THE TED TIMES 2024-50「次の国づくり」 12/19 編集長 大沢達男
成田悠輔に、「不必要」とされた団塊世代は、その回答を迫られています。
1、成田悠輔
日経が「次の国づくり」というタイトルの連載を、11月2日から16日まで13回、掲載しました。
印象に残ったのは「世代間格差」です。
「国づくり」がテーマなのに、今の日本が抱えている一番の大きな問題は、「世代間格差」のようです。
情けない。
「世代間格差」の解決法は、連載には登場しませんでしたが成田悠輔(1985~)が言うところの、「高齢者集団自決」です。
なんとも不穏な解決法ですが、成田は以下の三つの方法を挙げています。
1)文字通りの切腹、2)尊厳死の合法化、延命治療への保険適用の制限、安楽死の解禁、3)世代交代(社会的な切腹、居座り続けない)。
以上の要約は、申し訳ありませんが、成田の「高齢者集団自決」に関する著作がないので、ウィキペディアからです。
『22世紀の民主主義』(成田悠輔 SB新書)には切腹や尊厳死の記述はありません。
日経の本題の戻ります。
「所得の半分近くを事実上の税金のように取られているのに、政治はそれをまるで自分たちのお金のように扱い、選挙でばらまきを約束する。(中略)もっと怒らなくちゃだめだ」(LINEヤフー会長 川辺健太郎 11/16 日経)。
「税や社会保険料の負担割合率を示す『国民負担率』を国民所得比でみると、2024年度は45.1パーセント」である、と川辺は証拠をあげて怒っています。
そして政治家が高齢者にいい顔のは「シルバーデモクラシー」だと断じています。
このままでは現役世代は生き生きと働けない。まあ言い方は柔らかいですが、「高齢者集団自決」と趣旨は同じです。
「社会保障は負担する能力に応じて払う『応能負担』の改革が必要だ。例えば医療保険の実効負担率は現役世代が19%なのに対し、高齢者は10%を切る。75歳以上の医療費は5割以上を税金でまかなっている」(一橋大学教 高久玲音 日経11/3)。
高久は<所得の高い人ほど長生きする、お金持ちの人に多くの税金が使われている>と、年寄りに喧嘩を売っています。
どうでしょうか。
成田悠輔は「若者は独立国をつくれ」とアジりますが、川辺も高久も同じ趣旨の意見とみて間違いなさそうです。
2、安野貴博
1)AI
次に印象に残ったのは安野貴博(1990~)です。
安野は2024年都知事選に出馬し、泡沫候補扱いされてきましたが、30代の立候補者として15万票以上を得票、史上最多の実績を持っています。
安野は、AIが日本に勝機をもたらすと見ています。
問題は法規制です。米国、中国にはすでに自動運転タクシーあるのに、日本はまだまだです。
19世紀の英国では、車の前を人が旗を持って歩くという「赤旗法」を作って、自動車産業の発展を妨げたという例を上げ、日本の法規制を笑っています。
さらに安野は台湾の「デジタル民主主義」を挙げ、オンラインで民意を汲み上げることは十分可能と提案します。
2)SMR(小型モジュール炉)
新浪剛史(経済同友会代表理事 サントリーHD社長)は時給1500円問題を取り上げ、低廉のエネルギーが賃金向上につながると論じ、次世代原子力発電「小型モジュール炉(SMR)」や核融合発電実験の必要性を論じています。
「政府が原発の新増設や建て替えの選択肢を否定してしまえば、技術者を養成できなくなる(中略)国際競争力はさらに落ちて賃金は上がらなくなる」(日経 11/8)と警告しています。
3)長時間労働
高橋祥子(ジーンクエスト取締役ファウンダー)は長時間労働を取り上げています。働きかた改革です。
残業は25%割増賃金だが、それを50%にしたらどうか。企業は新規雇用の道を選択する。いいですね。
つぎに高橋は長時間労働の是正が、少子化対策、女性活躍に有効だと主張します。長時間労働では勤務と子育ては両立しないからです。
3、安永竜夫
以上、いかがでしょうか。
「次の国づくり」というテーマの答えになっているでしょうか。なっていません。
「国づくり」に答えている論者が、一人だけいました。
シリーズ冒頭(日経 11/2)の、安永竜夫(日本貿易会会長 三井物産会長)です。
まず安永は「日本人は頭の中が鎖国していないいないだろうか」と問います。
つぎに、グローバルサウス(新興・途上国)と仲間になろうと提案します。
日本が持つ経験、技術、人材をグローバルサウスへ、グローパルサウスからは働き手を、というわけです。
そして、グローバル・スタンダードを身につけ、「ルックサウス」を呼びかけています。
頭の開国をして、大谷翔平や反田恭平(注:ピアニスト)のような、世界の経済人を出す必要があると結びます。
3、団塊の世代
成田悠輔はなぜ高齢者集団自決などということを言い始めたのでしょうか。
それは団塊の世代が、全く役に立たないからです。
団塊の世代には長上の美徳がありません。
団塊の世代は、日本の社会の歴史と伝統を、語れません。
団塊の世代の「自由、人権、民主主義」はアングロサクソンの借り物です。その歴史を語れば「白人帝国主義」と馬鹿にされるだけです。
国づくりとは、国体です。
国づくりとは、国柄を明確にし、少子化から脱出し、日本民族を繁栄させることです。
まず憲法改正です。改正できないのならば、民族教育と歴史教育の強化です。
日本国の歴史と伝統を世界に主張すること、それこそがグローバル・スタンダードです。
でなければ、グローバル・サウスは日本を相手にしません。