コンテンツ・ビジネス塾「宇宙への夢」(2011-36) 9/14塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、ガガーリン
ユーリイ・ガガーリンを知っていますか。1961年に、人類史上始めて宇宙を飛行し、「地球は青かった」という言葉を残した、今のロシア、かつてのソ連の人です。世界中が熱狂しました。少年は、みな宇宙飛行士にあこがれました。数学ができて、運動神経バツグン、それが条件でした。鉄棒でぐるぐる回転しても、眼が回らないことが必要だといわれました。少年たちは、鉄棒に飛びつき、日が暮れるまで、練習しました。
当時は米国とソ連の2つの大国が対立していました。宇宙飛行で先を越された米国は、ケネディ大統領が、60年代に人間を月に送ると宣言しました。そしてその通り、69年にアポロ11号で2人の米国人宇宙飛行士が、月面の着陸に成功しました。
月面着陸はテレビで中継され、世界はまた熱狂しました。
1981年に、米国の有人宇宙船スペースシャトル「コロンビア号」が飛び立ちます。使い捨てではなく、何度も宇宙に行き帰ってくることができる、経済的な宇宙船の開発です。スペースシャトル計画は、その後30年間、今年の7月まで続きます。しかし大きく見て、失敗でした。2度の大事故で14人の宇宙飛行士の命が失われました。そして経済的なシャトル便ではなく高価で危険な宇宙船になってしまいました。少年たちの夢もしぼんでいきました。
2、日本の宇宙産業
日本の宇宙開発は、1955年糸川英夫のペンシルロケットによって始まり、1970年「おおすみ」の打ち上げに成功。ソ連、米国、フランスに次いで4番目に人工衛星を持つ国になります。
宇宙産業には、1)ロケットで衛星を打ち上げる産業(三菱重工、IHI、NEC、三菱電機)、2)放送・通信衛星による宇宙サービス産業(スカパーJSAT、NTTドコモ、NHK)、3)宇宙サービスを利用する民生機器産業(液晶テレビ、カーナビ、携帯電話)、4)宇宙サービスと民生機器を活用しているユーザー産業(農林水産業、新聞社、映画館)、以上の4つの分野、約8兆円の市場があります。
三菱電機の通信衛星が、シンガポールと台湾の企業の共同事業に採用されました。外国企業採用は、史上初の快挙です。そのほかにNECには、小惑星探査機「はやぶさ」があります。三菱重工には、成功率95%を誇るロケット「H2A、H2B」があります。そしてIHIエアロスペースには、低価格の小型ロケットがあります。さらに日本には、国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送に活躍する無人宇宙輸送機「HTV(こうのとり)」があります。現在は任務終了後の大気圏突入時に燃やされていますが、これを帰還可能にし、4人乗りの有人宇宙船に発展させる計画があります。しかし、人工衛星の世界シェアはわずかに1%、日本の進撃はこれからです(日経ビジネス8/29)。
3、空が恋しい
「宇宙戦艦ヤマト」、「機動戦士ガンダム」で、少年たちはすでに何度も宇宙で活躍してきました。そして第145回直木賞は「下町ロケット」(池井戸潤 小学館)を選びました。下町の中小企業の技術がロケット打ち上げのキーテクノロジーになる。少年の心を持った大人の汗と涙の感動の物語です。
「お前ら、夢あるか」と、主人公の中小企業の社長は社員に問いかけます。「オレにはある。自分が作ったエンジンで、ロケットを飛ばすことだ」(前掲P.219より)。ロケットはいいです。何といってもあの打ち上げがいい。ロケットが打ち上げられる。すると、なぜか涙がこぼれ落ち、感動します。
「国全体に閉塞感が蔓延している。状況を打破するうえで大切なのは、国が夢を持つことだ。企業も同じ・・・」日本のロケット打ち上げのトップランナー三菱重工の大宮英明社長はこう語りました(日経ビジネス8/29)。そして日本の宇宙産業は十分に世界で戦えると結びました。
空が恋しいのは、むかし私たちが鳥だったからだと、ある詩人は歌いました。でも違います。それは私たちのDNAが、はるか宇宙から飛来してきて、この地球にたどり着いたからです。だから私たちは空にあこがれます。ロケットが飛ぶとき涙がこぼれ落ちます。いつの日か、ふるさとの宇宙の仲間たちに会うために、私たちは空に帰っていきます。宇宙産業で、少年の夢はよみがえり。宇宙産業で、日本は復活します。