コンテンツ・ビジネス塾「アイフォン」(2007-27)7/11塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
○6/29。 全米でアイフォン発売。
ついに米アップルの「iPhone(アイフォン)」が米国で発売されました。アイフォンは、「スマートフォン」、「高機能携帯電話」、などと言われていますが、どの表現もその内容を正しく伝えていません。1)アイフォンは、いつでもどこでもだれでも情報を受発信できる、夢の「ユビキタス端末」です。2)トリプルプレイ(電話、ネット、映像)ができます。動画投稿サイト「ユーチューブ」にアクセスできます。発言し表現する「ネティズン(ネットワーク市民)メディア」です。3)もちろんアイポッドの機能を持っています。音楽、映像も自由自在です。いわば持ち歩ける”TSUTAYA"さん、「コンテンツコンビニ」です。4)ケータイ独特のテンキーは姿を消しました。3.5インチのタッチパネルです。ディスプレイの表面を”なぞり”、”押して”、操作するのです。スタイリッシュな「コンテンツブリーフケース」です。
アイフォンは、NGN(次世代ネットワーク)、Web2.0、ユビキタス社会などの未来を先取りしています。アップルCEOの海賊スティーブ・ジョブスは、1984年のマッキントッシュ、2001年のアイポッドに続き、この2007年のアイフォンで、太陽系の第3惑星を占領しようとしているのです。
○競合メーカーの闘い。
アイフォン登場に、競合各社はどう対抗しているのでしょうか。
まず、携帯電話メーカーの最大手ノキア(フィンランド)は、音楽、ビデオの再生機能を強化した「ノキア6267」を、2位のモトローラは、音楽再生機能つきの「モトロカーZ6」を、4位のソニー・エリクソンも音楽再生機能つきの「ウォークマン・フォン」を、それぞれ発表し市場に投入しています。ただ第3位のサムソン電子だけは、対抗製品の具体的な計画を発表していません(日経 6/29)。
アイフォンの競合は、携帯電話メーカーだけではありません。アイフォンの使用には、AT&Tとの携帯電話契約が必要です。利用者はAT&Tに料金を払います。しかしアップルは、AT&Tに対して利用料金の一部を、アップルに支払うように求めているのです。つまりインフラを持った携帯事業者が、携帯サービスの主役から追われてしまうのです(ビジネスアイ 7/1)。
アイフォン発売から数日で、もっと面白いこともわかってきました。アイフォンを早速、分解してみたのです。米市場調査会社・アイサプリの分解調査によれば、8ギガバイトモデル(599ドル=7万3000円)の製造原価は、263.83ドル。アップルは1台あたり、333ドルの利益を得ていることがわかったのです。コンポーネントは、ARM製プロセッサー、フラッシュメモリー、RAMなどで、サムソン電子のものの割合が多いのです(ビジネスアイ 7/1)。アップル=サムソンです。だから、世界第3位のサムソン電子はアイフォンへの対抗商品を発表していない、と推理することができます。
○アイフォン・フィーバー。
日本の新聞だけではわかりません。フィナンシャル・タイムズを見ていると、英国と米国でのアイフォン・フィーバーがものすごいものだ、ということが伝わってきます。それは発売2週間前ごろから見かけたアイフォン特集記事に始まり、発売日の米国の現地レポートで締めくくられました。
サンフランシスコとニューヨークのアップル旗艦店には、徹夜組、早起き組の行列ができました。
NYではその行列に、手回しよく、人気の「クリスピークリームのドーナツ」が配られた、というのですから、驚き、笑ってしまいます。
「(ネットで)2倍の値段で売ってやるさ。でもそれは最悪のシナリオだよ。たぶん、もっと儲かるさ」
「僕らは事務所に、行列に並ぶ交代要員を、たくさん待機させているんだ」
599ドルの8ギガモデル(ほかに499ドルの4ギガモデル、)はネットで1000ドル以上で売れるのです。行列の人々は、ゴールドラッシュさながら、転売狙いの一攫千金組が多かったのです。
フィナンシャル・タイムズ(6/30)の米国レポートは、ブルックリンからきてニューヨーク店に並んだグラフィックデザイナーのクールな言葉で結ばれていました。
「情熱ってばか騒ぎすることじゃありません、音楽でも仕事でも・・・。このアイフォンは、ぼくの長年の夢の実現なんですよ」
夢か悪夢か。アイフォンの日本上陸は、2008年です。