コンテンツ・ビジネス塾「レッドクリフ」(2008-44) 12/2塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、映画の新時代。
「スターウォーズ」や「ロードオブザリング」、アメリカ人やヨーロッパ人が作ったわけの分からないの映画を、分かったような顔をして見るのにはもうあきました。
「レッドクリフ(赤壁)」は、アジア人が中心になって作ったスペクタクル映画です。中国、日本、台湾、韓国などの共同制作。監督は香港出身のジョン・ウー、出演はトニー・レオン(香港)、金城武(台湾)、チャン・フォンイー(中国)、中村獅童(日本)など。原作は、中国の「三国志」です。
時代はいまから1800年前。漢字という言葉を生んだ「漢」の時代から「魏」「呉」「蜀」の「三国時代」に移っていく頃の話。中国支配を巡って展開される、曹操、劉備、孫権の3人の戦いの物語です。中国では過去最高の48億円の興行収入、日本でも2008年の洋画ナンバー1を独走中です。
映画の歴史は、1895年フランスのリュミエール兄弟のシネマトグラフから始まります。そしてその歴史もヨーロッパ、アメリカが中心です。つまり私たちは、慣れないワインでフランス料理を食べ、ビールでステーキを飲み込み、コーラでハンバーガーにパクつくように、西洋の映画を見てきました。「スシ」の日本映画、「ユッケ」の韓国映画も少々ありましたが、決してメインディッシュではありませんでした。まして映画の主役に中国がなることはありませんでした。映画誕生から100年を経て、ようやく私たちは、ハシを使って緑茶を飲みながら、映画の中国料理を楽しめるようになったのです。
2、連続する共感のシーン。
戦いの映画です。見所は、剣が振るわれ、弓矢が飛び交う、勇者たちのアクションです。その戦いの中で際立つ静寂のシーンがあります。それを紹介します。
1)勇気と友情
金城武が演ずる孔明(こうめい)が、トニー・レオンが演じる周瑜(しゅうゆ)を、曹操軍と戦う軍事同盟を結ぶために訪れるシーンがあります。二人は琴の合奏で会話をし、お互いの真意を確かめます。音楽のやり取りで周瑜と孔明に固い絆が生まれるのです。その結果、劉備と孫権は連合軍を組み、曹操と戦うようになります。ジーンとくる人間の絆です。
2)子馬と小喬
周瑜の妻・小喬(しょうきょう=リン・チーリン)が、馬の難産で困っているときに、孔明は産婆さんの役を買って出ます。孔明は知者です。自らの知識を総動員して無事に子馬を誕生させることに成功します。子馬と小喬のほほえましい2ショットが忘れられません。
3)絶世の美人
周瑜のトニー・レオンは戦闘で胸にケガをします。それを妻の小喬であるリン・チーリンが、手当をします。リンは、全裸のトニーのからだを、大きな包帯=さらしでぐるぐる巻きにします。ボクをちまきにして(食べる)つもりか。トニーはリンに抗議します。リンは台湾のスーパーモデル。女優の経験はありません。小喬は歴史上でも絶世の美人として伝えられる人ですが、リン・チーリンも麗人です。
3、「スター・ウォーズ」なんていらない。
中国には「4大奇書」と呼ばれる小説があります。そのトップが「レッドクリフ」の原作になった「武」の「三国志」です。つぎに「幻」、イマジネーション豊かな「西遊記」、さらに「侠」、108人の若者たちの反抗を描いた「水滸伝」、そして「淫」、露骨な色情描写の「金瓶梅」があります。世界映画のメニューに中国料理が加わる、これからの100年の映画の未来に、期待せずにいられません。
その物語は、中国料理のようにはおいしいだけでなく、からだにいいものばかりです。たとえば「レッドクリフ」からもたくさんの栄養を摂ることができます。優れた人材に礼を尽くして迎える「三顧の礼(さんこのれい)」、強い人間関係をあらわす「水魚の交わり(すいぎょのまじわり)」、傑出した人物のことをいう「白眉(はくび)」など、現代でも使うこれらの言葉はみな「三国志=レッドクリフ」出身です。血湧き肉踊るエンターテイメントでありながら、映画の意味は深いのです。スターウォーズのダースベイダーやR2D2を覚えて何か役に立ちましたか。ファンだった自分が悲しくなります。
今回の「レッドクリフ」はパート1。パート2は、2009年の春節(2月頃)に公開される予定です。