小篠綾子はクリーエーターのお手本。『カーネーション』を見よう。

ビジネス塾「2カーネーション」(2012.1.10)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事からホットな話題をとりあげました。2)新しい仕事のアイディが生まれます。3)就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、テレビ小説
 はじめて洋服を着た女性が、最愛の男性と何年ぶりかの再会をします。はじめてパーマをかけた女性が外に出たとき、街は騒然となります。
 ファッションデザイナー小篠綾子(コシノアヤコ)をモデルにしたNHKのテレビ小説『カーネーション』は、女性がおしゃれをする喜びにあふれたドラマです。そしてすべてのクリエーターを励ますドラマです。既成の価値観や風習と戦うにはどれだけの根性がいるかを教えてくれます。
 主人公は洋服ではない呉服屋の娘として生まれます。呉服屋の娘が洋服を作るようになるのはあたりまえのように見えますが、主人公の父はとんでもない頑固者。着物づくりに命をかけていた当時のクリエーターでした。娘がミシンを買う、洋服を作るなんてことを許す父親ではありませんでした。
リエーターとクリエーターの対決です。親子の縁を切るかもしれない。ふたりは殺し合うかもしれない。それほどの激しい戦いがあります。
 しかしこの戦いのおかげで主人公の表現に対する根性は鍛えられました。クリエイティブの本質がわかります。創るとは壊すことです。いままであったものを否定し、先輩たちに反対し新しいことをはじめることです。
2、挑戦
1)デパートの制服・・・当時の百貨店(デパート)の制服は和服でした。
東京で事件が起こります。百貨店の火事で、和服のために逃げ遅れた、たくさんの店員が犠牲になります(1932年の白木屋火災。女性は下着=ズロースを着けていなかった)。
主人公は大阪・心斎橋の百貨店に、和服に変え洋服の制服のデザインを提案します。
ファッションデザイナーとしてなんの実績もない主人公の売り込みです。もちろん門前払いをくらいます。そこからが違います。
 なにがいけないのか。どこがだめなのか。どんなものが欲しいのか。食い下がります。服づくりのコンセプト(狙い)を探ろうとします。そして主人公はデザイン画ではなく、実物を作り、自らが着てプレゼンテーションをし、受注に成功します。
2)ミシン・・・主人公はミシンを見て驚き、父に内緒で、呉服屋のライバルのような男性服の洋裁店でミシンを習います。ミシンの購入に成功します。洋服づくりが始まります。
 しかし虎の子のミシンはたちまち没収の危機にさらされます。 戦争です。ミシンの鉄は、軍艦や大砲のための材料として供出しなければならくなります。近所の大日本婦人会の女たちが国家権力をかさに供出を強要します。主人公は断固として断ります。
 うまい言い逃れを見つけます。軍人のための衣服を縫うのです。危機を免れます。
3)戦後・・・ 戦争は終わります。主人公は言います。これからは洋服とパーマ。おしゃれの時代だ。
 近所の友だちにパーマ機の購入をすすめます。ふたりで東京に残っていたパーマ機を買いにいきます。女たちは競い合ってパーマをかけます。もちろん主人公もかけてもらいます。
 パーマ姿の誇らしげな女たちの顔。戦争は終わった。新しい時代がきたのです。
 洋服づくりのために新しい生地が届きます。ブルー地に白い大きな水玉模様があります。
 はじめてその水玉模様のワンピースを着た女性が、戦地から生還したボロボロの軍服を着た男性を出迎え抱かれ、長く抱擁されます。おしゃれの時代がきたのです。
3、コシノ3姉妹
 ドラマの主人公のモデル小篠綾子(1913~2006)はもうこの世にいません。綾子は3人の娘を生みました。それが現在の日本を代表するファッションデザイナー、コシノヒロココシノジュンココシノミチコの3人です。偉大な母なくしては、3人のデザイナーの誕生もまたありませんでした。
 ファッションデザイナーとは、前の世代との戦いです。断れてもあきらめない根性です。そして新しい時代を創る歓びです。
カーネーション』は、クリエーターを励ますドラマです。部屋にカーネーションを飾りましょう。