コンテンツ・ビジネス塾「東京ディズニーランド」(2008-17) 4/30塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、誕生25周年、世界最強のTDL。
千葉県の浦安市にある東京ディズニーランド(TDL)が、4/15に誕生25周年を迎えました。
東京ディズニーシーを含めた2007年度の入場者数は、約2500万人。すべての日本人のうち4人に1人が去年TDLに行ったことになります。ちなみに2位のテーマパークである大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の入場者数は、TDLの1/3に過ぎません。さらにディズニーランドの本国である、ロスアンジェルスのディズニーランド、オーランドのディズニーワールドの入場者数も1300〜1500万人というのですから、TDLの1/2。TDLは世界最強です。
2、ディズニーランドを実現したビジュアライゼーション。
東京ディズニーランドは1983年、その28年前の1955年に米国のディズニーランドはオープンしています。もちろんディズニーランドを企画したのは、「白雪姫」、「ピノキオ」、「ファンタジア」のアニメをヒットさせていたウォルト・ディズニーです。しかし、アニメ制作で無敵のウォルトが書いたディズニーランドの企画書は、なかなかOKになりませんでした。ウォルトが語るディズニーランドのプレゼンテーションは、雲をつかむような話で、説得力がありませんでした。最後のチャレンジのために兄のロイ・ディズニーが、ニューヨークに向かうことになります。その土壇場で、ウォルトは一計を案じます。仲間のイラストレーター、ハーブ・ライマンに完成予想のイラストを描かせたのです。まだこの世に存在しないディズニーランドのビジュアライゼーション(視覚化)です。
ともかく時間がありません。月曜にプレゼンするイラストを土曜日の朝からつくり始めるのです。むりやりに机に座らされたイラストレーターのハーブ、そのとなりにみかん箱を縦にしてどっかと座り込むウォルト。夢を語り続けるウォルト。夢をかたちにし続けるハーブ。白い画用紙に、まるで撮影済みのフィルムが現像されるかのように、20世紀の夢がゆっくりとゆっくりとその姿を現わしてきます。緑豊かな土手に囲われた輪郭、入り口から続く古き良きメインストリート、広場から放射状に拡がる4つの王国、お伽の城のファンタジーランド、西部の街のフロンティアランド、海賊船のアドベンチャーランド、夢を語るトゥモロウランド。二人の戦いは、昼夜連続、まる二日続き、ウォルトの夢は、かたちになります。ディズニーランドが、だれが見ても魅力あるものとして、その姿を現わしたのです。1枚のイラストにより、プレゼンテーションは即決即断の説得力を持つようになり、ニューヨークのプレゼンテーションは成功します。出資にOKしたのは、テレビのABCネットワークでした(「ウォルト・ディズニー」ボブ・トマス 玉置悦子/能登路雅子訳 講談社)。こうして「あらゆる年齢の子どもたちのための地上でいちばん幸せな場所」が誕生したのです。
3、東京の失敗を繰り返すな。
東京ディズニーランドを経営しているのは、米国のディズニー社ではありません。日本のオリエンタルランド社です。オリエンタルランドとは何か。京成電鉄、三井不動産と千葉県の会社です。米国ディズニー社は、ディズニーランドを作るライセンスを与えるだけで一切の資金援助をしない、「厳しい条件」をオリエンタルランドに突きつけます。オリエンタルランドは建設費の1800億円を全額負担し、しかも売上げのうち入場料の10%、飲食物販の5%をディズニー社に支払わなければならないのです(「ディズニーランド物語」有馬哲夫 日経ビジネス文庫)。客は集まるのか、売上げは十分か、負債を返却できるのか。たくさんの難問をかかえて、TDLは83年の4/15にオープンします。
「厳しい条件」の予想はすべて裏切られます。入場者は1000万人、客ひとりあたりの売上げは予想の倍の8000円、しかもリピーターにも恵まれ、オリエンタルランドはたったの4年で黒字経営になってしまいます。ディズニー社は、黙っていて毎年、100億の金を手にしますが、ディズニーのブランド価値はそんなものではない。「厳しい条件」は「甘い条件」でしかなかったのです。
いまでは、「東京の失敗を繰り返すな」、がディズニー社では合い言葉になっています。飲食・物販の売上げは、入場料売上げを100億円以上も上回っています。しかもオリエンタルランドの交渉により、飲食・物販のロイヤリティーは敷地の半分にしか適用されていません。米国は世界最強のTDLで儲け損ないました。つまりみなさん、TDLのミッキーはお買い得なのです。