アバターから何を学びましたか。

コンテンツ・ビジネス塾「アバター」(2010-6) 2/9塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、史上最高のヒット作。
アバター」を見ましたか。米映画「アバター」(ジェームズ・キャメロン監督)は、同監督の「タイタニック」(1997年公開)の興行収入を抜き、史上最高のヒット作になりました。それもタイタニックが1年半かけて作った記録をわずか39日で塗り替えてしまいました(現在約1670億円。日経1/27)。
日本では音楽が11年連続マイナス成長、アニメが3年連続前年割れ(『情報メディア白書2010』電通総研 日経1/28)。深刻なエンターテイメント不況のなかで、なぜアバターだけがヒットしたのでしょうか。ネタバレに配慮しながら、そのわけを考えてみます。
物語の舞台は22世紀。人類はある鉱物資源を求めて、地球から4.37光年離れた、巨大衛星パンドラを訪れます。パンドラには、ナヴィと呼ばれる先住民がいます。ナヴィは身長3メートル、美しい自然の中に暮らしていました。映画は、人類がさまざまな近代兵器を使い、刀と弓矢だけの先住民を抹殺し、資源を奪い取る戦いを描いたものです。
アバターAvatar)は、もともとヒンドゥー教の神の化身という意味ですが、ここでは人間のDNAを持ったナヴィのクローン(複製人間)のことです。見てくれはナヴィですが、実在の人間の意思によって行動します。使命は人類と先住民ナヴィのパイプ役。しかし、人類の理不尽な攻撃の中でその立場と行動は微妙になり、アバターの苦悩の決断によりドラマは動いていきます。
2、ジェームズ・キャメロン
1)SFアドヴェンチャー
1954年生まれのキャメロン監督は、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」(1968年)を見てSFに熱中した10代の少年時代を送っています。その後結婚してトラック運転手などで生計を立てていましたが、「スターウォーズ」(1977年)を見て、仕事をやめ、映画の世界に入るようになります。キャメロン監督のヒット作は、「ターミネーター」、「エイリアン2」、「ターミネーター2」、「タイタニック」。ポップコーンを食べながら見るエンターテイメント、典型的なアメリカ映画です。
2)CG。
パンドラの植物、動物。実写とCGの合成による見知らぬ風景にはドキドキさせられます。傑作は、ナヴィです。ミリ以下の精度で再現されたモーションキャプチャーの動きは、ナヴィにしなやかな命をあたえています。さらにあまり大きな声で言えませんが、人類の飛行機、兵器、武器、ナイフも、「ミリタリーマニア」の監督らしく、スタイリッシュなもので(『アバター公式ガイドブック』イーストプレス)、破壊と殺戮が映画の魅力あるシーンになっています。そして驚くのは、キャメロン監督の日本アニメ作品への教養です。廃墟の地球を脱出する「宇宙戦艦ヤマト」、巨大ロボットを操縦する「エヴァンゲリオン」、神秘的な自然の「風の谷のナウシカ」。この映画は日本アニメのCG+実写版です。
3)3D。
アイマックス3Dは大迫力です(109シネマズ川崎)。前から5列めぐらいに陣取れば、視界に余計なものは何も入りません。そこは巨大惑星パンドラの世界です。しかし疑問です。アバターが引き金になり、3Dテレビが話題になっていますが、特殊なステレオと同じで、主流になるとは思えません。
3、母。
宮崎駿監督が、「少女」にこだわる監督だとすれば、キャメロン監督は「母」の監督です。キャメロン監督の母親はアマチュアの絵描きでした。「感性の」教育ママに育てられました。その影響を受けて表現の世界に入りました。
前作「タイタニック」は、現存の唯一の生存者である女性の証言から始まり、女にはいろいろな秘密があるのよ、というエロティックな発言で終わります。そして、この映画でも、アバターが恋に落ちるナヴィの母親が、ドラマのキーになります。
どうすれば、映画はヒットするか。女性を味方にすることです。それも母親を。しかし「母もの」ではありません。最新の「メカ」で、破壊と殺戮の「戦い」がある。それを「母の愛」で許してもらう。しかしご注意。これはアメリカ式エンターテイメント映画限定の公式です。