裁、の特徴があります。

現代の中国は、ウイグル、香港での自由、そして台湾での有事の危険、つまり反対派の存在を許さない問題を抱えています。

しかし常識は疑ってみるべきです。まずウイグル

1)ウイグルの分離独立を目指す在外組織「東トルキスタン・イスラム運動」は、国連からテロ組織に認定されている。彼らはイスラム国(IS)にも戦闘員を派遣し、テロリストは「帰ったら中国を血の海にする」と、明言している。こうした状況に中国は対応せざるを得ない。

2)アメリカは、ウイグル族の置かれた状況をジェノサイド(民族大虐殺)と認定しているが、一方で国務省法律顧問室は、「十分な証拠はない」と、判断している。

3)東南アジアにはミャンマーロヒンギャをはじめ人権弾圧を受けている少数民族が数多くあるが、アメリカがウイグルだけをターゲットにしているのは、政治的な意図がある。

以上は「徹底討論 習近平と『ウイグル大虐殺』」(阿古智子・東大教授 富坂聡・拓殖大学教授 文藝春秋2021.8)での、富坂教授の発言の要旨です。眼から鱗です。

つまり日本は、不正確な情報を元にした、安易な中国批判をすべきではない、アメリカの思惑に乗って、中国と正面から対決するべきではない、ということになります。

2、台湾

台湾問題も同じです。

1)トランプ前大統領は台湾で小さな紛争があっても構わないと考えていた。支持率アップ。台湾側も同じ。蔡英文政権は中国と緊張感の高まりを票田にしていた。為政者にとって台湾有事は”甘い蜜”。

2)アメリカは日本に中距離ミサイルの配置を求めている。中国に対抗する狙い。日本は台湾に慎重な対応を取る必要がある。

3)日本が台湾海峡に言及するなら、「一つの中国は堅持するが」の文言をセットにするべきである。「一つの中国」は絶対に外してはいけない。なぜなら「92年コンセンサス」があるから。台湾はちゃぶ台をひっくり返している。台湾はコロナでも世界に嘘をついている。安易に台湾サイドにつくことを戒めています。富坂教授は、私たちの常識を覆してくれます。

3、習近平

現在の習体制は、毛沢東時代の政治運営手法と小平時代の市場経済を、同時に推進しています。「社会主義市場経済」は共産主義ではありません。「産業社会」(ガルブレイス小室直樹)です。

たとえば、所得の再配分は可能か、権威主義の政治体制と私有財産に基づく資本主義経済の両立はできるのか、人権と領土問題の強硬姿勢で悪化する国際環境を乗り切れるのか(「支配の正当性 巧みに演出」 青山瑠妙早大教授 日経6/25)、などの難問も、プロレタリア独裁の問題ではなく、産業社会の問題として考えれば、答えは容易です。

次に、イノベーションの「花」を咲かせ、国民が経済成長の「果実」を受けられるか(「新常態、技術革新 成長の糧に」西村友作 対外経済貿易大学教授 日経6/29)。経済成長も「産業社会」におけるイノベーションの問題です。

脱炭素の論文数で中国は世界のトップを走っているように(日経6/11)、地球環境でも、IT、EV、DXでも、そして宇宙開発でも、中国は世界をリードします。

共産主義」はもはやお題目でしかありません。「資本主義か社会主義か」ではない、中国には「産業社会」の新しい発展の方向があります。