コンテンツ・ビジネス塾「サムソン」(2010-7) 2/16塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、躍進する韓国。
韓国が強いのは、スポーツ、映画、クラシック音楽だけではありません。「ものづくり」でも、世界のトップを自認していた日本は、韓国に完全に負けています。
(液晶テレビ)1位サムソン、2位ソニー、3位シャープ。(プラズマテレビ)1位パナソニック、2位LG、3位サムソン。(冷蔵庫)1位LG、2位サムソン、3位三洋。(洗濯機)1位LG、2位サムソン、3位パナソニック。(エアコン)1位LG、2位パナソニック、3位サムソン。(主要製品の世界シェアから。「日本企業はなぜサムソンに負け続けるか」吉川良三『文芸春秋』2010.2)。
韓国の優良企業の中で、とりわけ強烈なのは、サムソンです。サムソン・グループの営業利益は日本の大手電機メーカーすべての合計額をはるかに上回っています(前掲『文芸春秋』)。なぜ韓国は強いのか。日本に学んだからです。なぜ日本は弱いのか、韓国に学ばないからです。
2、サムソン。
サムソンはイ・ビョンチョル(1910~1987)によって設立された三星商会(1937)に始まります。現在のサムソン・グループの中核である、三星電子工業が設立されるのは1969年のことです。その後経営は息子のイ・ゴンヒが行うようになります。父も息子も、早稲田大学、日本で学んでいます。
1)人材第一。
創業者イ・ビョンチョルの経営理念は、「事業報国」、「人材第一」、「合理追求」です。「事業報国」とは、事業を通じて国家に尽くすことです。「人事第一」についてイ・ビョンチョルは、自分の仕事の90%以上は人事だと言い、できるだけ面接試験に立ち会い、研修所に顔を出しました。「合理追求」とは、スピードと集中です。工場を早く、大きく、集中して作り、マーケットのナンバーワンを目指しました(『世界最強企業サムソン恐るべし!』北岡俊明+「ディベート大学」こう書房)。
2)7・4制。
コンビニの7・11(セブンイレブン)とは、7時開店11時閉店の意味でした。いまでは24時間オープンがあたりまえですが、当時は常識破りの、異常な営業時間でした。同じようなことを二代目のイ・ゴンヒ社長はやりました。「7・4制」です。驚かないでください。7時出勤、4時退社です。この異常で常識破りの勤務時間をサムソンの20万人の社員が実行しました(1993~2002)。仕事を早く終えた社員は、英語とITを学習しました。外国語の資格取得者は2倍に、情報関連の資格取得者は、18倍に増えました(前掲書)。イ・ゴンヒによってサムソンは新しい会社に生まれ変わりました。
3)ベンチマーキング(優良企業と比較しその差を埋める経営手法)。
サムソンには基礎研究をともなった独自の新製品を生み出すプロセスがありません(前掲『日本企業はなぜサムソンに負け続けるのか』吉川良三)。先行メーカーの製品を分解して研究します。そしてサムソンは販売する国の要望にあった製品を作るのです。たとえば、インドは洗濯槽と脱水槽が分かれた古典的な洗濯機が売れています。新興国市場では、高機能の新製品はいらないのです。
3、22の成功習慣。
サムソンの入社試験は司法試験や外交官試験並みの難しさになっています。(日経2/15)。そのサムソン・スピリッツに触れることができる本が出版されています。翻訳は「あの」蓮池薫さんです。
『サムソンの22の成功習慣』(チョン・オクピョウ 蓮池薫訳 阪急コミュニケーションズ)からの要約。
1)どんな仕事だろうが、情熱だけで90%の問題は解決できる。
2)山を動かす仕事は小さな石ころを動かすことから始まる。
3)頭をあまり高く上げるな、すべての入り口は低いところにある。
4)客は論争相手ではない。だれも客との論争で勝った人間はいない。
5)客は人と同じもてなしを望まない。客が望むのは個別的なもてなしだ。
6)どんな場合も挨拶は少ないより、やりすぎるぐらいのほうがいい。
7)礼儀を知らない者たちは、最後にそっといなくなっていた。
2/5、イ・ビョンチョルの生誕100周年の式典がソウルで開かれ、生前の映像に人々が涙しました。