ノーベル賞の益川さんも、「3」の不思議に気づいています。

コンテンツ・ビジネス塾「『3』の不思議」(2009-45) 12/15塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、ノーベル物理学賞
日本経済新聞の11月の1ヶ月間、ノーベル物理学賞益川敏英さんが「私の履歴書」を書き、なぜ「小林・益川理論」が受賞できたのかを、わかりやすく解説しました。何を学べるかを考えます。
1)クォークは6種類
ものを小さく分割していくと、分子や原子になります。原子は原子核とその周りを回る電子からできています。電子は素粒子のひとつで、原子核は陽子と中性子からできています。そしてこの陽子や中性子を作っているのがクォークです。益川さんが研究を始めたころのクォークは3種類でした。小林・益川理論はこのクォークの数を、「3」世代6種類、と予言しました。
2)CP対称性の破れ
Cとは電荷(charge)、Pとは隅奇性(parity)。C変換とは粒子と反粒子を入れ替えること、P変換とは物理現象を鏡に映した状態にひっくり返すことです。CとPの変換を同時に行ったときに、物理の法則が不変であることを「CP対称である」といい、何か違いがあれば「CP対称性が破れている」といいます。物理学では、長い間CP対称性が成り立っていると信じられてきました。小林・益川理論は、クォーク6種類で、CP対称性の破れを予言しました。宇宙創世のときに物質と反物質の対称性の破れがあったために、ほんのわずかな物質が生き残った。それが私たちの世界です。
3)Bファクトリー
論文が発表されたのは1973年。それから30数年、世界中で何千億円もの金がつぎ込まれ、何百人何千人の科学者の力により、クォークがつぎつぎ発見されていきます。ハイライトは2001年に確認されたCP対称性の破れ。つくば市高エネルギー加速器研究機構KEK)のBファクトリーと米国スタンフォード加速器センターがほぼ同時に確認に成功しました。
Bファクトリーは、380億円建設費と数千万円(年間)の電力を使って、10兆分の1センチの素粒子の世界を覗き見る巨大な顕微鏡です。ここには、小林・益川理論を日本人の力で証明し、ノーベル賞を取らせる、汗と涙の熱い物語がありました(『小林・益川理論の証明』立花隆 朝日新聞出版)。
2、益川敏英
益川さんには奇人伝説がありますが、人柄は素粒子に比べればあきらかに分りやすく、学べます。
1)いちゃもんの益川・・・名大の学部学生時代には安保闘争に積極的に参加。博士課程では大学行政に参加、大学院入試改革を実現、さらに京大理学部では、職員組合の書記長を務めています。
2)坂田「教授」ではない坂田「さん」
恩師の坂田昌一先生は、研究室で教授・先生と呼ばせずにさんづけで呼ばせました。益川さんたちは恐ろしいほどたくさんの議論をしています。小林・益川理論の小林さんは、5年後輩でした。おかげで小林さんも古株のような顔で議論に加わり、世紀のコラボができるようになるのです。
3)芸術
学部学生時代は映画青年でした。それは映画館から表彰を受けるほどでした。東大・京大の助教授時代には、オーディオに熱中、10年間クラシック音楽を聞き続けます。そしていまの「趣味」は平和運動。「戦争はあと200年もすればなくなると思う」と語っています。
3、「3」の不思議。
今回の理論でだれもが分ることでありながら、なぜそうなのか物理学者が説明できないことがあります。それが「3」の不思議です。益川さんは風呂から出たときに、クォークの数を3世代6種類にすることをひらめき、翌日小林さんに話をしています。なぜ「3」世代なのか。それが解らないのです。
疑問は広がります。なぜ、私たちが住んでいるこの世界は3次元なのか。なぜ、3脚は安定するのか。なぜ、多角形は3角形に分解できるのか。なぜ、じゃんけんはグーチョキパーの3つでするのか(『「3」の発想』芳沢光雄 新潮選書)。「3」の不思議が人類によって説明されるのを待っています。
そこで女性のみなさんへの問題です。シルバー、イエロー、ピンクの3本のゴールドでできている「カルティエ」の3連リングは、リングの並びを変え何種類の付け方を楽しめるでしょうか。