コンテンツ・ビジネス塾「H&M」(2008-34) 9/16塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、H&M。衝撃のオープン。
世界3位の衣料チェーン「H&M」(ヘネス・アンド・マウリッツ)の日本1号店が13日、東京・銀座にオープンしました。といっても、オープン前のお店を外から見ただけ、いつ行っても大行列、いまだお店の中に入れてもらえたことがありません。
完全に話題づくり、パブリシティの成功です。私が訪れたのは17日の午後5時、列は新橋駅側の高速道路したまで、並んでいました。ざっと、100mでしょうか。何人かの友人に聞きましたが、みな入店に失敗し、すごすごと退却してきていました。おそろしい人気です。
H&Mの商品特徴は、「おしゃれで安い」です。商品ラインは、限られた人へのハイファッション、気軽なカレントファッション(流行)、幅広い人々へのモダンベーシックの3つがあります(ビジネスアイ 9/5)。「売り切れ御免」、流行のものはすぐにお店から消えて行きます。「ファッションはフルーツのようなもの。常に新鮮でなくてはならない」、お店の商品の陳列はどんどん変わります。「ここに来れば、いつも新しい変化がある。常に新しいものに出会える店だ」、同じH&Mでも店には個性があります(日経ビジネス 9/15)。
「ヘネス・アンド・マウリッツ」のヘネスとはスエーデン語で、彼女のものという意味。こちらが1947年の創業当時からの名前で、マウリッツは、1968年に買収した狩猟用品店の名前の一部です。今回の銀座店に続き、11月に原宿店、09年の秋には渋谷店がオープンする予定になっています。
2、ファッション戦争。
H&Mの出店が、なぜこんなに話題になるか。ふたつの理由があります。
ひとつは銀座のファッション戦争です。銀座3丁目付近には、シャネル、ブルガリ、カルティエ、ルイヴィトン。4丁目近辺には、アルマーニ、グッチ、コーチ、エルメス。5丁目のユニクロ、7丁目のザラ、そして同じ7丁目にH&Mがオープンしたからです。
もうひとつは、世界のカジュアルファッション戦争です。世界の衣料品専門店のランキングは、第1位、ギャップ(米国)売上高1.7兆円、第2位、インディテックス=ザラ(スペイン)1.5兆円、第3位、H&M(スエーデン)1.3兆円となっています。日本での戦いは、ギャップ約130店、ザラ30店。そこに第3位のH&Mが参入してくるというわけです。
かつての青島都知事時代の世界都市博中止に反逆するかのように、銀座は世界都市・東京の中核に変貌しています。銀座でショッピングをエンジョイしているのは、中国人、韓国人をはじめとする外国人です。銀座になじみある方なら、交詢社(こうじゅんしゃ)ビルをご存知でしょう。福沢諭吉が提唱して結成された社交クラブのための空間。伝統のこのビルの1階には、現在おしゃれなレディのためのバーニーズニューヨークが入っています。銀座は変貌を遂げています。
世界で成功している衣料品専門店はいずれもSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel = 製造小売業)と呼ばれるものです。素材調達、企画、開発、製造、物流、販売、在庫管理、店舗企画。つまりファッションが誕生し、売れるまでの一生をひとつの会社がやるのです。SPAにより私たちは、品質、デザインを安い価格で買うことができるのです。日本では、ユニクロ、良品計画が、代表的なSPAです。
3、がんばれユニクロ。
現在ユニクロのファーストリティリングは、世界第7位で売上高0.5兆円です。柳井社長・会長は、2010年度までに売上高1兆円、つまり世界の第3位を視野に入れると宣言しています。ギャップ、ザラ、H&M、そしてユニクロの時代がそこまで来ています。
日本でのユニクロは、衣料品で一人勝ちといわれています(日経 8/25、ビジネスアイ8/22)。秋・冬は発熱・保温効果の肌着「ヒートテック」売れました。春・夏はブラジャーのカップ内蔵のキャミソール「ブラトップ」が売れました。さらにユニクロは不景気に強いといわれています。決戦は11月のH&M原宿店オープンです。柳井さん、ベーシックだけなく、「おしゃれで安い」を始め、H&Mと戦いませんか。なんとか、世界の3位に入って、メダルをとってください。応援します。