プレゼン力で決まる東京オリンピック。

コンテンツ・ビジネス塾「東京オリンピック」(2009-08) 2/24塾長・大沢達男
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1、決選投票は、10/2のコペンハーゲンIOC総会。
2016年夏季五輪パラリンピックの4立候補都市の計画が出そろいました。4都市とは、東京、シカゴ、マドリードリオデジャネイロです。まず、IOC評価委員会は、4都市からの立候補ファイルを精査し、現地調査を行い、評価報告書を作成します。さらに、立候補都市は、6/17、6/18にスイスのローザンヌIOC委員にプレゼンテーションする機会が与えられます。そして、10/2のIOC総会で、107人の投票で開催都市が決定します。
1)シカゴ・・・オバマ大統領の地元です。ブルーグリーン大会がコンセプト。二酸化炭素の排出量を減らし、水の使用量を減らす大会です。アメリカは、1904年セントルイス、1932年・1984ロスアンゼルス、1996年アトランタ、すでに4回もオリンピックを開催しています。
2)マドリード・・・市内に緑を広げるハッピーグリーン大会。1992年バルセロナを開催しています。
3)リオデジャネイロ・・・カーボンニュートラル大会。南米初の五輪を目指します。問題は、2014年にワールドカップを開催することです。
4)東京・・・最もコンパクトな大会。環境五輪、平和に貢献し世界を結ぶ五輪。半径8キロ以内に会場をほぼ集約。メーンスタジアムの屋根には太陽光発電パネル、大会関係車両は、ハイブリッド車・電気自動車。東京は、1964年に五輪を開催しています。52年ぶりの2度目の大会になります。
2、東京オリンピック1964
東京オリンピック1964は、高度成長、テレビ、新幹線のオリンピックでした。オリンピックにより日本は世界の先進国の仲間入りをします。時の首相は、「所得倍増計画」で有名な池田勇人でした。
つぎに、東京オリンピック1964は、テレビのオリンピックでした。テレビは、1960年の皇太子ご成婚で爆発的に普及し、64年には87.8%に達しています。そして1964年は新幹線開業の年です。
映画「東京オリンピック」は、名作と伝えらていますが、いま見るとそうとは思えません。監督は、はじめ黒澤明、つぎに今村昌平、土壇場になって市川崑監督が指名されています。市川監督はスポーツに興味がありませんでした。ですから競技が描けていません。体操や重量挙げで手や表情のアップにこだわるあまり、着地が決まったのか試技が成功したのかがわからない編集がされています。つぎに敗者と観客を好んで撮っています。グランドに倒れた人、競技を止めた人。そして、背伸びして競技を見る観客の足、美智子皇后(当時は皇太子妃殿下)、応援する沿道の農民、長嶋・王選手。つまり市川監督は、スポーツをネタにユーモラスな人間の真実に迫ろうとしています。さらに、結論とでも言うべき映画の最後のメッセージが子どもじみています。「聖火は太陽に帰った。人類は4年ごとに夢を見る。この創られた平和を夢で終わらせていいんだろうか」。オリンピックで世界は平和になる。そんなことをだれが信ずるのでしょうか。
なぜ、市川作品につらく当たるか。それはベルリン五輪を描いた、レニ・リーフェンシュタールの「民族の祭典」、「美の祭典」があるからです。レニは人間の「真善美」を描きました。対して市川は「真」を描こうとしただけです。負けています。
3、ネオ・トウキョウ・オリンピック2016
ロンドン・オリンピック2012のプレゼンテーションはお手本です。1)ロンドン東部の低所得者層の街を再開発する。2)アフリカ、アラブ系移民の生活に光をあてる。3)貧しい子どもたちにスポーツで活躍する夢を与える。このプレゼン・スピーチをしたのは、英国が世界に誇る、栄光の中距離ランナーセバスチャン・コーでした。IOC委員は涙を流し、ロンドンを選びました。
ネオ・トウキョウ・オリンピック2016のプレゼンターは室伏広治か、北島康介か。コンセプトは、経済成長ではなくグリーン(環境)、テレビではなくユビキタス、新幹線ではなくロボットとリニアです。ターゲットはアジア、アフリカ、南米です。「平和」という空疎が主張だけは止めて欲しい。それは19世紀のフランス貴族クーベルタン男爵の戯言(たわごと)でしかないからです。楽しく遊んで、いい買い物しよう。東京なら発展途上の国々に届くメッセージを、発することができるはずです。そして五輪決定の場合、ドキュメンタリーは世界の北野武監督に、お願いしようではありませんか。