お誕生日おめでとう。グーグル。

コンテンツ・ビジネス塾「グーグル10周年」(2008-35) 9/24塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、夢の仕事場。
「一流シェフが腕を振るう食堂はすべて無料、社内にはビリヤード台などを設置した遊戯スペースがいくつもあり、自由に使えるジムやランドリーも完備。会社には自動車のオイル交換や『移動美容室』まで訪れる」(東洋経済 9/27)。このパラダイスは、米カリフォルニア州マウンテンビューにあるグーグル社内の風景です。9/7に、グーグルは、創業10周年を迎えました。設立者はスタンフォード大学の博士課程で知り合ったラリー・ペイジセルゲイ・ブリン(ともにまだ34才)。現在の従業員数は、全世界で19,000人、年商2兆円。史上最大のネット企業です。
1)仕事と遊びは対立概念ではない。グーグルの仕事は知的創造。
2)名刺には部署名がない。分散開放型の組織で仕事をする。
3)全社員が、就業時間の20%を自由研究に、使わなければならない。
以上が、グーグルスピリッツの中核にあるポリシーです。いろいろな会社で働いた経験をもっている、インターネットの父・ヴィントン・サーフ(グーグル副社長)が、証言します。「私はIBMなどさまざまな企業で働いてきたが、こんなオープンな会社は初めて」(前掲 東洋経済)。・・・こんな会社は初めて。なるほど。これこそが新しい会社像なのではないでしょうか。農業社会でも産業社会でもない、情報社会です。そして人間は、筋肉労働ではない、かといってかつてIBMが掲げた”Think"のような前頭葉中心の労働でもない、人類は「考え、感じ、愛す」仕事を始めるようになったのです。
2、広告のグーグル。
世界中の情報を整理して検索できるようにする、これがグーグルの夢でした。何十万ものコンピューターをつなぎ、100億のサイトを検索し評価し、瞬時に関連あるサイトをリストアップする「グーグル検索」。そして、世界中どこでも上空から見ることができる「グ−グル・アース」、地図のある地点を指せばそこの360度映像が見れる「ストリート・ビュー」、OSに代わる無料閲覧ソフト「グーグル・クローム」、企業用の有料ウェブ・アプリケーション「グーグル・アップス」。サービス・メニューはいろいろ誕生しました。しかし収入を支えているのは広告です。売上げの97%はアド・ワーズとアド・センスと呼ばれる広告によるものです。2年前に買収したユーチューブも同じです。ブランディングに有効な動画広告メディアとして期待されているのです。
注目すべきは広告効果測定でグーグルが動いていることです。それはネットと既存の4大メディアのテレビ、ラジオ、新聞、雑誌をリンクさせて広告効果を正確に測定することを狙っています。たとえば、ケーターイの会社がラジオで割引販売の広告を流す。ネットでさらに詳しい情報を得ようとグーグルを使う人がいる。ラジオでのCMのあとにケータイ会社の社名検索件数を調べれば、広告主の効果測定の材料になる。グーグルは広告市場に新しい価値を持ち込もうとしています。広告効果の測定、広告代金のオークション、費用対効果の明確化。グーグルは「電通」を脅かすようになるのです(前掲 東洋経済)。
3、グーグルの未来。
史上最大のネット企業にも弱点があります。まず、日本と中国と韓国で弱いことです。とくに最大のネット利用人口を抱える中国では、百度(バイドウ)が6割のシェアを占めています。
つぎはユーチューブの著作権の問題です。しかしこれはネットの力で改善されています。「ビデオID」です。著作権者がビデオ・音楽のデータをユーチューブに送れば該当のコンテンツを検出するのです。1分以下なら広告を掲載、2分以上は自動的に削除。著作権者が有利になるように、盗作を逆用し、プローモーションに役立てることもできます。
最後の問題は、政治権力とメディアの問題です。メディアの本質は、広告宣伝媒体です。そしてメデイアは権力者によって戦争遂行のために使われてきた、これもメディアの本質です。しかしこれは、グーグルだけの問題ではありません。私たちが見守らなければならない問題です。平和でパラダイスのような仕事場が、戦争工場になることもあるのです。