コンテンツ・ビジネス塾「教養」(2010-5) 2/2塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、学生たちの苦しみ。
大学、短大、専門学校を高等教育といいますが、その進学率は76.2%、同年齢層の4人のうちの3人になっています(『データから見る日本の教育』2005年文部科学省編 、『大学の反省』猪木武徳 NTT出版 からの孫引き。)。40年前の1965年は17.1パーセント。かつて高等教育は限られた人のためのものでしたが、いまではだれでも、のものになっています。
そのだれもが受験勉強をしています。学生たちは多くの知識を目一杯詰め込んだまま、高等教育で何を学ぶのか、目標を失っています。先生たちも危機を感じています。
「私は『アンラーニング』(反学習=無知になる。学び直す)を重視しています。(大学入試の知識を)一度リセットしてもらうのです(中略)。アンラーニングしなければ、新しい知識を入れて先に進めない」( 『文芸春秋』2010.2「タフな学生育てます」松本紘京大総長)。
「入学式で、『タフな東大生になってもらいたい』と話しました」(前出同。 濱田純一東大総長)。
勉強するな。タフになれ。まるで大学は、格闘技系のジムのようです。
2、教育小国。
高等教育とは何か。そのまえに『大学の反省』が指摘した、日本の高等教育の問題点をあげます。
1)外人蔑視。
日本への留学生は98年の5万人から、08年の12万人に増えています(中国66%、韓国12%、台湾5.4%)。にもかかわらず日本は知の鎖国です。
「外国人教師は、勤続年数にかかわらず大学の最低位の臨時職員・・・」「外人は紳士どころか、人間でさえないのだ。外人は『もの』である。文部省は日本の恥だ」(『知の鎖国ー外国人を排除する日本の知識産業』イヴァン・ホール 毎日新聞社 前掲『大学の反省」からの孫引き)。
2)日本の管理職の学歴の低さ。
部課長クラスの管理職の大学院卒以上の比率。日本1.9%、米国60.9%、ドイツ11.0%。
米独ともに大学院卒の3~4割はMBA(経営学修士)取得者。日本は国家間の交渉で論争・説得ができない。国際機関に人材を提供できない。その結果として、日米の不協和音、貿易のアンバランスが生まれています(前出 P.66)。
3)政府の財政支出の少なさ。
事業仕分けで、科学技術・学術関連予算が削減や凍結されました。が、日本政府はもともと高等教育に金を出していません。高等教育への教育支出に占める公財政支出の割合では、OECD諸国の平均73.1%に対して、日本はワースト2の33.7%(最下位は韓国)。しかも高等教育の8割は私立なのに、国は私立を1割程度にしか補助していません(前出P.39)。
4)そもそも高等教育とは何を学ぶところなのでしょうか。『大学の反省』は、このことをメイン・テーマとして論じています。大学の社会的使命は、教育と研究、さらに教育には、専門教育と教養教育。そして現在の大学(高等教育)が抱える最大の問題は、「教養」教育にあるのです。
3、何を学ぶべきか。
教養とは、先生、先輩、友人に、理想や憧れを持つことです。「古典」と格闘することです(前出。猪木武徳)。人の痛みやいい部分を感じる能力や多くの引き出しを持つことです(前出。松本総長)。
ここではウェブ、映画、アニメ、CG、ファッションで働くクリエーターの教養について考えます。
1)ロゴス(論理)を鍛える。世界語の英語とビジネスの世界語MBAを学び、鎖国をやめる。精華大学(中国)や高麗大学(韓国)などでは、たくさんの授業が英語で行われています。
2)パトス(感性)を鍛える。短歌と歌詞の学習をする。万葉集、新古今から、中島みゆき、松任谷由実、槙原敬之、森山直太郎まで。さらにビートルズの詩を読み、歌を唱うのです。
3)エロス(本能)を鍛える。溝口健二、ヴィスコンティ、パゾリーニ。純愛、悲恋、同性愛、サド&マゾ、フェティシズムの映画を見て、エロス(生)&タナトス(死)の脳幹を鍛えます。
教養がない専門家はどうなるか。30代半ばで人生の危機に見舞われます(前出『大学の反省』)。