豊田章男社長がお手本です。トヨタに学びましょう。

コンテンツ・ビジネス塾「豊田章男」(2010-10) 3/19塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、トヨタ・バッシング。
トヨタ批判が米社会の問題になっています。トヨタの問題を、消費者の立場からではなく、企業経営のケーススタディとして何を学べるかを考えてみます。
「米国内の世論は明らかに過剰反応で、政治が絡んだバッシングとみるべきだ」(遠藤功 早稲田大学ビジネススクール教授 日経2/21)。
GMクライスラーが法的整理となり(中略)優等生であるトヨタのつまずきが必要以上に注目された」(ジェフリー・ライカー 米ミシガン大教授 日経2/18)。
以上は、1ヶ月の日経(2/15~3/15)の中に見つけたトヨタに同情的な少数意見です。
トヨタは、1)アクセルペダルにフロアマットが引っかかり事故を招く可能性があるとして、レクサス、カムリ、プリウスなど北米555万台、2)アクセルペダルの戻り方に問題があるとして、北米カローラなど、欧州カローラなど、中国RAV4など、450万台、3)ハイブリッド車の制御システムに不具合があるとして国内、北米、欧州で43万台を、自主改修・リコールの対象車としました。
前出の遠藤教授は、たしかに09年のリコール数ではトヨタがトップだが僅差でフォードが続いている、にもかかわらずフォードのリコールはまるで報道されていない、という事実を上げています。
しかしトヨタがそんなことを主張している場合ではありません。トヨタはドライバーの不安に対応しなければなりません。
2、豊田章男
2/24、豊田章男社長はリコール問題について証言するため米議会下院監視・政府改革委員会の公聴会に出席しました。
1)消費者への対応の遅れ。これまでは、日本の本社が海外市場でのリコールを決めていたが、地域ごとに独自に判断できるように仕組みを変える。2)CQOの新設。日米欧中、主要な市場ごとにCQO(チーフ・クオリティ・オフィサー)を置き、品質への責任体制を明確にする。3)電子制御とブレーキ。プリウスのソフト制御を修正する。「ブレーキ・オーバーライド・システム」(アクセルとブレーキを踏むとブレーキが優先する)を全モデルに搭載する。
豊田社長は英語でスピーチをし、質疑応答では通訳を介して、日本語で答えました。スピーチでは3つの主要な論点を、完璧なアイコンタクト、ボディランゲージで説明しました。豊田社長は、国際舞台で日本人として初めてと思われるような、有能なビジネスパースンを演じました。
下院議員は「公聴会は成果があった」との声明を出し、米ロスアンゼルスタイムズは「過ちを認めきちんと説明していた」と、評価しました(日経2/26)。豊田社長はその責任を立派に果たしました。
3、新たな戦い。
リコール問題の原因はわかっています。
1)アクセルペダルはデンソーの国内生産品に問題はなく、米社製部品がすり減ったときに起きています。2)プリウスのブレーキは、ABS(アンチロックブレーキシステム)制御プログラムの問題です(「ブレーキペダルをギュッと踏んだままABSが利いた。技術的には非常に素晴らしい。ところがユーザーは未知の体験にとまどった」入交昭一郎元本田技研副社長 文芸春秋4月号)。
リコールは成功者トヨタのおごりでも、市場競争に勝ったトヨタの気の緩みでもない、「現代技術固有の難問」があると、吉川弘之元東大学長は指摘します(日経3/16)。
電子化された自動車は自分でいじれない、エコカーでドライバーは地球環境に貢献する。製造者(メーカー)と使用者(ユーザー)は接近している。技術は工場を飛び出し、複雑な生活を相手にしなくてはならない。クルマがもたらす生活、文化、国家、環境への社会変動の情報を新たなクルマづくりに循環させていかなければならない。そのためには、メーカーはユーザーの生活にさらに接近し、「システム的な知識」を情報として獲得しなければならない。
吉川の物づくりの理論は難解ですが、トヨタバッシングで問題が解決しないことだけは明らかです。
困難に立ち向かう豊田章男社長とトヨタの技術者にエールを送ります。