コンテンツ・ビジネス塾「手塚治虫」(2009-37) 10/20 塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、ATOM。
手塚治虫原作の伝説のマンガ『鉄腕アトム』が、外国製のCG映画『ATOM』になって、日本に帰ってきました。
手塚治虫(1928~1989)は、「マンガの神様」「世紀の巨人」と呼ばれ、昭和に活躍したマンガ家です。今年は手塚の没後80周年です。『鉄腕アトム』は、1951年にマンガになり、1963年に日本で初めてのテレビアニメとして登場しました。今回の『ATOM』は、香港に本社、東京に支社、ロスアンゼルスに制作部門があるアニメーション・スタジオ「イマジ・スタジオ」が作りました。監督はイギリス出身のデビッド・バワーズ、アニメ制作にはたくさんの中国人の名前があります。
1)話は空中都市メトロシティで始まります。テンマ博士は、事故で我が子を失い。息子の姿をしたロボット作り、お茶の水博士が開発した「ブルーコア」という強力なエネルギーを搭載します。2)ロボットは空中から地上に降り、アトムと名乗り、人間の子どもたちと友だちになります。ところが空中都市の悪の大統領が、地上との戦争兵器としてアトムを捕まえます。3)空中都市に戻ったアトムはテンマ博士と再会し、悪の大統領に反逆するようになります。4)アトムの前に新しい敵が現れます。悪の大統領が作った「ピースキーパー」です。戦いが始まります。
アトムの絵のイメージが原作と違いますが、映画が始まりしばらくすると気にならなくなります。吹き替えは上戸彩さん。これは絶妙です。3DCGの出来もいいです。手塚作品独特の深い感動はないものの、アトムの故郷・日本の私たちを裏切る映画ではありません。『ATOM』の真の感動は、英米中の才能が集まって、手塚治虫の『鉄腕アトム』をリメイクしたことにあります。
2、鉄腕アトム。
日本で放送されたテレビアニメ『鉄腕アトム』、全187作品のなかから、最初の10話を紹介します。
○アトム誕生。○不完全ロボットのフランケン。○人間とロボットの対立。○遺伝子操作のミス。○王の墓を守るスフィンクス。○目に見えないロボット。○地球人と宇宙人の橋渡しをするアトム。○独裁者ヒラー。○お母さんはロボット。○不時着した宇宙の星はダイヤの星、だった。
ハリウッドは、あきらかに『鉄腕アトム』を研究しています。ロボットの子の話『A.I.』。古代の宝探しをする『インディ−・ジョーンズ』。クリスタルの星の『スーパーマン』。遺伝子操作の『マイノリティ・リポート』。ちょっと思い出しただけでも、類似したテーマの映画をあげることができます。
手塚は、生涯に15万ページの原稿を描きました。これは1日10枚以上、40年間休まず書き続けて可能な数字です。『手塚治虫漫画全集』(講談社)は、全400巻、世界に類を見ないものです。未刊行作品を入れれば1000巻になると言われています。手塚は、45年間常にトップランナーでした。
マンガやアニメをクール・ジャパンと呼ばれる日本文化の代表にしたのは、手塚の功績によるものです。裏通りのオモチャ屋で売られていたマンガを、手塚は表通りの書店に持ち出し、マンガと言うジャンルを築き上げ、芸術にまで高めました(『ぜんぶ手塚治虫』朝日文庫)。
3、マンガ。
マンガの神様・手塚治虫はどのように誕生したのでしょう。その秘密に迫ります。
1)母・・・母は息子にマンガを読んで聞かせました。それも感情移入たっぷりの演技つきです。そして、息子が職業を医者かマンガ家かと、迷ったときに母は、マンガ家をすすめました。
2)マンガの勉強・・・小学5年で、君はいくらでもマンガを描いてよい、と先生に公認されています。そして、中学では美術の先生に、絶対にマンガをやめるなと、励まされます。
3)いじめられっ子・・・小・中と手塚少年はひどいいじめにあっています。そこでマンガを武器に戦います。いじめっ子すらも手塚マンガのファンにしました。手塚少年にはハングリーの精神があります。
手塚が生まれたのは歌劇の宝塚市です。手塚は母のピアノと歌と歌劇の空気をたっぷり吸って育ちます。勉強もしました。大阪大学医学部卒の医学博士です。簡単に手塚のを知るいい方法があります。彼が好きな、ヨハネス・ブラームスの交響曲第1番を聞くのです。手塚はそこにいます。