原発はイヤ、でも原発反対派がもっとイヤ。

クリエーティブ・ビジネス塾28「原発はいらないか」(2012.7.25)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、再生エネはいつ実現するのか?
政府は日本のエネルギー政策について、国民的議論を呼びかけています。問題は原発の比率です。原発事故前2010年の電源構成に占める原発比率の実績は26%、これを2030年までに、a)0%、b)15%、c)20~25%に下げる3案です。
植田京都大学教授(「エネルギー戦略迫られる大転換 中」日経7/11)は、問題はベストミックスの数合わせではない、電力エネルギーシステムの再設計であると主張します。
1)地域分散型・・・原発、火力は大規模、集中型であった。対して再生エネ(地熱、風力、太陽光、バイオマス)は地域バラバラ、地域特性を生かしたものになる。
2)日本のグリーンイノベーション・・・再生エネには出力の変動性に弱点がある。情報・通信・制御のIT技術がグリーンイノベーションの中核技術になる。
3)ネガワット(節電所)・・・・節電を新たなシステムとして定着させために、節電を買い取るネガワット市場を発展させる(注:ネガはマイナス。節電は発電になるとの意味)。
結論。再生エネ促進、節電、省エネはエネルギー危機への対策だが、危機を電力エネルギーシステム構築の契機にしたい。
植田教授の構想はおもしろい。しかし第一に30年までに実現するのか、スケジュールが分かりません。第二に世界エネルギー事情と日本との関係が触れられていません。基本は自給自足。
2、世界は原発を止めているのか?
現実的に原発を止めるのは正しいのでしょうか。まず世界のエネルギー事情から。
1)イラン危機・・・ホルムズ海峡が閉鎖されると、日本の原油の85%が断たれることになる。「油断」。大飯原発だけではない。他の原発も再稼働手続きを進めるべきである(田中伸男 前国際エネルギー機関事務局長「エネルギー戦略迫られる大転換上」日経7/10)。
2)原発・・・ドイツは22年までに脱原子力をきめたが、これはフランスの原発のよる電力輸出をあてにしている。米国は新規原発4基の建設計画承認。中国は原発大幅増を計画中(ダニエル・ヤーギン ケンブリッジ大博士「エネルギー戦略迫られる大転換下」日経7/12)。
3)シェールガス・・・「ピークオイル理論」(石油供給は先細りになる)は退けられた。油田の発見、技術革新がある。タイトオイル(高密度の岩盤層に貯留された石油。注:シェールオイルオイルシェールとは違う)、オイルサンド(石油を含む砂)がある(ダニエル・ヤーギン)。さらに国産のメタンハイグレード(海底の天然ガス資源)も期待できる(田中伸男)。
3、いつ原発を止められるのか?
ヤーギン博士は30年代までに世界経済は2倍の規模になり、エネルギー需要は35%増えると予想します。そして、30年代まで現在のエネルギーミックスには大きな変化はない。原発は電力供給の貴重は担い手ではあるが、シェアを縮小する。そして30年代になり、イノベーション(具体的にその内容が何であるかは触れていません)でエネルギーミックスは様変わりするだろう。つまり30年までは今と変わらないという見解です。
田中前事務局長は、短期的に原発中心。なぜなら日本はエネルギーの自給率が、中、米、欧州に比べて、異常に低いからです。従って中長期の問題としてエネルギーの安全保障、つまり国際協力の必要性をあげています。まず東50ヘルツ、西60ヘルツのカベをなくす、そして韓国との系統連係を強め、さらにロシアと海底ケーブルとパイプラインで結ぶ、つまりロシアから直接、電力とガスを買うことを提言しています。
再生エネの現在のシェアは、ヤーギン博士は1.6%、田中前事務局長は一割未満、植田教授は16.7%、数字はバラバラですが、いずれにしても、いますぐに私たちの未来をかけられるような数字ではありません。
「原子炉は効率が良いシステムである。つまり(電力会社に)利益が上がるシルテムである」(村上春樹の「反原発宣言」)。反原発派の狙いはなにか別の所にあります。結論はc)20~25%です。