社説の貧困。新聞時代の終わり。

コンテンツ・ビジネス塾「元旦社説」(2011-1) 1/1塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、2011年元旦の新聞社説。国際戦略は何もなし、国内戦略は絶望的、夢は美しい自然と文化だけ。新聞時代の社説の終わりでしょうか。1)主張、2)提案力、3)夢の3点から採点しました。

○朝日:危機から脱する日本の命運は、税制と社会保障の一体改革と環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加の、二つの問題にかかっている。まず、現役世代の減少、引退世代の急増に会わせて社会保障を見直し、財政赤字を解消する。次に、自由貿易で豊かさへ向かう中国、アジアの国々をお得意さんとして捕まえたい。危機脱出の妙案はない。首相は公約を白紙に戻し、与野党は妥協と協調で課題を解決すべきである。
・脱イデオロギー朝日新聞の危機からの脱出。やっと現実的になった。しかし夢が見えない。BAB

○毎日:浮世絵を日本ブランドにしたのは、歌麿写楽を売り出した名プロデューサー蔦屋重三郎の力と、江戸の人々の教養の高さと社会の成熟、日本人の底力によるものである。日本を元気にするためには、政治の問題があるが、基本は私たちの底力である。たとえば、羽田空港の新国際線ターミナルが人気なのは、江戸などの日本の魅力を世界に発信したからだ。軍事力や経済力ではない、ソフトパワーで日本の再生は可能である。
・去年は、平城京万葉集、今年は浮世絵。毎日のコンテンツ主義。能天気すぎませんか。BBA
 
○読売:中国、ロシア、北朝鮮、異質な周辺国からの圧力、脅威に対抗するには強固な日米同盟しかない。そのためにも普天間問題を解決する必要がある。もうひとつ重要なのは環太平洋経済連携協定(TPP)である。早期の交渉参加が必要で、農業保護のために開国を遅らせてはならない。そして消費税率引き上げは不可避である。首相はマニフェストを撤回し、ばらまきをやめるべきだ。強力な政権のために、救国連立政権を提案する。
・具体的で現実的な提案は読売らしい。ただし社説長さは他社の倍、長くなりすぎている。AAB

○東京:既成の大国と新興国が戦っているアジアは、20世紀初頭の状況に似てきている。20世紀の主役だった日本は、ソ連、中国、米国と戦い平和をかき乱し世界の憎悪を浴びた。21世紀の主役は中国。中国が人権と自由を認めずに力の外交を強めるなら世界の反発を招く。日本は世界の潮流に背いた「先輩」として、中国に助言する必要がある。日本は今後とも、戦争放棄非核三原則、武器輸出三原則で、世界に貢献すべきである。
・最後の残った古いイデオロギー新聞。なぜ疑わないのかGHQによる洗脳と東京裁判史観。CCC

○産経:鶴岡八幡宮で倒れた樹齢1000年の大銀杏に学ぶ。なぜ倒れたか。幹の中心部は空洞化していた。しかし根からは新芽「ひこばえ」が出た。日本という巨木も空洞化している。空想的な憲法による「一国平和主義」を抜け出せないでいる。日本の芯は皇室、勤勉・礼節、そして創業100年を超える2万の企業だ。たとえば日本刀や戦艦大和を作った技術が原子炉に生かされている。占領の枯れ木を取り除き、新芽を育むことが必要だ。
・「保守」とは何か、を教えてくれる美しい文章。さすが産経。論旨明快。ロマンも夢もある。AAA

○日経:高齢化が本格化するこれから1~2年が、日本再生の最後のチャンスだ。まず指導層の意識改革。日本は大国ではない。競争力は27位でシンガポール、中国、韓国に及ばない。15歳の読解力は8位で、上海、韓国に負けている。また日本は貿易立国のはずだが輸出の割合は10%で、ドイツや韓国に遠く及ばない。つぎは政治家。痛み止めではなく外科手術を。そして企業経営者。保守的な経営で働き手の潜在力を殺していないか。
・シリーズ冒頭の社説。低成長、停滞、大国でない日本がよくわかる。今後への期待を含め。AAB