エヴァンゲリオンが旋回を始めました。

コンテンツ・ビジネス塾「エヴァンゲリヲン」(2009-25) 7/24 塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながる
ヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』
劇場パンフレットには「ネタバレ注意」と書かれ、封印されていましたが、エヴァンゲリヲンはまったく新しい映画ではありません。テレビ放送開始は、1995年。今回の劇場版も3作予定されているうちの2作目。基本はリメイクです。しかも、全国のたくさんの映画館で上映されていない、インディーズ・単館系の作品です(今回は120館、38都道府県)。
なのに、エヴァンゲリヲンは、ヒットしています。
上映開始2週目にトップに立ち、公開3週目を前に興行収入20億円を達成しています(夏休みに入り、『ハリーポッター』と『ポケモン』にトップに座を明け渡す)。前回の『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』は、日曜夜の渋谷。30~40代男性中心の客がシーン!と映画を見ていました。今回の『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』は、平日午後の新宿。20代の男女の若者が映画が終わるや否や、せきを切ったようにザワザワと話し始めました。
なぜ、エヴァンゲリヲンは、ヒットするのでしょうか。
それはエヴァンゲリヲンが、『宇宙戦艦ヤマト』の流れをくむような、本当のアニメ映画だからです。前作の公開のときに庵野秀明監督は、「エヴァより新しいアニメはこの12年間なかった」と言い切りました。対人恐怖症のような少年の苦悩、人間関係が不得意科目の少年の問いかけに、時代は答えてなかった。エヴァンゲリヲンは大人社会への抗議をしている映画です。
2、少年と父
ネタバレしないように、少年と父の会話を紹介します(人物名を隠しました)。
○久しぶりに会う父と死んだ母の墓参をして
少年「父さんうれしかった。父さんと話せて」
○エイリアンとの戦いに勝利した少年に
父「よくやった。息子」。少年「初めてほめてくれた。父さんがぼくを認めてくれた」
○エイリアンへの攻撃をためらう少年に
父「お前が倒せ」「何をやっているんだ」。抵抗する少年「父は・・・ぼくの友だちを殺そうとした」
少年「ぼくを見捨てた父さん」「ぼくはもうエヴァに乗りたくありません」
父「息子よ。おとなになれ」「また逃げ出すのか」。少年「ぼくはもうだれとも笑いません」
○再びやる気を出した少年が父に頼む
少年「乗せてください。ぼくをエヴァに乗せてください」「ぼくはエヴァンゲリヲンパイロットです」
少年の母は、最初の墓参のシーンで分かるように、いません。しかも父は一度少年を見捨てた過去のいきさつがあります。しかし少年はどうにか父とコミュニケーションをとろうとします。けなげと言うほかはありません。父は妥協しません。少年のほうが父に気を使い歩み寄っていくのです。
3、なでしこ
エヴァンゲリヲンはオタクのアニメです。なんとなれば庵野秀明監督自身が、自殺志願、女嫌い、外泊常習のオタクだったからです。しかしここにきて事情は変わってきました。自分は総監督になり、監督は鶴巻和哉になりました。庵野は息子を卒業し、父になったのです。時の流れは、オタクもまた父にします。
そして今回の魅力は、「なでしこ」、女性陣です。
○少年の同僚の成績優秀な少女「他人といるのもいいな。誰かと話すのも気持ちいい」
○少年を愛する少女「キミといるとポカポカする。ポカポカして欲しいのキミに」
「(みんなとの)食事って楽しくない?料理って、作ると喜んでもらえる」
○そして少女を愛する少年「ぼくはどうなったっていい。キミだけはぜったい助ける」
ポジティブな台詞に驚きます。自分探し、少年の旅は、女性との出会いで変わります。
エヴァンゲリヲンは急旋回を始めました。
イザナミノミコト、北条政子前田利家の妻、乃木希典の妻静子。なでしこが日本を救うのです。