なぜ、私たちは外人いじめをするのだろうか。

コンテンツ・ビジネス塾「白鵬」(2010-36) 10/4塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、外人横綱
横綱白鵬が、大相撲秋場所で4場所連続全勝優勝を飾り、その連勝記録を62まで伸ばしています。すでに千代の富士の53連勝は突破しました。残るは、伝説の横綱双葉山の69連勝です。どうにか私たちが見ている前で、歴史的な新記録を達成して欲しいものです。
ところがここにきて不穏な動きが・・・。白鵬がモンゴル出身の外人であるために、相撲の不人気を白鵬の一人勝ちのせいにし、白鵬が早く負けることを願うような日本人が現れ始めています。とんでもない。しかし注意をしなければいけません。私たちは過去にも相撲で、野球で、ゴルフで、外人いじめをした経験があるからです。
10/3に断髪式を行った朝青龍の場合も基本はいじめではないでしょうか。まず、相撲巡業をケガで休みながらモンゴルでのサッカー大会出場騒動。本業の相撲を休み、リハビリのサッカーをして何が悪いのでしょうか。しかも祖国のため国王のための行動です。ほんとに失礼な話です。
つぎは泥酔暴行騒動。横綱として品格に欠けるとされ、自ら引退するようにしむけられましした。泥酔暴行は、刑事事件として訴追されたものではありません。法の裁きなくして仕事を奪われるなら、それはリンチ以外のなにものでもありません。
なぜ大方の意見に逆らい朝青龍の肩を持つか。日本の世論が過去にハワイ出身の小錦横綱にしなかった前歴を持っているからです。小錦は相撲とは何かを問われ「ケンカ」と答えました。この一件で、小錦は相撲がわかっていない、品格がないと判断され、後々までリンチを受けました。
2、双葉山
白鵬がまずお手本にしたのは、53連勝の千代の富士です。千代の富士は立ち合い電光石火、前褌(まえみつ=ふんどしの前の部分)を取り、曙や武蔵丸の巨漢力士を相手に勝利をあげてきました。それを見習いました。そして新大関で優勝します。しかし壁に突き当たりあります。相手に研究され前褌が取れないようになります。
そして69連勝の双葉山の研究を始めます。何を学んだのか。「双葉山さんの普段の所作だね。(取組前でも)いまから闘うという人間の顔じゃないんだよね」(「横綱白鵬すべてを語る」p.184 『文芸春秋』十月号)。双葉山には連勝記録更新中でも緊張感がまったく感じられないというのです。
やがて、「いい相撲」とは、「勝つ相撲を取らないこと」、の心境に到達します(前掲 p.182)。思い切って行かない、思い切っても受けない、固くならず流れで相撲を取ることを心がけるようになります。
1937年戦時下の日本、双葉山は70連勝に失敗。「我、いまだ木鶏(もっけい)たりえず」の名言を残します(前掲 p.184)。木鶏とは、木で作った鶏。強さを外に出さない、最強の闘鶏のたとえです。
3、日本人
白鵬は69人目の横綱として68人すべての先輩横綱を尊敬すると言います。そして優勝したにもかかわらず、天皇賜杯を受けられなかった7月の名古屋場所では、くやしさのあまり涙を流しましました。天皇陛下は、この涙にお応えになり、場所後にねぎらいのお言葉を、白鵬にお届けになります。 
「お相撲さんはちょん髷(まげ)つけているわけですよ。(中略)サムライであることを忘れちゃいけない」と国技の歴史を想い、「相撲がなくなれば、この国は終わる」(前掲 p.181)と憂国の激情を語る白鵬。彼は日本人が失ったものを持っている日本人です。
白鵬はさらに勝ち続けるのでしょうか。できます。まず負ける可能性のある朝青龍(13勝12敗)と琴光喜(23勝9敗)が引退していません。つぎに幕内上位に有望力士がいません。そして白鵬には歴代の横綱とは違う決め手があります。秋場所の13日目に巨漢・把瑠都(ばると)を上手投げで投げ飛ばし、裏返しにしました。この技は最強の上手投げを放つといわれた初代若乃花といえども不可能です。白鵬に水入りの大相撲は考えられません。日本人にはない決め手があります。朝青龍にも共通します。モンゴルの技術は大相撲に革命を起こしています。
私たちが強くなるためには何ができるか。白鵬いじめを画策するのではなく、私たち自身が白鵬とモンゴルに学ばなければなりません。