柳井正はジョブズに似たヒッピーです。

コンテンツ・ビジネス塾「柳井正2」(2011-37) 9/21塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、7時始業
ユニクロを運営するファーストリテイリング(FR)は9月から、営業時間を午前7時〜午後4時にしました。もちろんお店のことではありません。東京本部に勤務する社員約2000人が対象です。通勤に1時間出勤前の準備に1時間とすると、毎朝5時起床。これは大変なことです。かつて韓国のサムソンが、7時出社にして話題を呼び、世界のトップに仲間入りする急成長に成功しました。
7時出社の狙いは、1)仕事を終えた後に語学やビジネスの勉強をする、2)ファーストリテイリングは2012年春から社内での公用語を英語にする、3)そして2020年には売り上げ5兆円の世界のトップのアパレル製造小売り業になる。つまり会社が世界のトップになるために社員も世界のトップになるのです。本や新聞を読んで知識を広め、社員のみんなが、教養ある人間になるのです。
2、ヒッピー
FRの柳井正会長兼社長の経営のスタイルは世界最大の企業アップルのスティーブ・ジョブズに似ています。柳井正も60年代終わりから70年代に始めに青春を送ったヒッピー・ゼネレーションです。反権力、世界は一つ、そして自由。人間の可能性にかけ、新しい社会を作る夢を持っています。
1)made for all(あらゆる人のための服)
ユニクロが作っているのは、国境も人種も性別も年齢も階級もすべて超え、さまざまな人が手にとれる服です(『柳井正の希望を持とう』柳井正 P.51 朝日新書)。「ファースト」リテイリング(早い小売り)は、マクドナルドのハンバーガーの「ファースト」フード(早い食べ物)からきました。ファーストリテイリングとは、世界のどこでもいつでも誰でも着られる服です。
ユニクロに国境はありません。これから毎年200~300店のペースで海外で出店します。1500人のペースで新卒を採用します。しかもその80%は外国人です。
2)反ファッション(人間の活動を広げる服)
ユニクロの服はファストファッションとは全く違うものです。誰でも安く買える最新のファッションがファストファッションZARA、H&M、フォーエバー21です。彼らが売っているの流行という情報である。対してユニクロは流行や個性を主張する服ではなく、シンプルで汎用性があり高品質のもの。着る人が自由に組み合わせて楽しむ服です。その証拠にユニクロの品番はファストファッション各社に比べて1/10の以下です(前掲 P.82)。
3)反権力(自由に生きる人間)
柳井は、まず政治家との付き合いを嫌います。そして財界のパーティーにも出席しません。4時に仕事を終えればさっさと家に帰ってしまいます。
反権力は、社内の人間関係にも貫徹されています。「売れない店長」は、部下のことより本部に気に入れられたい、と思っているからだ(前掲P.105)。「良い上司」とは、オレを見るよりお客さまを見ろ、という上司だ(前掲P.153)。さらに、新卒の就職内定率が低いのは、学生が仕事をえり好みしているからだ(前掲P.128)。人間関係がいやで転職するというが、人間は一人ひとり考え方がや行動が違う、甘える!なと諭(さと)します。さらに、米国への留学する人間が、中国13万人、インド10.5万人、韓国7万人に対して、日本2.5万人という現実に、内向きすぎる若者と批判します。
3、反抗的人間
子ども頃の柳井は、「山川クン」と呼ばれる反抗的な人間でした。みんなが「山」と言えば、「川」と言い、みんなが「川」と言えば、一人で「山」と言って反対したのです。またユニクロの前身「小郡商事」を引き継いだときには、7人いた社員が1年で1人だけを残して辞めてしまった経験もしています。
柳井は、福祉、ボランティア、慈善行為、環境問題を人前で話すのを嫌います。しかし柳井は行動しています。1)ユニクロ障がい者雇用率は7.19%(法定は1.8%)。2)東北大震災では、3~4月に衣料品85万点を。さらに9月には防寒衣料を8万点寄贈を発表。3)そして柳井自身は3月に10億円寄贈しました。FRはボランティアでもトップです。ヒッピーのような反抗的人間、柳井は、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」(FRの経営理念)を実現しています。