マッキントッシュをガブリと食べたい。

コンテンツ・ビジネス塾「TPP」(2011-11) 3/29塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、マッキントッシュ
マッキントッシュMacintosh)といえばマック、だれでもアップルのパソコンを想像します。なかにはオーディオ・マニアがいて、真空管のアンプ、マッキントッシュ(Mackintosh)を考える人もいるかもしれません。真空管のアンプとは渋い。さらにおしゃれな伊達男は英国製のアウター、マッキントッシュ(Mackintosh)のコートの写真をイメージするでしょう。
でもほんとうのマッキントッシュ(McIntosh))は、リンゴの種類の名前です。日本ではあまり見かけませんが、たとえばニューヨークの食料品店(grocery store)では、ごくあたりまえに並んでいます。ひとつ1ドル49セント、100円ちょっとのポピュラーなリンゴです。
ニューヨークであたりまえのマッキントッシュが日本では手に入りません。それはリンゴに17%の関税が掛けられるからです。今話題のTPPに日本が加盟すれば、モノ、ヒト、カネの流れが自由になり、関税がなくなります。甘くて酸っぱいマッキントッシュを100円で食べられるようになります。
2、TPP(Trance-Pacific Partnership=環太平洋経済連携協定
TPPは自由貿易推進を目指す国家・地域間交渉で、関税を撤廃しヒト・モノ・カネの流れを活発にするものです。2006年にシンガポールニュージーランド、チリ、ブルネイで結ばれたFTA(自由貿易協定)が発端です。ここに米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアの5カ国が加わり、2011年11月までに交渉妥結を狙っています。
菅直人首相は、2010年11月に日本もTPPに参加する意思表明をし、11年6月までに最終判断をするとしています。TPPは、「黒船来襲」、明治維新、第2次世界大戦での敗戦に次ぐ第3の開国、「平成の開国」だと位置づけられています。
○賛成。TPP参加で国内総生産は3~4兆円増える。自動車などの輸出産業の生産増、海外からの投資資金、優秀な人材が日本に集まる(川崎研一野村証券主席研究員1/25日経)。
○反対。穀物の輸入量は激増、米生産は壊滅状態になる(注:コメには778%の関税がかけられている)。食糧自給率は14%に下がる。ヒトの移動で、日本は失業者社会になる。日本人の賃金は約1/10の中国の労働者に限りなく近づく(森島賢元東京大学教授 『TPP反対の大義農文協)。
○賛成。このままでは韓国に負ける。韓国はチリ、シンガポール、インドとのFTAが発効。さらに米国、EU、ペルーとも署名、妥結。TPP参加で韓国、さらには中国との関係も変えることができる(『週刊東洋経済』3/12 2011)。
○反対。自由貿易の命題は支配的な帝国(=米国)にとって好都合な考え方である。(中略)市場原理が適用されれば、農村は事実上、消滅するという結果になりかねない(宇沢弘文 東京大学名誉教授 『TPP反対の大義農文協)。
3、日本人
音楽や映画など情報に国境がないように、やがてモノ・ヒト・カネも自由に世界で取引されるようになるでしょう。この流れを止めることはできません。
TPPの本当問題は、輸出が伸びるとか、牛丼が100円安くなるとかの問題ではなく、農村の消滅で日本の国柄が失われてしまうのではという恐れです。
美しい日本は、農業によって守れてきました。洪水や土壌崩壊の防止、水質浄化や気候緩和、生物生体系や日本の原風景の保全が計られてきました。そしてその風土こそが、東北関東大震災で、世界のメディア注目した、忍耐、寡黙、強い日本人を育ててきました。
「農業といっても平地と中山間地(ちゅうさんかんち=日本の耕地全体の40%)では違う。(中略)効率化が可能な平地では産業として育成し、中山間地は環境や景観保全といった側面で保護していけばよい」(木内博一 農事組合法人・和郷園代表 日経1/26)。そうしたときにTPPは農業にとっても輸出のチャンスになる可能性があります。
ニューヨークでコシヒカリの寿司を食べ、東北地方の里山の風景を見ながらマッキントッシュにかぶりつけるような日がやってくればいいのですが。