キャバクラで働くと相談されたら。

 コンテンツ・ビジネス塾「キャバクラ嬢」(2008-43) 11/25塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、キャバクラで働きたい若い女子。
「なりたい職業、してみたい仕事は?」。15~22歳の女子に聞いてみたら、「キャバクラ嬢、ホステス」が第9位に入りました(「女はなぜキャバクラ嬢になりたいのか?」三浦展 柳内圭雄 光文社新書)。
キャバクラとは何か。キャバレー並みの明朗会計で、クラブ並みの高級感あふれる店、キャバレー+クラブで、キャバクラです。男性が女性の接待を受けながらお酒を飲むところです。でもワンショット500円というわけにはいきません。1時間お店にいて、最低でも1万円は必要です。
ちょっと男性的な話になりますが、キャバクラは「おさわり」なしです。原則として女性の体にさわることは許されません。そのかわり、おなじみになればキャバクラ嬢と店外デートができる、期待があります。キャバクラ嬢の時給は最低でも2000円、ほかに客からの指名料があります。年収3000万円以上、東大医学部を辞めて、キャバクラ嬢になり新宿・歌舞伎町で店長として活躍しているサクセス・ストーリーもあります(「日本溶解論」三浦展 プレジデント社)。ちなみにキャバクラ嬢は第9位、美容師は第7位、デザイナーは11位。「なりたい職業」のトップは、歌手・ミュージシャンでした。
2、なぜキャバクラ嬢か。
1)すがりたい男子。
なぜ女子たちはキャバクラを目指すのか。高い収入です。では、なぜ高収入が欲しいのか。男子の収入をあてにできないからです。男子が女子の収入をあてにしているからです。たとえば、年収150万以上300万円未満で妻に300万円以上を求める男子が50%以上います。年収の低い男子が、自分より年収の高い女子を求めているのです。会社にすがれない男子は女子にすがろうとしています(「下流社会第2章 なぜ男は女に”負けた”のか」三浦展 光文社新書)。
2)ギャル系。
○OL・キレイ系(銀座)、○ノンノ系(青山)、○ストリート・ゆる系(池袋)、○ギャル、B、ガングロ系(渋谷)、○ゴスロリ系(原宿)。女子はファッション・タイプで5つに分類されます。キャバクラ嬢の主な予備軍は、ギャル、B、ガングロ系。結婚・男性依存願望も強く、その人生観は保守的です。
「貧しい家庭に育った、勉強好きでもない、大学にも行かない若い女子が、結婚せずに、自立し、一人暮らしができるくらいのお金を稼ぐにはキャバクラ嬢になるしかない」(前掲「下流社会第2章」P.49)。「女子」はキャバクラ嬢になることにより、過剰なファッションで「女」になり、多額のお金で経済的に自立できる「女性」になるのです。
3)自分探し。
すがりたい男子への忠告です。「自分探し」は、就職情報誌や派遣会社のキャンペーンです。「やりがい」、「好きを仕事にする」、「私らしい仕事」。転職をすすめるキャッチコピーがあふれています。では、あなたの「自分らしさ」とは何ですか。「マイペース」、「めんどくさがり」、「人のあとについていく」。そんな自分に、だれがお金を払ってくれるのでしょうか(前掲「下流社会第2章」P.128)。
3、役者の仕事、クールな仕事。
世界中がディズニーランドのようになっていく様子を分析した「ディズニー化する社会」(アラン・ブライマン 能登路雅子監訳 森岡洋二訳 明石出版)では、笑顔で演ずる仕事(パフォーマティブ労働)を、これから社会の特徴にあげています。従業員は舞台の主役、働くとは劇場の演技と同じです。また、ジャパン・クールの「Cool=かっこいい」、という言葉もあります。クールは、いままで私たちを支配してきた「勤勉、禁欲、努力」に変わって、新しい社会の倫理になるものです。それはだれもが反逆者、だれもが個性的、だれもが刺激と陶酔と快楽を求める、危ない価値観です。
キャバクラの客は、プログラマー、トレーダー、クリエーター、スパイ、ガイジン、オタク、ゲイ、エコロジストです。こんな客をケアするキャバクラ嬢に求められるのは、役者とクールの才能です。
結論。もし、友だちにキャバクラでバイトすると相談されたら。もし、わが娘がキャバクラ嬢として働くと言ったら。あなたは何と答えますか。
ひとつ言えます。キャストとしてクールに働く、その先に男性依存の結婚生活は、もはやありません。