テノリオンに触ってみましたか。

コンテンツ・ビジネス塾「テノリオン」(2009-07) 2/17塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、メディア芸術祭
第12回文化庁メディア芸術祭が、国立新美術館で開かれました(2/4~2/15)。英語では、「文化庁」がなく、「Japan Media Art Festival」と表記されています。メディア・アートとはなにか。主催者の意図はよくわかりませんが、メディアを軽く「ニュー」ととらえ、ニュー・アート・フェスティバルと考えてよさそうです。展示が、アート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの4つの部門に分かれていて、いわゆる、「クール・ジャパン(かっこいい日本)」の芸術祭のようだからです。
この芸術祭に変化があります。ひとつは、海外からの応募が増えていることです。もうひとつは、会場が乃木坂の国立新美術館に移り、国際的でメジャーな芸術祭になってきたことです。
アート部門の大賞は、マルシオ・アンブロージオの「Oups!」。スクリーンに映し出された自分とアニメーションが遊ぶ、おもしろおかしい映像装置です。エンターテイメント部門の大賞は、ヤマハの「TENORI?ON」(テノリオン)。LEDを使った新しい楽器です。ここの優秀賞にはニンテンドウの「Wii Fit」も入賞しています。アニメーション部門の大賞は、加藤久仁生の「つみきのいえ」(アカデミー賞受賞)。水没した家に潜り、家族との思い出にひたる、老人の物語です。そして、マンガ部門の大賞は、すでにヒットしている、一色まことの「ピアノの森」でした。
2、テノリオン
衝撃は、会場で実際に触ることができた、「TENORI-ON」です。テノリオンは、205×205×32mm、発売元はヤマハですが、お店にはありません。ネットからだけの販売で、¥121,000(税込)です。
ですからいままでテノリオンには、実物を見ることも、触ることもできませんでした。それが今回のメディア芸術祭では、実物が数台展示され、1分ほどの簡単なレクチャーを受けたあと、1人3分の限定で操作することが許されたのです。もちろんテノリオンの前には長蛇の列ができました。
1)テノリオンは、21世紀の「音楽インターフェイス」です。インターフェイスとは、人と音楽をつなぐものです。作曲マシーンで、演奏マシーンで、光で遊ぶエンターテイメントマシーンです。
2)テノリオンには、16×16個のLEDボタンがついています。縦の16個は楽器の数です。横はリズム、時間の流れです。たとえばドレミなら、左の立て1列からドのボタンを押しLEDを点灯させ、2列からレの音、3列のボタンを何も押さず、4列からミの音を選んであげればいいのです。それで作曲完成です。ループにすればテノリオンは、♪ドレ(ン)ミ・・・・・・♪ドレ(ン)ミ・・・・・・・を演奏し続けます。
3)テノリオンでは、音色、テンポなどを変えることができます。そしてレイヤー(階層)構造で、オーケストラのスコアのように、さまざまな楽器の演奏を重ねることができます。音はすべてLEDで表示されます。音楽が楽譜ではなく、LEDの点滅で時系列的に、見えるようになったのです。これからは、視覚的直感的に作曲できるようになるのです。
開発したのは、メディア・アーティストの岩井俊雄さんとヤマハの西堀佑さんです。
3、音楽の始まりと終わり
人類の作る音楽は、ビートルズの♪イエスタデイ♪のスーパーメロディで、終わりました(作曲家・小林亜星説)。なぜなら、音階の組み合わせがすべてやりつくされてしまい、新しいものを作ることが不可能になってしまったからです。
そして実際に歴史はそのように動きました。リズムだけを強調したダンスミュージック、リミックスやノイズの効果を使ったテクノやハウスミュージック、歌ではなくしゃべりや演説を取り入れたラップミュージック。音楽はメロディで勝負できなくなくなりました。
もうひとつ音楽の終わりを証明するものがありました。それは新楽器が登場しなかったことです。
クラシック音楽は、オルガン、ハープシコード、ピアノの鍵盤楽器によって作られ、ロックミュージックは、ギターによって作られた音楽です。1965年にムーグ・シンセサイザーが登場し、電子楽器時代が始まりますが、その本質はあくまでも鍵盤楽器でした。新しい楽器は発明されなかったのです。
テノリオンは、指でオセロゲームのようにLEDを光らせ、その図形でメロディを作り、そして音を聞く作曲マシーンです。間違いなく、新しい音楽の時代が始まります。