超人・堀江貴文にGood Luck!

コンテンツ・ビジネス塾「超人・堀江貴文」(2011-29) 7/11塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、収監
ホリエモンこと堀江貴文の懲役2年6ヶ月の刑が確定し、収監されました。堀江は、06年1月16日に東京地検特捜部に家宅捜索され、1月23日に証券取引法違反容疑で逮捕されました。あれから5年半、ドラマは終わりました。なぜ東京地検特捜部は捜査を開始したのか、容疑と犯罪とは何だったのか、異例に重い量刑の理由は何か、疑問はありますが、法治国家に住む私たちは、この結果を真摯に受け止めなければなりません。
しかし国家の裁きをあざ笑うかのように、堀江サイドに立った堀江本の出版ラッシュが続いています。なかでも『嫌われ者の流儀』(堀江貴文×茂木健一郎 小学館)は放っておけません。茂木は現在の日本で最も多くの本を出版しているひとりで、早大、慶大の教壇に立ち、NHKの人気番組『プロフェッショナル仕事の流儀』の司会進行を勤める、日本のオピニオンリーダーです。その茂木が堀江に全面的に共感をよせています。堀江の肩を持つ知識人は珍しくありませんが、問題は、二人の対談により日本の若い世代と古い世代の価値観の対立が、鮮明になってしまったことです。
「日本のベンチャービジネスの立ち上がりは10年以上停滞したと思うな。ホリエモンという生け贄を作って、国家権力が新しいものを潰す」(茂木健一郎 前掲書P.27)。
2、夢と消えたビジネス・アイディア
1)ホリエモンiPhone・・・2005年ライブドアはフジテレビの買収作戦に失敗します。しかし1000億円の軍資金を得ることになります。そこで堀江は、半独占的業務提携を結んでいた「Skypeテクノロジー社」のネット電話+メールメッセンジャーを統合したP2P(Peer to Peer)ソフト+携帯電話のハード技術+iPodのような携帯音楽プレーヤー+Wi-Fi=画期的な携帯情報端末、つまり堀江版iPhoneを構想します。そしてソニーと合併しライブドアブランドを捨て、堀江版iPhoneで世界を席巻、世界で一番のソニーを夢見ていました(『徹底抗戦』P.45~46 堀江貴文 集英社)。
2)ホリエモンCNN・・・堀江は阪神大震災のときから24時間ニュースチャンネルを構想していました。湾岸戦争のときのCNN、そして9.11以降のアルジャジーラ、堀江版CNNです。そのためにライブドアには30人体制の映像チームと報道チームが作られていました。地上波がだめならネットで流すのです(『嫌われ者の流儀』P.60)。
3)ホリエモン人工衛星・・・堀江は2004年末からロケット事業をスタートさせています。ゲームに使うための衛星、自治体のための気象衛星、さらには世界最小1人乗り有人宇宙船を打ち上げるのです。ロケットは燃焼実験を終えて、打ち上げ実験の段階にきています(前掲 P.164)。
4)ホリエモン理化学研究所・・・これは私塾。理想は戦前の理化学研究所。または研究機関と会社がいっしょになったようなグーグル。数百億円レベルの予算で面白い研究をやるのです。事実ライブドアには、研究専門の部署も作られていました(前掲 P235~236)。
3、超人
「一人の若い牧人(ぼくじん)がのたうちまわり、息をつまらせ、痙攣(けいれん)を起こし、顔をゆがめて苦しんでいるのを、わたしは見た。その口からは一匹の黒くて重たい蛇が垂れさがっていた」(『ツァラトゥストラはこう言った』下 P.23 ニーチェ 氷上英廣訳 岩波文庫)。ツァラトゥストラは命令します。蛇の頭を噛み切れと。そしてその言葉の通り牧人は、自らの咽(のど)の奥に噛みついている蛇の頭を噛み切り、遠くへ吐き出します。超人誕生の瞬間です。
茂木はニーチェの言葉を引用しながら、堀江を超人だと評しました(『嫌われ者の流儀』P.135)。この意味は大きい。ただの評論に留まりません。まずニーチェは、ツァラトゥストラに神の死を宣言させています。そしてツァラトゥストラに聖書を書き改めさせました。さらに神なきあとの世界を統べるものとして超人を登場させました。つまり堀江は神なき後の世界の支配者ということになります。
堀江は蛇の頭を噛み切ったのでしょうか。自らの咽に噛みついた古い権力を打破できるのでしょうか。2年後に刑期を終えて再登場する堀江貴文、そして堀江にエールを送った茂木健一郎、二人の超人に、GOOD LUCK!!