マンダラアートのような企画書を作っていませんか。

コンテンツ・ビジネス塾「プレゼンテーション」(2010-30) 8/17塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、プレゼン未開発国
情報を詳細にちりばめた「マンダラアート」のようなスライドを否定されたり、発表をしているときの聞く人へのアイコンタクトや間の取り方を指摘されたりして、あたかも劇団に入ったかのようにプライドがずたずたになるまでトレーニングを受けたことがありますか。このことを、『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』(カーマイン・ガロ 井口耕二翻訳 外村仁解説 日経BP社)で、解説を書いている東大工学部卒の外村仁が自らの体験として明らかにしています。
日本はプレゼンテーション(プレゼン)の未開発国です。身内だけを相手にした、身勝手で、聞き手を無視したプレゼンがまかり通っています。それでも広告業界を先頭にしたビジネスの世界では、コンペ(競合)の競争原理で、改善されてきています。いちばんプレゼンが遅れているのは教育と学問の世界ではないでしょうか。だれでも大学の退屈な講義を思い出します。そして校長先生や小学校の先生のお話はどうだったでしょうか。それらは聞き手をリスペクトしたプレゼンになっていたでしょうか。学会のプレゼンも疑問です。上記の外村仁の指摘を借りるなら、「マンダラアート」、アイコンタクトなし、そして持ち時間オーバー、聞き手を考えない自己中心のプレゼンばかりです。
2、スティーブ・ジョブズ
快進撃を続けるアップルCEO『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』を要約します。
1)ストーリーをつくる。
○計画はアナログで。アイディアは、プレゼン・ソフトではなく、紙にペンで書く。
○ヘッドライン(キャッチコピー)は、ツイッターのように、70文字以内にまとめる。
○3点ルール。プレゼンは3シーン、製品は3つの機能、デモは3つの部分で構成する。
"Well , today we are introducing three revolutionary products of this class"
"An iPod , a phone , and an internet communicator. these are not three separate device." "This is one device , we are calling it iPhone." "Today Apple is going to reinvent the phone! " (マックワールド2007 ジョブズのプレゼンから)
2)体験を提供する。
○箇条書きはさける。つまり、パワーポイントのテンプレートを使わない。
バズワードbuzzword=専門用語)、ジャーゴン(jargon=専門用語)を使わない。
○数字を使いすぎない。聞き手にわかりやすいように。速度は2倍、価格は半分のように。
"Just one year after launching the iPhone , we're launching the new iPhone 3G. It's twice as fast at half the price."(2008iPhone 3G発売 ジョブズのプレゼンから)
3)仕上げと練習。
○聴衆の印象はボディランゲージ。アイコンタクト、姿勢、ジェスチャーの練習をする。
○1に練習、2に練習、3に練習。自分のプレゼンを録画してチェックする。
○台本を捨てる。アイコンタクトをする。プレゼンを自分自身が笑顔で楽しむ。
"クレージーな人たちに乾杯。はみ出し者、反逆者、厄介者、変わり者・・・(中略)我々はそこに天才の姿を見る。なぜなら、世界を変えられると信じるおかしな人こそ、本当に世界を変える人なのだから。Think different. Apple."(1997のアップルのCMから)
3、アップルの未来
アップルはマイクロソフトを抜き世界最大のIT企業になりました。挑戦者で革命家でかっこいいアップルの幸せの時代は終わります。企業や製品は大きくなりすぎれば、「ありふれたもの」になり、ブランド力を失います。人気が拡大するほどブランド力を失う、このパラッドクスをアップルCEOのスティーブ・ジョブズは乗り越えることができるのでしょうか(日経7/22)。
しかしジョブズは負けていません。年内に複数の新製品を出すと宣言しました(日経7/26)。「iPodタッチ」か、「アップルTV」か、「マック」か。ジョブズは、ドラマティックなプレゼンテーションで、まだまだ私たちを楽しませてくれそうです。