KYのJAPAN

コンテンツ・ビジネス塾「低炭素社会」(2008-12) 3/27塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、KY(空気読めない)JAPAN。
低炭素社会への取り組みで日本が世界で孤立し始めています。
第1に、京都議定書の生みの親である日本は、自ら議定書を捨て去ろうとしています。08~12年に日本は温室効果ガスを年間平均6%(90年比)削減する義務があるのですが、06年の速報値はなんと+6.4%。達成の可能性が疑わしくなってきています。
第2に、欧州では国が削減目標を掲げて低炭素社会へ舵を取ろうとしているのに、日本はセクター別アプローチの積み上げ方式を提唱し、削減を事業者の自主性にまかせています。たとえばトニー・ブレア前英首相は、削減目標を掲げるトップダウンの重要性を主張しています。革命を起こす必要があるのです(日経3/26)。
そして第3に、欧州では05年1月から始められている「排出量取引制度」の導入に、日本が積極的でないことをあげることができます。削減目標達成の道筋には排出量取引制度が不可欠です(佐和隆光立命館大学教授 日経3/17)。導入できない理由は産業界が反対しているからです。排出量取引制度は、米国でもオーストラリアでも導入が検討されています。
2、低炭素社会のキーワード。
1)温室効果ガス(Greenhouse Gas GHG)・・・地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより温室効果をもたらすガスの総称。水蒸気、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素などがある。
2)CO2排出量の測定
CO2排出量=Σ(各使用量×各単位発熱量×各CO2排出係数)
CO2削減実績の計算:実際に削減が行われた電源の平均係数を用いる。
3)排出量取引(Emission Trading ET)
国、企業ごとに温室効果ガスの排出枠を定め、プラスとマイナスを炭素クレジットで取引する。
4)クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism CDM )・・・先進国が開発途上国
技術・資金を援助し、その結果削減した排出量の一部を支援国の排出量に充当できる制度。大企
業による系列の中小企業に対する支援も同様に考え、国内CDMと言われる。
5)IPCC(気候変動に関する政府間パネルIntergovernmental Panel on Climate Change)
地球温暖化に関する世界中の数千人の専門家の科学的知見を集約する政府間機関。「人為起源の排出による温暖化ガスの大気中濃度の上昇が気候変動の原因であることはほぼ確実」と断言した報告書で、アル・ゴア元米副大統領とともにノーベル平和賞を受賞した。
3、なにをなすべきか。
上記のキーワードを見てわかるように、地球という巨大システムの話だけに低炭素社会への道はあいまいになりがちです。「どこにでも御用学者はいる」(石原慎太郎東京都知事 日経3/26)、『科学者は「間違ってはいけない」と気にするが、「間違いない」と分かったときには対策が間に合わない」(西沢潤一首都大学東京学長 同日経)。世界の潮流はブレア前英首相のように、「温暖化否定論」や「温暖化歓迎論」に出る幕を与えていません。
日本は現在孤立化していますが、低炭素社会のリーダーでもあります。第1は環境技術です。環境関連の特許の件数(3200件)は、米国の倍、欧州の3倍以上あります。次に石炭火力を電気に変える発電効率でも日本はトップです。そしてCDM(クリーン開発メカニズム)でも日本は世界の第3位につけています(「日本の実力」文芸春秋08.4)。日本はできるのに世界の潮流に乗れない、わがままな優等生になっているのです。ひとつの救いは、昨年5月に安倍晋三首相が50年までに世界の排出量を半減すべきだと宣言したことです。これは世界で高く評価されています。
さて私たちはなにをすべきでしょうか。「温暖化問題は哲学といえる」(前出 石原都知事)。ライフスタイルの問題です。小さな努力で子孫に奉仕するのです。学習でも仕事でも、学校でも会社でも、それぞれが低炭素社会のライフスタイルを身につけることが必要なのではないでしょうか。でないとあなたは、KYでND(人間としてどうよ)になってしまうのです。